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神器の巫女  作者: あぼのん
番外編Ⅰ
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葭埜芳乃の冒険

 番外編 葭埜芳乃の冒険


 蝉しぐれの降り注ぐ夏の朝、世間はお盆休み真只中、この時期田舎へ帰省する人達の車で地方へと繋がる高速自動車道がごった返す中、その分都内の道は走りやすくなる、とはいえ皆が皆仕事が休みなわけではない

 年中無休24時間営業のサービス業なんてものが極々当たり前になっている現代、夏休みなんてものは関係なく働き詰めの労働者もいるわけだ

 これはもう国が法律で働いたら罰金っていう日を作らない限り、誰かが絶対に働いちゃうからもう無理であろう

 まあそんな話はさておき


 八月も中旬、盆も過ぎればなんとやら、暑さもだいぶ和らいでくるなんて言うがそんなの何十年前の話か、八月の半ばなんて真夏も真夏もう夏真っ盛りなわけで、猛暑日連発の記録更新なんてここ近年ではざらである

 盆の時期にもなると海月が発生して海水浴もできなくなるってんなら、もうプールに行くしかないよね!ってなわけで


 悠紗は葭埜家の門戸に手をかけると門を開け中に入って行く、その手にはこの夏何回か使っている、お気に入りの水色の水着袋が提げられていた。

 二段ほどの階段をあがり玄関まで来ると、おもむろにインターホンを人差し指でむにっと押す。


 ぴ~んぽ~ん


 しばらく待つのだが返事がない、悠紗はもう一度インターホンを押す。


 ぴ~んぽ~ん


 しばらく待つがやはり返事はない、呼鈴の音に気が付いていないのかな?悠紗は2回ほど「ドンドン」とドアをノックするのだが誰もでてこない


「よーしーのちゃーん、あーそびーましょー」


 小学生がお友達を呼ぶ真似をする悠紗の声が虚しく近所に響く


 しばしの沈黙


「おらああああああっ!!居るのはわかってんだぞ、出てこいやー芳乃おおおっ!!!」


 ドンドンとドアを叩き蹴りを入れる悠紗、これは通報されたら一発アウトだろう

 そんな感じで騒いでいると隣の家の玄関の開く音、中から出てきた人物が大騒ぎしている悠紗に気が付くと、それよりも更に大きな声で話しかけてきた。


「ああああああっ!!ゆさっちおっはよーーーっ!!!」

「おお!湊真であったか、おはよう、今日も朝から元気であるなおまえは」

「夏休みですからねー、ところで何してんの?しのっちの家のドアベコベコにしちゃダメだよ」


 人んちの玄関のドアをボコボコにしやがって、ここは格ゲーのボーナスステージじゃねえんだぞ、とまあ泣くのは芳乃のお父さんだからどうでもいいか

 悠紗は悪びれもせずに湊真に言う


「芳乃の奴が何度呼んでも出てこんのだ、風邪でもひいたのかな?夏風邪をひくなんてやっぱあいつはバカだな」

「ちがうよー、しのっちは家族で今朝早くから田舎に帰ってるから家には誰もいないよー、1週間くらい帰省するんだって、昨日うちのお母さんがなにかあった時の為にって家の鍵預かってた。」


 どういうことだ?そんな話は聞いていないぞと悠紗は怪訝顔をする

 妾になにも言わずに1週間も留守にするなんていい度胸である、その間暇な時に誰が妾の相手をするのだ

 そんなことを思いながら悠紗はスマホを取り出すと、履歴から「芳乃」という名前を押して電話をかける

 2~3度のコール音が鳴るとすぐに出た。


『もしもし?悠紗?どうしたの?』

「芳乃か、暑いし暇だからプールにでも行こうと思ったのだが」

『ええー?なにー?わたし今京都のおばあちゃんちに来てるから行けないわよ』

「なんの話だ。妾はそんな話は聞いていないぞっ!それでは妾の一日の計画が台無しになるではないかっ!!!」

『知らないわよそんなのー、てーか昨日LINEで言ったじゃない、既読になってたから読んだんでしょ?』


 そう言えば何か書いてたような気はするが、なんかつまらなそうな内容だったので無視していたのだ


「やれやれ、おまえはいつになっても学習しないな、既読になったからと言って妾が内容を読んでいるとは限らないと何度も言ったであろうがぁぁぁああっ!!」


 悠紗が叫ぶと芳乃はなにも言わずに電話を切る、なんという無礼な奴だと悠紗が憤慨しているとLINEに着信


『健登か湊真に遊んでもらいなさい、あとこれ読んだら返事をして』


 きぃぃぃぃいいいいいいっ!!!!バーカバーカ、誰がするもんかっ!


