表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神器の巫女  作者: あぼのん
第三章 闇の黒狼と頑こ姫
83/124

第32話 たとえ未熟であっても戦士たらんとする信念だけは持ち続けろっ!!

「くだらねえ意地だって、貫き通せばそれは立派な信念に変わるんだぜ!」


 その言葉に口の端を吊り上げニヤリと笑うと楽しそうな声でフェンリルは言う


「だったら貫いてみろよぉ、餓鬼ぃぃぃぃいいいっ!!」


 笑うフェンリル、健登は意にも介さず叫んだ


「やってやるぜええっ!!」


 走り出す健登の身体を真っ赤な炎が包み込むと刹那、全身を炎の鎧が纏う


 火炎・焔


「そんなこともできるのか小僧ぅ、ちったあおもしろくなってきたじゃあねえかっ!!」


 炎の魔剣を構え迎え撃つ、炎対炎、パワー対パワーのぶつかり合いである


 振り下ろしたお互いの剣が交わると辺り一帯に凄まじい熱量の衝撃が伝わる、健登は死に物狂いで剣を振る、上段から中段から下段からそれは剣術と言うには程遠い、ただ振り回しているだけのものに過ぎない、しかしその一撃一撃には健登の全力が、一振り一振りには健登の全霊が籠っている、健登のクローディアに対する優しさが、フェンリルに対する怒りが、様々な思いをアメノハバキリに乗せて一心不乱に打ち付ける


 フェンリルは驚愕していた。


 わけがわからない、素人丸出しいやそれ以下の剣技だ

 それなのに、ガキが棒切れを振り回してチャンバラごっこをしているのとまるで変わらない剣を前に、まるで読めない、返せない、それを受ける手が痺れる、これが貫き通そうとする意地だと言うのか?信念だと言うのか?ふざけるな、そんなもので圧倒的な実力差を覆せるわけがない

 フェンリルは今まで片手でしか受けていなかった剣を両手で持ち直す。

 互いの切っ先が触れ合うとフェンリルは、振り上げた健登の剣を円を描くように返し上から下へ斬り抜ける返し胴を入れる、この場に弥命が居れば感嘆の声を漏らしそうなほどの見事な剣術であった。

 それにしても力技一辺倒かと思われたフェンリルが似合わぬ繊細な技を使うものである、レーヴァテインの一撃はいとも簡単に神器の鎧を切り裂きその刃は健登の身体に達する

 だが致命傷には至らず、並みの鎧であれば胴体ごと真っ二つされていただろう

 今回は装備のポテンシャルに命を救われた格好になる


「はっはあああっ!!ガキ、その鎧じゃなかったら死んでたぜ?」

「ああそうかい、おまえもそれじゃなかったら斬れなかっただろう?」


 鋭い眼光で睨みつけ言い返すのだが、しばらく剣を打ち合っているとパワーだけなら互角に見えていた戦いも次第に健登が押され始める

 やはり技量が足りない、フェンリルは器用にも剣術を駆使して多種多様な攻撃防御返し技を健登に繰り出す。

 初めは超人的な勘と反射神経でそれを受け流し躱していた健登であるが、技術と経験があまりにも不足している、フェイントを挟まれ変則的な攻撃をされるとついていけない

 いつの間にか致命傷にはならないが体中を切り刻まれ、ボタボタと血を流しながらフェンリルの攻撃をなんとか凌いでいる状態になっていた。


「おいガキ、次はどうする?その炎の力じゃ俺には届かなかったみてえだな、またお着替えでもしてみせるか?」


 攻撃を止め余裕の笑みで挑発してくるフェンリルに、健登は言い返す余裕はなかった。

 ぜえぜえと肩で息をしながら呼吸を整えようとするのだが、これまでなら軽い切り傷や打ち身であれば神器の力ですぐに回復していたのに、レーヴァテインで斬られた傷は中々に塞がらない、まるで傷口を焼かれるような熱と痛みがいつまでも残る


 冗談じゃねえ、強すぎる、これでもあいつはまだ本気じゃないっぽい、勝てる気がまったくしねえ・・・どうする?悠紗はもう来ているのか?でも、これじゃあまだあいつの作戦には移れねえ


 しばらく睨み合いを続けると次第に呼吸も落ち着き始める、するとフェンリルが健登に言う


「どうだ、少しは回復したか?そんじゃあもう一度、続きを始めようぜ」


 フェンリルは健登の呼吸が整うまで待ってやっていたのだ

 完全に舐められている、いつでも止めを刺すことはできるがもう少し遊んでやろうと言う表れであった。


 これには健登も頭にくる


 ば、馬鹿にしやがってえええええええええっ!!


