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神器の巫女  作者: あぼのん
第三章 闇の黒狼と頑こ姫
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第24話 そして女の顔に傷をつけた責任を取るのも男のけじめであるぞ旦那様

 白達が部屋を出て行くと健登は弥命の方に向き直り頭を100度下げて謝罪する

 頭を下げられた弥命はと言うと、これをされるのは二度目なわけでまたポーズだけなのではないかとちょっと意地悪を言ってみたくなってしまう

 そっぽを向き膨れながら健登に言う


「また、反省していると言う態度だけですか?」

「すまなかった姫宮っ!俺はあの時、おまえの言ったことを本気で考えてなかった。今になって思い出したんだ、前に常深先輩に言われたことを」

「え?生徒会長ですか?」


 健登は前に生徒会長室に行く途中、紫に言われた言葉を思い出していた。


「俺は人の言うことをなにも考えずに受け入れちまう癖があるって、普段から疑う癖をつけておかないと、いつか取り返しのつかないミスをするって言われたことがあるんだ」

「それは、ハティとスコルのことを言っているのですか?」

「それだけじゃねえ、俺は馬鹿だから何も考えねえから!相手の気持ちも考えねえから、感情に任せて突っ走って・・・それで皆に迷惑をかけて・・・悔しかったんだよっ!!」


 健登は頭を下げながら大声で叫ぶ、人前でこんなみっともない姿を晒すのは恥ずかしかったが形振り構わずに今思っていることを全部ぶちまける


「俺は悔しかった!自分が情けなかったんだっ!あの時何もできなかったのが、悠紗も姫宮も、メドゥシアナや水谷さんだって、皆クローディアを助ける為に一生懸命戦っていた。兵隊さん達だって俺たちを逃がす為に命を張ってくれていた。それなのに俺は・・・人があんなにっ!大勢の人が目の前で死んじまったんだぜっ!?あんなのあるかよ・・・何もできない自分が腹立たしかったんだっ!!」


 歯を食いしばり、握り拳を作り、悔しさを滲ませる健登

 そんな健登を困惑した表情で見ている弥命であったが・・・


「そんなことはないっ!!」


 叫んだのはクローディアであった。

 飛び出して健登に抱き付くとそれは違うと言う


「そんなことない・・・タケトはいっぱい傷ついた。ワタシの為にいっぱい傷ついて、いっぱい怒ってくれた・・・ワタシは・・・ワタシはそれが嬉しかった。だから、そんなこと言わないでタケト」

「クローディア・・・」


 クローディアの言う通りであった。

 健登が人のことを考えられないなんてことはない、だって健登はいつだって誰かの為にあんなにも一生懸命になり怒ってくれる、悲しんでくれる、そして笑ってくれるのだ

 誰よりも真剣に、ただ誰かの為に、真っ直ぐに真っ直ぐに突っ走ってくれるのだ

 弥命は健登の眼を見つめながら言う、それはいつもの優しい表情の弥命であった。


「そうです守羽くん、そんなこと言わないでください。わたしの方こそごめんなさい、人の気持ちを考えろって言っておきながら、守羽くんの気持ちは全くわかっていませんでした。でも、守羽くんはそれでいいと思います。だって・・・いつだって守羽くんはそうやって皆を助けてくれているのだから」

「姫宮ぁぁぁ」


 二人の言葉に感激する健登、やれやれ、結局はこうやってまた簡単に立ち直ってしまう単純な奴である


 まったくもってむず痒い、まったくもって青臭い青春ドラマであったが、悠紗は三人の若人達を見つめながらうんうんと頷くのであった。


 でも、それとこれとは話は別


 クローディアが健登から離れると、ちょいちょいと手招きをして耳を貸せと言う

 何事かと思いクローディアが屈み悠紗の顔に耳を近づけるとボソリ


「今日は見逃してやるが今度健登に抱き付いたら許さんからな」


 ごくりっ・・・・


 冷たい声で言い放つ悠紗、先の戦いでは感じられなかった恐ろしいほどの殺気を放っている

 さらに悪寒を感じ後ろを振り向くと、弥命が満面の笑みを浮かべながら手招きしているのだが、なにやらおどろおどろしいオーラを放っている


 嫌だなぁ・・・怖いなぁ・・・・


「クローディアさんはわたしの親友ですからあまりこういうことは言いたくないんですけど、ああいったことをする時はちゃんと順番を守ってくださいね」


 順番ってなんだろぉぉぉ?


 とにかくこれはあれだ、健登を巡る熾烈な女の争いが日々繰り広げられているのだろう、それはおそらく芳乃も参戦しているのであろうと言うことは理解できた。


「はい・・・ごめんなさい・・・」


 クローディアは、とりあえず謝っておくのであった。





 紅葉の出してくれたお茶を飲み一息つく、どうにも白と話していると疲れてしまう健登であった。

 これからどうするのか、弥命はフェンリルを我々の手で討つと言っていた。

 それは当然これから皆で協力してあの魔狼達と戦うと言うことであるが、あれだけ鬼気迫る表情で絶対に戦うなと言っていた相手とどう戦うつもりなのか

 そう考えていると弥命が切り出す。


「皆さん、なんとかして勝つしかありませんっ!!」


 はぁ?