 と思いながらも、「わかった」とスタンプ付きで返事をする悠紗であった。

 しょうがないので悠紗は湊真の方に向き直ると告げる


「と言うわけだ湊真、一緒にプールに行くぞ」

「ごめーん、わたし受験勉強しに図書館に行くからまた今度ねー」


 なんなのだつまらない奴だな、暑いから勉強も碌に身に入らないだろうからって学校がわざわざ休みにしてくれているのに、それなのになんで勉強をするのかまったくもってわけがわからない

 だったら夏休みなんて希望制にして、取らなかった人の分を妾によこせと言うのだ


「しょうがないな、じゃあ健登はなにをしている?」

「おにいはお友達と朝早くに出かけて行ったよー、そんじゃあねー」


 そう言うと湊真は自転車に跨り行ってしまうのであった。

 一人残された悠紗はスマホの履歴ボタンを押すと電話をかける


「クローディアか?・・・あ、そう・・・じゃあまたな」


 トゥルルルルル・・・ブッ


「弥命か?」


『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか電源が・・・ブッ』


「むぅぅぅううううううっ!!こんなんならヒュプノスと共にコミケに行けばよかったわああああっ!!!」


 悠紗の叫び声がまたもや近所に響き渡るのであった。







 芳乃は悠紗がLINEの内容をちゃんと見たことを確認するとスマホの画面を消す。


「しのちゃん、お友達?」


 話かけてきたのは従姉妹の「みちる」である


「うん、みっちゃん、本当に世話の焼ける奴なのよ」

「仲良しなんだね」


 みちるは母の兄の娘で芳乃とは同い年の女の子同士、なので親戚の中でも一番の仲良しだ

 毎年夏の盆と年末年始にこうして祖父母の家に親戚一同が集まり顔を会わせるのだが、今年の正月は芳乃が風邪をひいて行けなかったので去年の夏以来であった。

 二人は学校での出来事や友達のこと、最近の流行や芸能人なんかの話で盛り上がっていると居間に呼ばれる


「しのちゃ~ん、みっちゃ~ん、スイカ切ったからおいで~」

「はーい、おばあちゃん。行こ、しのちゃん」

「うん」


 親戚が集まるとおじいちゃんのお墓参りを済ませて昼食会その後ご近所回り、毎年「大きくなったね~」なんて言われるが、ここ数年はそれほど身長も変わっていないと思う、あと胸も・・・

 挨拶も終わり戻って来る頃には午後3時を回っていた。

 お茶を飲みながら一息吐いているとみちるが小包みを持ってやってきた。


「はい、しのちゃん、これお土産」

「え?なぁに?お土産なんてわたしなんも持ってこなかったよー」

「いいのいいの気にしないで、あたしがしのちゃんにこれあげたかっただけだから」


 そう言うとみちるは小包みを芳乃に手渡す。「開けてもいい?」と聞いてから包装紙を取り箱の中を見ると、それはかわいらしいサンダルであった。


「わぁ、かわいいー、これみっちゃんが今日履いてたサンダルの色違いでしょ?」

「そうそう、よく気が付いたわね流石しのちゃん!色違いのお揃いだよ」

「ありがとうみっちゃん、これは今度の誕生日プレゼントはいい物をお返ししないとね」

「期待していますっ!」


 みちるの誕生日が近い為、色を付けて返さなくてはならなくなってしまった。

 それでもなかなかにお洒落なサンダルなので、これは良い物を頂いたと芳乃はご満悦であった。


「ねえみっちゃん?これ今からちょっと履いてみようかしら」

「お、さっそくですか?じゃあちょっと夕涼みに近所のお稲荷さんにお参りにでも行きますか」


 芳乃とみちるは小さい頃よく子供同士で遊びに行ったご近所の稲荷神社まで散歩に出かけることにしたのだが、出掛けにおばあちゃんが二人に言う


「あれあれ、新しいサンダルをおろしたのかい?もう夕方だから気を付けなさいね」

「はーい行ってきまーす」


 もう子供ではないのだからそんな心配しなくてもと思うのだが、まあ親でさえいくつになっても子供は子供なのだから孫ともなると尚更なのであろう

 そんな様子を見ていたみちるの父がおばあちゃんに「ばあさん今時の子供は知らないよ」なんて言っているのだが、何の話をしているのだろうと芳乃とみちるは顔を見合わせて不思議に思った。


 外に出ると夕方だってのに相も変わらず暑い、夕涼みとは言っても気温は30℃弱はあるのではないか?全然涼しくない

 それでも木々の立ち並ぶ神社の近くまで来ると心地よい風を感じて多少は涼しいような気がしてくる、マイナスイオンすげーなんて思う芳乃であったが関係あるのかな?