 頭に血が上り再びフェンリルに突っ込もうとするのだが、後ろから肩を掴まれ引き留められた。


「落ち着けタケトっ!闇雲に突っ込んでも同じことの繰り返しだぞっ!」

「だったらどうすんだよっ!!考えたって俺にできることはこれしかねえんだから何度でもやるしかねえだろっ!!」


 クローディアに喰ってかかるタケトだが、その瞬間頬を張られる


「おまえが戦士として未熟なことは十分にわかっているっ!ただの高校生に熟練の兵士のように振る舞えとは言わないっ!!その上で言う、そんな見苦しい真似はやめろっ!たとえ未熟であっても戦士たらんとする信念だけは持ち続けろっ!!」


 クローディアに叱責され我に返る健登、またやってしまった・・・まったくもって学習能力のない、とは言え人間そうそう変われるものでもない、感情に任せて後先考えずに突っ込んでしまう悪い癖がでてしまった。


「すまねえ・・・」


 力なく呟く健登であったが、クローディアがフェンリルのことを睨みながら手をギュっと握ってくる

 クローディアも不安でいっぱいなのである、敵は強い、どんなに死力を尽くしてもそれでもなお敵わない、また負けてしまうかもしれない、そんな思いを必死に押し殺しながら戦っているのだ


「タケト、今我々が奴に対して持つアドバンテージは神器の数だけだ、だがしかしそれこそが奴を倒せる最大の武器であるとは思わないか?」

「ど、どうすんだよ?」

「信じよう」


 クローディアは健登の眼を真剣な眼差しで見つめるとそう告げる


「我々の神器の力をもっと信じるんだ、奴には通用しないんじゃないかと言う考えは捨てろっ!我々二人なら必ずその刃は奴に届く、止めを刺し得ると信じて戦うんだっ!神器は必ず力を与えてくれるはずだっ!!」


 力強く叫ぶクローディア、結局それも精神論に過ぎないが健登は再び冷静に戦う力を貰った気がした。


「そうだな・・・俺達二人ならっ!やれるぜクローディアっ!!」


 二人並び立ち神器を構えると切っ先をフェンリルに向けた。


「作戦会議は終わりかあ?そんじゃあとっととおっぱじめようぜ、これで何ラウンド目だ?そろそろどっちかぶっ殺してやるかあ」


 二人のやり取りを黙って見ていたフェンリルだが、戦闘態勢に入ると再び攻撃的なオーラをその身に纏い全身に力が漲っていく、レーヴァテインもそれに呼応するように熱を増していくように感じられた。


 臆するな、相手の殺気に飲まれればその時点で勝ちの芽を摘むようなもの、神器の力を信じる、クローディアの言う通りだ

 アルレッキーノの時も、メドゥーサの時も、劣勢に立たされた時にそれでも敵に打ち勝つ力を望んだその時にアメノハバキリは力を与えてくれたではないか

 今回もそう都合よく力を与えてくれるとは限らないかもしれない、それでも尚、何度間違えても何度やられても、己を信じて仲間を信じて戦うのみ


 健登とクローディアは同時にフェンリルに向かって攻撃を仕掛ける、バラバラではあるが息の合った攻撃、一見矛盾している様に思うがそう形容するのが一番相応しく思える

 健登は即興で他人と連携攻撃をできる程の技術も経験も持ち合わせてはいない、クローディアも素人の健登とコンビネーションをできるなどとは思ってはいない、最初の様に健登に合わせるだけならできるがそれでは自分の長所が死んでしまう

 合わせられないのであれば互いが互いの長所を打ち消さないように、要するに邪魔をしないように好き勝手にやれと言うことなのだが、この戦い方がようやく互いのスタイルに合致する

 しかしながら、それでもフェンリルは二人の攻撃を捌いてみせる、渾身の一振りは炎尾を生み出し襲い掛かる、それを健登の炎で打ち消すとクローディアが飛び掛かる

 フェンリルは槍を素手で掴むとそのまま振りかぶり、クローディアごと地面に叩きつけるのだが、直後背中に衝撃が走った。

 遂に健登の一撃がフェンリルを捉えた、一矢報いてやった。

 フェンリルは背中を斬りつけられながらも振り向きざまに剣を横薙ぎ、健登がそれをアメノハバキリで受けるが構わず渾身の力で振り抜く

 鉄柱で殴られたかの様な衝撃を受けて吹っ飛ぶと地面を転がる健登


 ― Sleipnir Zusammenstoβ Blitz ― (稲妻のごとく滑走する軍馬の衝撃)


 クローディアは槍の石突きの部分を地面に打ち付けるとそこからエネルギー波が噴き出す、その勢いを加算して光速の突きをフェンリルに向けて撃ち出した。

 フェンリルは神速の反射神経でそれを受けようと剣を向けるが、クローディアの突きの威力が勝る

 グングニールの一撃は炎の魔剣レーヴァテインを弾きフェンリルの腹へと突き刺さった。


「ぐっ!この程度でえええっ!!」


 叫ぶフェンリル、クローディアは槍を引き抜こうとするが抜けない、腹筋にがっちりと掴まれて微動だにしない、フェンリルはそのまま槍を手で掴むと剣を振り上げて斬りかかる


「クローディアっ!!」


 レーヴァテインの刃は間に割って入った健登の背中を斬り裂いた。

 激痛が背中に走るが健登は歯を食いしばり、痛みを堪えるとクローディアに向かって叫ぶ


「タケトっ!!」

「ぐぅうっ・・・・やれっ!クローディアっ!!勝機を逃すなあああああっ!!」


 タケトのその言葉にクローディアは考えるよりも先に体が動いていた。


「お・・・・応おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 ― Sleipnir Zusammenstoβ Windhose ― (竜巻のごとく滑走する軍馬の衝撃)


 フェンリルの腹に突き刺さったグングニールはそのまま大気を巻き込むように回転するとクローディアは突進、凄まじい勢いで木々を薙ぎ倒し駆け抜け岩の露出する山肌に激突した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