「いやいやいや、姫宮さん?なんか作戦とかないんですか?」

「ありませんっ!ですが、我々の最大の武器である“ チームワーク ”を奴らに見せつけてやりましょうっ!!」


 あまりにも雑すぎるだろうそれ、チームワークって・・・そんなのあったっけ?そういやこれまでにも何度か一緒に戦ってはいるがこのお嬢さん、結構毎回行き当たりばったりな気がしなくもない


「守羽くん、だいたい作戦なんてものはそうそう上手く行くものじゃないんですよ、それこそ何ヶ月もかけて前もって仕組んでこそようやく意味を成すものなんです。」


 自信満々に言い放つ弥命であるが、なんだか釈然としないなぁ

 要するになんも思いつかないんじゃないのか、と思うがそう言うといじけちゃいそうな気がするので黙っておく

 そこへ悠紗が口を挟む


「ふむ、まあ弥命の言うことも一理あるが、それでもやはり無策で闇雲に突っ込むのは阿呆のやることだ」


 阿呆と言われ弥命はちょっとムっとした顔をする


「じゃあ悠紗ちゃんはなにか思いついたんですかー?」


 なんでそんな子供みたいな突っかかり方してんのよ


「まあな、たぶんこれは上手くいくと思うぞ?皆耳を貸せ、ごにょごにょごにょ」


 なるほど、それならばまあ上手く行きそうな気はするが、その為にはいくつか越えなければならないハードルがある、健登はその疑問を率直に悠紗にぶつける


「ハティとスコルをなんとかしてからじゃないと難しくねえかそれ?それにあいつがそんなの協力してくれるか?」

「ほほぉ、ようやく頭のエンジンがかかってきたか健登、なかなか鋭い所を突いてくるな、一つ目の質問に関してはそれこそなんとかするしかあるまい、まあこちらにはこれだけの戦力があるのだなんとかなろう」


 確かにそう言われるとすごい戦力ではある、なんてったって神器が二つもあるのだ

 アメノハバキリとグングニール、この二つと悠紗に弥命それに水谷も加えれば戦闘員の数だけでも相手を上回っている


「だったらなんであの時やらなかったんだよ?」

「まだ未練がましくそんなことを言っておるのか、流れだっ!空気だっ!!あの時は敗戦色濃厚であっただろう、あんな状態で戦っても敗北は目に見えていたわっ!」


 健登以外の全員が、うんうんうんと頷いている


 なんだかこの人達がそうしていると物凄く説得力があるな・・・と言うか、あれ?俺以外みんな結構やばい戦闘能力の持ち主じゃね?戦巫女に現役軍人、神話の神様にミリタリーメイドときたもんだ、普通の男子高校生の俺だけ浮いてるじゃんっ!てーかおまえらがおかしいんだよ常識的に考えてっ!!


 今さらそんなことに気が付き心の中で突っ込みを入れる健登であった。

 そんな健登の思いも露知らず悠紗は続ける


「そして二つ目の質問、これもなんとかするしかあるまい、聞いていたなメドゥシアナ」


 悠紗がそういうと髪の毛の一部が白蛇に変わり人語を話す。


「聞いてましたけど~、なんですかぁ~?わたくし今日はもう眠くてぇ~」


 またあの口調に戻っている、あー苛々する


「おまえはあいつの所へ行って今話した物を借りるか盗むか強奪してこい」

「え~・・・あいつってハーデウス様のことですよね~?嫌ですよ~、わたくしヒュプノス様とタナトス様にがてですし~」

「いいから行けっ!あいつには妾に借りが幾つもあるだろうと言って脅せっ!成功したら褒美に健登の精気を好きなだけ吸わせてやるっ!!」

「人の命を景品にすんなっ!」


 健登の突っ込みは無視して悠紗はメドゥシアナを鷲掴みにすると、ぶちっと引っこ抜いてとっとと行けと言う、メドゥシアナは「ひぃぃぃん、蛇使いの荒いごしゅじんさまです~」と泣きながらハーデウスの元へと向かうのであった。

 健登は納得がいかなかったがグズグズ言っても仕方がないので最後の疑問を聞く


「これが一番重要だけど、神器はあいつに効くのか?」


 フェンリルはレーヴァテインを退け、グングニールを退けたのだ、下手をすればアメノハバキリでも太刀打ちできないのではないか?そんな疑問が頭をよぎる

 まずこの疑問に答えたのは悠紗


「当然であろう、神である妾をあそこまで追い込んだのだぞ、未だに傷の癒えぬこの右眼が何よりの証拠、そして女の顔に傷をつけた責任を取るのも男のけじめであるぞ旦那様」

「最後の方は余計だな」


 前半にはまあなるほどなと健登は納得する

 弥命もそれには同意


「クローディアさん、グングニールであればフェンリルに致命傷を与えることは可能なはずだとわたしは考えます。やはりレーヴァテインが敗れたのは相性でしょうか?」


 弥命の問いに小さく頷くと真剣な面持ちでクローディアが話す。


「ミコットの言う通り、レーヴァテインはラグナロクを引き起こした元凶と言われる神、ロキが鍛えた剣、その炎でロキの子である魔狼フェンリルを焼き尽くすことはできなかったらしい、成す術なくエメレンツィア・・・レーヴァテインのワルキューレは敗北した・・・」

「エメレンツィア・・・さん、と言う方なんですねレーヴァテインのワルキューレは、クローディアさんのご友人なのですか?」


 その質問にクローディアは一瞬悲しげな表情を見せ俯くも、再び顔を上げて話す。


「元・・・同僚だ・・・そして、エメレンツィアはツェツィーリアの実の姉だ」


 ツェツィーリア、クローディア達を罠に嵌め魔狼の子達と共に暗殺しようとしていた少女、その計画は魔狼達の裏切りにより失敗に終わったが、クローディアの懇願により彼女もまたここ姫宮神社に匿われている


「ツェツィーリアはそのことを知らない、同じくワルキューレであるワタシだけが彼女から聞かされていたこと」

「どうして黙っていたのですか?」

「彼女とツェツィーリアは歳の離れた姉妹だった。ツィツィーリアが物心つくころにはエメレンツィアはもう軍の養成施設に入れられていて・・・彼女は隠したかったのだと思う、最低の父親であったそうだ・・・・」


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