 稲荷神社と言えば千本鳥居のある伏見稲荷大社が有名であるが、稲荷神を祀りお狐様を神使とする五穀豊穣をお願いする全国どこにでもある神社だ、近現代では商売繁盛や家内安全など多岐に渡ってお参りする神社でもあるらしい

 二人は境内に入ると拝殿に向かう為に石段を上がって行く、赤い鳥居が見えてきた所でみちるが「もうすぐだよ」なんて言って駆け出すので芳乃は「走ると危ないよ」と声をかけるのだが瞬間一陣の風が舞う、芳乃は風が吹き抜けるのと同時何の気なしに後ろを振り返ると眼下には綺麗な街並みが広がっていた。


 夕暮れにはまだ早い夏のこの時間帯、日が沈みきるのは19時前後くらいになるだろう

 芳乃は振り返り再び石段を上がろうとするのだがみちるの姿が見当たらない、もう上がりきってしまったのだろうか?と思いながらゆっくり上っていくのだが、なんだか妙に静かな気がする

 近所の小さな神社とは言っても、小高い丘の上に作られたこの神社は敷地も広く立派な参拝殿が建てられているため、平日であってもそこそこに参拝客が祈願に訪れているのだが人影どころかまるで気配も感じない

 今日は空いているのかな?なんて思ったのだが、それにしても空きすぎだ

 神社と言うのは神聖な場所であるのにもかかわらず、一人ぼっちでこうも静かであるとなんだかちょっぴり怖く思えてくるのはなぜなのだろうか?

 それは人が神を崇拝し崇め奉るのと同時に、その神に対して畏怖の念を抱いているに他ならないかもしれない

 石段を上がりきり鳥居を潜るとお狐様の石造が両脇からじっと見つめている、ここまで上がってくる途中にも沢山のお狐様があったのだが、それにしても居すぎじゃね?と思ってしまう、こんな石造そう安くもないだろうし神社ってのは相当に儲かるんだろうなと、なぜだか弥命の姿を浮かべながら思ってしまう芳乃であった。


 辺りを見回すがみちるの姿は見えない、どこかに隠れているのだろうか?

 いい加減子供みたいな真似はやめればいいのにとみちるを呼ぶ


「みちるー、どこー?」


 しかし、返事はない


 さすがにちょっとイラっとして、もう一度呼ぶのだがやはり返事はない

 芳乃は少し不安になりながらも先を進み拝殿の近くまで来ると、そこで小さな人影が動いたのに気が付く

 こんな所に隠れていたのかと芳乃は後を追って大声で言う


「ちょっとみちるっ!いい加減にふざけてないでっ!って、あれ?」


 そこには幼稚園児くらいの小さな女の子が驚いた表情でうずくまっていた。

 その女の子はなんだか修験者の様なおかしな恰好をしているので、ここらでお祭りでもあるのかな?と芳乃は思ったのだが、こんな所に一人でいるのも妙だなと思い声をかけた。


「お嬢さん一人?こんなところでなにしているの?」


 なんだか不審者のような言い方だな

 女の子は尚も驚いた表情で固まったまま声も出せない様子


「あ、ごめんね、びっくりしちゃった?お姉ちゃんは葭埜芳乃って言うの、こんな時間に一人でいると危ないよ?お母さんは?」


 なるべく女の子のことを怖がらせない様に、芳乃はしゃがんで目線を同じ高さに合わせると笑顔で話しかける

 するとようやく女の子が返事をした。


「あ・・・あの・・・ぼ・・ぼくは・・・あの・・・え?お姉ちゃん、ぼくが見えるの?」


 見える?なにを言っているのだろうか当たり前であろう、目の前にいるのに見えないわけがない、まあ子供の言うことである、あまり真に受ける必要はないかと芳乃は質問を続ける


「その服かわいいわね、今日ここら辺でお祭りでもあるの?お姉ちゃん東京から遊びに来ているからよくわからなくて」


 そう言うと女の子はまたもビックリしたような表情になり、目を真ん丸にしながらマジマジと芳乃を見ると唐突に言う


「お姉ちゃん東京からきたのっ!?じゃあ、お姉ちゃん姫ん宮の神社って知ってる?」


 芳乃はその言葉に驚いてしまった。

 姫宮神社なんて単語をここで聞くとは思わなかった。でも、あの姫宮神社とは限らない、そうだ、神社なんてのは日本各地にごまんとあるのだからどっかで名前が被っていてもおかしくないんだし


「お姉ちゃん不思議な人やね、どうしてこのけもの道に入ってこられたのかはわからないけれど、お姉ちゃんからはなんだかとても不思議な力を感じる、ぼくは弥子(やこ)って言うんよ」


 そう言うとニコッと目を細めて笑う弥子、とてもかわいらしかった。


「お姉ちゃん、東京の姫ん宮神社って聞いたことあらへん?ぼく、仙狐様のお遣いでそこの白様言うとてもえらいお狐様に届けないといけないものがあったんやけど、お目見えする為の手形を失くしてしまって・・・」


 なんだかものすごく困っている様子の弥子であるが、芳乃はそれよりもこの子が言っている姫宮神社が自分の知っている姫宮神社であったので、まーた変なことに巻き込まれてしまったと天を仰ぐ、それを不思議そうな顔をして見る弥子


「やっぱり知らない?そっかぁぁぁ・・・あぁぁぁどうしよう仙狐様に怒られるぅぅぅ」


 がっくりと肩を落とし項垂れる弥子、よっぽど大変なことをしてしまったのであろうか?なんだか可哀そうになってしまったのでしょうがないなと思い芳乃は弥子に告げる


「知ってるわよ姫宮神社、それとあなたの言っている白様も、その人に会いたいの?」


 芳乃の言葉に弥子は、ぱ~っと顔に笑みを浮かべると嬉しそうに飛び跳ねながら捲し立てる


「ほんとう?お姉ちゃん本当に白様のお知り合いなん?お願いやお姉ちゃん、白様に会わせて貰えるように取り次いでくれへん?」

「ほんとうに知っているわよ、弥子ちゃんだっけ?あなたこれから東京に向かうの?新幹線で行って東京駅からもちょっとかかるし着くのは夜よ?」

「かまへんよ、このけもの道を通って行けば時間と距離なんて関係あらへんもん、片道3時間の道のりもここなら瞬きをするのと一緒の時間、今から行って帰ってきても日没前には戻ってこれるよ」


 なにを言っているのかよくはわからないが、どうやら不思議な空間にいるらしくあっと言う間に東京に着くらしい

 芳乃はしばし考える、どう考えてもこの子は人ではない

 もしかしたら妖怪?或いは幽霊?そんな存在であろう、憑り殺されたりしないだろうか?と一瞬疑うのだが、芳乃はなんとなく、それこそ本当になんとなくの勘だが、この弥子と言う少女が悪い者であるようには思えなかった。

 まあここは神社内なのだ、悪霊などが入ってきて人を騙して憑り殺すことなんてできないだろうと思い渋々承諾することにした。

 それにしてもメドゥーサの件と言い、こないだの人斬り妖怪の件と言い、なんでこんなことに毎回巻き込まれるのであろうか、そういう体質なのかな?巻き込まれ体質・・・そんなものがあるのかどうかは知らないが、芳乃は損な役回りだなと溜息を吐いた。


「わかったわ、一緒に行ってあげる、すぐに戻ってこれるのよね?」


 そう言うと弥子は大喜びで芳乃に飛びついた。子供特有の甘い匂いを感じて芳乃はこの子本当に人じゃないのかしら?と思ってしまう


「ありがとうお姉ちゃん、助かったわぁ、それにしてもお姉ちゃんはぼくのことをなんとも思わないの?」

「ん?まあね、色々とあなたみたいなのと縁が多いのよ・・・ははっ・・」


 芳乃は自嘲気味に笑う


「そうなんやね、ぼくはこの神社の神使である妖狐やから心配せんでもええよ、憑り殺したりなんかせえへんから」

「あんた自身からそう言われると逆に疑っちゃうわ」

「えええええ?なんで~~~?」

「冗談よ、冗談」


 かくして芳乃と弥子の上京物語が幕を開けるのである



 芳乃はとりあえず行く前に弥命に連絡しておくかと思い電話をするのだが繋がらない、どこか電波の届かない所にでも出かけているのだろうか?しょうがないのでそのまま向かうことにする


 弥子に付いて行く道中、色々と質問してみた。

 まずは白へ会う理由、なんでもこの稲荷神社を含めてかなりの数の稲荷神社が毎年収穫を間近に控えたこの時期、新嘗祭とは別に豊作祈願とついでに豊作感謝の為に白へ実の付いている稲を一本奉納するらしい

 芳乃はあの白がそんなに崇拝されているなんてあの姿からはとても想像できなかったのだが、まあなんだ、弥命から聞いた話によるとどうも何千年も生きているどえらい大妖怪様らしいのでそういうものなのだろうと思った。

 今年初めてその役目を仰せつかった弥子らしいのだが、そんな大役を任せられたにもかかわらず白に会うための手形をどっかで落としたらしい、まったくもっておっちょこちょいな奴である

 弥子も妖狐なのだから芳乃よりも長い年月を生きているであろう、しかしどうしてこうも長生きをしている奴らは皆こうして子供じみているのだろうか?それとも芳乃が精神年齢がばばあなだけなのであろうか?これはもう永遠の謎である


 しばらく歩いていたのだがまさかこのまま歩いて東京まで行こうってわけではないよね?いくら元の世界では時間が経つのが遅いとは言ってもこっちで感じる時間は普通なんだから、ここから歩いて行ったら女と子供の足じゃ2週間はかかるぞ


「ねえ弥子?このまま徒歩でなんて言わないわよね?さすがに電車には乗るでしょ?お金はあるの?」

「乗らないよ、心配しなくてもこのけもの道は普通の道とは違うから、2時間もしないで姫ん宮の神社に着くから安心して」


 とは言っても2時間も歩くのかよ、ちょっとめんどくさいな、それにおろしたてのサンダルだから足が痛くならないか心配だ

 そんなことを思っていると弥子が楽しそうに芳乃に話しかけてくる


「それよりもお姉ちゃん、なんか気付かへん?」

「え?なに?」

「周りをよく見てごらんよ」


 言われて見てみると、なんだか違和感を感じる・・・今歩いているのは普通の住宅街の通りであるのだが、どうもなにかがおかしい

 よくよく見ていると標識を見て気が付く、止まれと書かれている文字が左右反対になっているのだ

 それはまるで写し鏡のよう、そうこの世界はまるで鏡の国、全てが反転した世界であった。


「どう?驚いた?」

「あー、まあ、ありがちな設定ねー」


 芳乃があんまり驚いた様子を見せないので弥子はちょっとつまらない、それならばと道を曲がって大通りに出る、すると急に雨が降り出した。


「きゃあっ、ちょっとなに?にわか雨?空は晴れているってのに、もうっ!!」


 芳乃が文句を言っていると空には虹がかかり、通りの向こうから現れる大名行列

 まあ大名ではないのだが、御輿に担がれている白無垢姿の花嫁、行列に加わる人々は花吹雪を撒き散らしながら楽しそうに歌っている


 祝えや祝え~花嫁さまのお通りだ~


 どんちゃんどんちゃんのお祭り騒ぎ、それを一目見ようと通りは人々で溢れかえるのだが、その人々の姿に芳乃は仰天してしまう

 て言うか人ではない、なんだか獣のような姿をした妖怪達や、壊れた提灯や傘、はたまた現代の妖怪なのか?自転車なんかも自立して走ってくるではないか!まさに“自転 ”車だね

 呆気にとられながら目の前を花嫁が通り過ぎるのだが、綺麗なその姿はなんとお狐様、人だと思っていたのだがそれは艶やかに化粧をされた女狐であった。

 芳乃は念の為に眉毛に唾をつけてみるがなにも起こらない、眉唾の逸話が眉唾じゃねえかよっ!と言う突っ込みはさておき

 その行列が通り過ぎると野次馬達は通りを去り雨もあがる、狐につままれたような表情でぽか~んとしながら芳乃は呟いた。


「狐の嫁入りってほんとうにあるのねー・・・」


 その反応には弥子もご満悦、嬉しそうに芳乃の手を引くと駆け出した。


 途中茶屋に寄ると蛙の夫婦が出迎えてくれる、和菓子とお茶を出してくれたのだがこれがまた程よい甘さのとても美味しいお菓子で緑茶とよく合う

 隣の川縁では河童がのんびりときゅうりを齧りながら釣りをしていた。


 そう言えばいつの間にか、アスファルトで舗装された道も土の道になり、現代家屋でひしめき合っていた住宅街も木造の日本家屋がぽつんぽつんとあるような、そんな田舎の日本の原風景のような場所になっている

 夢でも見ているのであろうか?それとも本当に狐に化かされているのかもしれないと思いながらも、なんだかとても楽しかった。

 1時間ほど歩いていると別れ道、そこに座って詰将棋をしているおじさんが弥子に話しかける


「きつねっこよーい、おまえさんどこに行くんだい?」

「ぼくはこれから東京の姫ん宮の神社へ白様に会いに行くんだよ」

「おお!もうそんな時期かい、それにしても気を付けなよぉ、こないだぁ東京の方で現れたっつう外道さんが残してった邪気の吹き溜まり、そこには絶対に近づいちゃぁいけないよぉ」

「わかった、ありがとうおっちゃん」


 おじさんは芳乃の方をチラっと見ると、なにか言いたげな顔をするもまた将棋盤に目を落とし詰将棋を始めるのであった。


 歩き始めてからもうすぐ2時間、弥子の言う通りなら間もなく姫宮神社に着いてもおかしくない時間だが、周りの景色は最早芳乃の知っている東京の風景ではなかったので今どこら辺にいるのか見当もつかなかった。


「ねえねえお姉ちゃん白様ってどんな方なんかなぁ?」


 弥子が目を輝かせながら聞いてくる、そう言えばこの子は今回初めてお遣いを頼まれたのだから白の姿を見るのは初めてなのであろう

 それにしてもそんな羨望の眼差しをされても、あの姿をみたらどんな反応をするのだろうかと、芳乃は苦笑してしまう

 まあせっかく楽しみにしているのだ、ここで水を差すような意地悪をしてやることもないかと思い答えようとする


「そうねえ、まあ、あんたが想像しているような感じではないかもしれないけど・・・」

「待って待って!やっぱり言わないで!あぁーどうしようドキドキしてきたわぁ、三千年以上も生きている空狐様だからそれはもうきっと神秘的な方なんやろうなぁ、話にはとてもお美しい方で、数多の国の王族達から寵愛を受けていたとも聞くし、お会いするのが楽しみやわぁ」


 あーこれはマズいな、妄想だけが膨らんでこの子の中ではあのちんちくりん偏屈我儘娘がとんでもないことになってるぞ、これはやんわりと本当のことを教えておいた方が後々のショックを考えるといいかもしれない


 そう思っていると芳乃は嫌な空気を感じる

 これはなんと言うか血生臭いとても気持ちの悪い感じ、それはつい二週間ほど前に感じたことのあるとても邪悪な気配に似ていた。


「お姉ちゃんもうすぐだよ、そこを曲がれば姫ん宮の神社はすぐそこや」


 弥子は気づいていない様子、そこはいけない、行ってはいけない、なにか不吉なとてもよくないものがそこにはある、芳乃は直感的に叫んでいた。


「ダメっ!弥子っ!そっちに行ってはいけないわ」


 その瞬間曲がり角から溢れだす真っ黒な瘴気、弥子が飲み込まれようとした時に間一髪芳乃が飛びつき難を逃れる、二人は一緒に地面を転がるとその邪悪な姿を見て慄いた。


「お、お姉ちゃん・・・あれは、いけない、とてもいけないものだよ」

「わかっているわ弥子、逃げるわよ、ここは逃げるが勝ちよ」


 そう言うと一目散、脇目も振らずに二人は駆け出すのだが、瘴気が後を追ってくる

 なんなんだあれは?なんで自分達を追ってくるのか、いくらわたし達がかわいいからってそんな気味の悪いことをされたらかえって逃げられるに決まっているでしょうっ!!

 そんなことを考えながら走る芳乃であったがそんなわけがない


 そこで弥子はようやく気が付く


「くんくん・・・お姉ちゃん、あいつに会ったことあるの?」

「え?なにが!?あんな気味の悪い奴見たこともないわよっ!!」

「違うよお姉ちゃん、あの邪気を纏っていた元凶に会ったことがあるでしょ?分かれ道のおっちゃんが言うてたよ、外道さんが最近東京に来たって」


 外道さん・・・まさか?二週間前に健登や弥命が戦ったあの人斬り・・・これはあいつが生み出したものだって言うの?だからそれを、あの事件に関係していたわたしを追って来ているの?だったら・・・


 芳乃は立ち止まると振り返り弥子に言う


「行きなさい・・・」

「え?お姉ちゃん?」

「行きなさい弥子っ!あいつはわたしを追って来ているわ、だから、わたしが引き付けるからあんたは姫宮神社に行って助けを呼んできなさいっ!!」

「でもっ!ぼくは手形を持っていないから白様には・・・」

「姫宮神社に姫宮弥命って言う姫巫女様がいるからっ!その娘に葭埜芳乃がピンチだって言えばすぐに駆けつけてくれるわっ!!」


 芳乃はそれに賭けるしかないと思った。

 弥子が弥命を見つけて連れてくるのが先か、自分があの瘴気に飲まれるのが先か、怖いけれどもやるしかない


「わかった、お姉ちゃん、絶対にその姫巫女様を連れてくるからっ!!絶対に死なないでねっ!!」


 そう言うと弥子は子ぎつねの姿に変わり駆け出した。


「死なないでね・・・か」


 そんなやばい事態なのか?そうなのだろうきっと、芳乃は恐怖する、きっとあれに飲み込まれれば死んでしまうのだろう、そう思うととても恐ろしくなり体が震えだす、膝がガクガクと笑う

 怖い、怖い怖い、なんで自分がこんな目にあわなければいけないのか?冗談じゃない、つい数か月前までは普通の女子高生だったのに、あの日、メドゥーサ事件にかかわってから・・・いや、その前だ

 弥命を庇ったあの時から、あの日関わってからもうなにもかも変わってしまったような気がしてならない

 あいつらは、あの二人はいつもこんな気持ちなのだろうか?こんな恐ろしい目にあいながらも戦っているのだろうか?

 悠紗やクローディアだってそうだ、自分となんら変わらないように見える女の子が、とても普通では考えられないような宿命を背負って、命を懸けた戦いを、こんな非現実的なことをしているのか?


 ・・・・しっかりしろ


「しっかりしろっ!よしのよしのおおおおおおおっ!!」


 芳乃は自分の名前を叫ぶと両手で頬をパンっと叩き気を引き締める、みちるから貰ったサンダルをその場で脱ぎ捨てると全力で駆け出した。


 ごめんねみっちゃん、後で絶対に取りに来るから


 芳乃は全力で走る、どこをどう行ったらいいのかはわからないが全力で逃げる、息が苦しい心臓が口から飛び出しそうであった。

 足が回らない縺れる、そもそも二時間も歩き詰めで来たのだ疲労も溜まっている、ついには転んでしまう、痛い、膝から血が出ている、でも立たなくちゃ走らなくちゃ、逃げなければ死んでしまうのだ

 そんなのは嫌だ、まだまだいっぱいやりたいこともある、食べたいものだってあるし、欲しいものだってある、好きな人に告白もしていないしデートだってしたこともない、いっぱいいっぱい楽しいことをやり残しているんだ

 芳乃は立ち上がる、力いっぱいに地面に手を突き膝を突き、めいっぱいの勇気を振り絞って立ち上がり再び走りだす。


 後ろは振り返らない、振り返ってはダメだ、全力で前だけを見て駆け抜けるんだ


 しかし道を右に曲がった先、そこは行き止まりであった。

 引き返そうと振り返ると瘴気が迫ってきている、芳乃は奥の壁まで行きよじ登ろうとするが力が入らない、飛び上がろうにも足が震えて動かない


 もうだめだ、もう逃げられない、もうどうすることもできない、わたしはここで死ぬんだ・・・たけと・・・・


「助けてっ!健登おおおおおおおおっ!!!」


 瘴気が覆い被さろうとしたその時、目を瞑り大声で叫んだ


 芳乃はそのまま固まるのだがなにも起きない、痛みも苦しみもない、もう死んでしまったのだろうか?苦痛を感じる間もなく自分は瘴気に飲み込まれて死んでしまったのだろうか?死と言うのは無になるのではないのか?こうやって考えること、心は残されるんだろうか?だとすればそれはとても寂しいものである、例え苦しくなくても痛くなくてもこんな暗闇の中でただ一人取り残されるなんて、そんな悲しいことはない・・・

 そう思っていると、ぽんっと頭の上に優しく乗せられる温もり、芳乃は恐る恐る目を開ける


「大丈夫か芳乃?間に合ってよかったぜ」


 目の前には真っ黒な鎧を身に纏った侍の姿、その手には真っ白な剣が握られていてそのモノクロのグラデーションがまるで白黒映画のワンシーンのように見えて、こんな時だってのにとてもロマンチックだなと思ってしまった。


「健登ぉぉ・・・」


 泣きながら抱き付くと優しく頭を撫でられた。


「ひっく、ひっぐ・・・どうして弥命じゃなくてあんたが来たのよぉぉぉ」

「こないだの怪我の治療をしてもらいにたまたま来てたんだよ、まだ瘴気が抜けきってないからお札を張り替えてもらってたんだ、そしたらあの子ぎつねが神社に飛び込んできてさ、大声で姫宮を呼ぶもんだからもう大騒ぎだったんだぞ」


 親指で自分の後ろを指差す健登、そこには弥命とその傍らに弥子が立っていた。


「弥子ぉぉぉおおおおお」

「お姉ちゃあああああん」


 二人は駆け寄ると抱き合いお互いの無事を喜ぶ


「ありがとう弥子、おかげで助かったわ」

「お姉ちゃんの方こそ、無事で本当によかったよぉ、もしものことがあったらぼく・・・ぼく・・・あぁ~ん、うわあ~ん」


 やれやれと言った感じで泣きじゃくる二人を見つめる健登と弥命であった。


 とにもかくにも無事に稲穂を奉納することができた弥子であるが、白にお目見えした感想を聞くと、なんか想像してたのと違ったとちょっと残念そうにしていた。


 そして帰りに見送りに来た健登と弥命であるが、弥命の方を見ながら弥子が言う


「今日はありがとうございましたっ!それにしても、神器の姫巫女様がこんなにもお美しい方だったなんて、それに優しいし、良い匂いがするし、ぼく、憧れちゃいますっ!!」


 なんだか出会ってから一番生き生きとしてるなこいつ、芳乃は呆れた目で弥子を見つめる

 弥命は微笑むと弥子に言った。


「お狐様、お勤めご苦労様でした。そちらの仙狐様にもよろしくお伝えくださいましね、それから芳乃さん、今度からこんな危険なことをする前にちゃんと連絡してくださいねっ!こちらの方からお迎えにあがることもできたんですからねっ!!」

「したわよぉ、でもあんたの携帯繋がらなかったのよ」

「え?」


 弥命はポケットからスマホを取り出すとホームボタンを押すのだが画面が点かない、どうやら電源を切っていたようだ

 電源を入れた直後着信音が鳴る、弥命がそれにでると・・・


『弥命ぉぉおおおおおっ!いったい今までなにをしておったのだっ!!芳乃も健登もおらんし、クローディアの奴はプリティライブのファンミーティングに行っておるし、誰も遊んでくれなかったのだぞおおおっ!!うわあああああん』


 電話の向こうで悠紗が怒声を上げているのがわかった。この後弥命はあいつの我儘に付き合わされるんだろうなと思うとちょっとかわいそうだなと思うのだが、芳乃はまあいっかと思うのであった。




「それじゃあ皆様ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。」


 そう言って元来たけもの道を戻る弥子と芳乃であったが・・・


「ちょっと待って、また二時間も歩くの?もう無理絶対に無理もう嫌よわたし」

「大丈夫だよお姉ちゃん、白様が今回は大変だったろうからってお迎えを呼んでくれているから」


 そう言うと空から牛車が舞い降りてくる

 なんだこれは?もうすごいな色々と、もうなんて言うかとってもファンタジーなことの連続で芳乃は頭がおかしくなりそうであった。


 牛車に乗り込むとゆっくりと空を舞いあがる、眼下にはとても美しい街並みが広がり少し行くと山野が広がる、山の端に見える夕日を見つめながら芳乃は、今回は色々と大変であったけれど、こんなにも素晴らしい景色が見れたのだから良しとするかと思うのであった。


 しばらくすると牛車はゆっくりと降りて行き元来た稲荷神社へと到着する

 牛車から降りると弥子は芳乃を見上げてちょっぴり寂しそうに微笑んだ


「芳乃お姉ちゃん、今日はありがとう、ぼくお姉ちゃんと一緒に行けてとても楽しかったよ」

「どういたしまして、まあ大変だったけどわたしも楽しかったわ」


『・・・・・・・・・』


 二人の間に流れる沈黙、たぶんもう会うことはないのだろうと、どちらもわかっていた。

 本来であればこうして人と妖狐が一緒に居ること自体がおかしなことであるのだ

 人と自然が密接にかかわっていた昔ならいざしらず、現代に於いてはそれはなかなかに難しいことであったりするのが現実だ


 今日の出来事はひと夏の思い出として、芳乃の体験した不思議な夏の思い出として終わるのが正しい姿なのである


「さようなら弥子、また来年もお参りに来るわね」

「うん、さようなら、ぼくはいつでもここに居るからね必ずまた来てね、待ってるからね」


 名残惜しいがお別れの時である、二人は手を振りあうと一陣の疾風が間を吹き抜ける


「きゃっ」


 芳乃は目を瞑り髪が乱れぬように抑える、そしてゆっくりと目を開けると神社の石段の途中に戻っていた。

 スマホの時計を見ると16時59分、あれから数分しか経っていなかった。




「しのちゃーん、なにしてるのー?」


 上からみちるの呼ぶ声がする、芳乃は「今行くー」と返事をして駆け出すと思い出した。

 そう言えばサンダルは脱ぎ捨ててきてしまったのだ、どう説明しようかと裸足のままの足元を見て悩んでしまうがどうしようもない、そのまま石段を上がりきり鳥居を潜るとお狐様の石造が両脇からじっと見つめていた。


 その一つを見て芳乃は微笑む、お狐様の足元には芳乃が脱ぎ捨てたサンダルが揃えて置いてあった。





 お参りをしてから戻ると、夕ご飯が用意してあった。

 おばあちゃんの作るお料理はとても美味しい、お父さん達は呑めや歌えやのどんちゃん騒ぎ、ここに居る間中毎晩こんな感じなのかと思うと鬱陶しくて仕方ない


「ところでおばあちゃん、夕方出かける時にお父さんが言ってたあれってなに?」


 みちるがおばあちゃんに出掛けに言われたことを聞いている、そんなに気にすることかなと思いながら芳乃も一緒に聞いているのだが


「ああ、あれかい?昔からの言い伝えでね、夕方に新しい草履をおろすと狐に化かされるってのがあるんよ、まあ今時そんなことは迷信だって信じられないやろうけどねぇ」


 芳乃は一瞬驚いた顔をするもすぐに笑顔になりおばあちゃんに言う


「そんなことないよおばあちゃん、それはとても素敵なお話ね」


 そう言う芳乃をみちるとおばあちゃんは不思議そうに見つめるのであった。




         神器の巫女 番外編 葭埜芳乃の冒険

                                 おしまい


 番外編いかがでしたか?

 この話は第三章を書いている時に、これ終わったらすぐに第四章に取り掛かるのは無理っ!と心の折れた筆者が、短編書きてえなぁと現実逃避をした結果生まれた物語ですw

 まあ元々筆者お気に入りの芳乃ちゃんを主人公にしたスピンオフ的な物を書きたかったわけですが、それにしても唐突に書き始めた割にはまあそこそこにまとまった話にできたのでよかったです。

 さてさて、妖狐と一緒にけもの道なる場所に迷い込む芳乃ちゃんですが、まずこのお狐様をテーマにするにあたり色々と調べていたのですが、やっぱり日本の所謂怪談や妖怪のお話ってのはおもしろいなぁなんて、書き上げるよりも長く色々と読み耽ってしまいました。

 このお話は実を言うとモチーフにしていると言うか、世界観をインスパイア(笑)されている作品がありまして

 恒川光太郎の中篇小説集『夜市』の中に収録されている『風の古道』というお話なのですが、その世界観がとても好きでそれを出せたらなぁと思って書きました。

 もし今回のこの番外編をおもしろいと思っていただけたら、是非『風の古道』読んでみてください、不思議な空間に迷い込んだような奇妙な感覚が病みつきになりますよ


 ちなみに作中で使われる偽京言葉はあんま気にしないでください、もしくは本場の方いらっしゃったら教えてくださいw


 それではお読みいただきありがとうございました。第四章は今しばらくお待ちください


                                あぼのん


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