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神器の巫女  作者: あぼのん
第三章 闇の黒狼と頑こ姫
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第23話 君くらいの年代の時にはそれくらいの正義感があったほうが好感がもてますよ

 部屋に戻って暫くすると座敷の奥から白が現れた。

 白は悠紗の方を一瞥すると「今回は特別だからな」と言い、悠紗はそれに対し「今回は特別に、ここに居てやる」と答える、なんだかすっげえ険悪なムードなんだけどなんで?疑問に思うが健登以外はしょうがないという表情をしていた。


 皆が席に着くと白が話し始める


「さてもさてさて、ここらで全ての種明かしをしたいと思うのじゃが?」

「それは妾達も望むところだ、弥命やクローディアは分かっているようだが、レーヴァテイン、あれはなんなのだ?神器と言うことはわかるがあれをフェンリルが手にしていることと今回の件がどう結び付く」


 どうやら悠紗は白の後ろに控えている人物に向かって言っているようだ

 白が入って来た時から皆の視線を集める人物、歳は30前後といったところか、上下黒のスーツに身を包み好青年風の顔立ちをしている、というかどこかほんわかとした柔らかい表情の男


「それは私から説明させて頂きますよ、メドゥーサさん」


 ニッコリと笑う好青年、その落ち着いた物腰と喋り方に初対面であっても気を許してしまいそうな印象、こういう人間こそが実は内面は腹黒かったりするのだ


「私は神社庁超常事案特別対応本部室長をしております。鷺宮(さぎのみや)と申します。」


 神社庁?そんなものがあるのか?と健登は怪訝顔をする

 あるんですよそれが本当に、それにしてもまあ名前からして公式には存在しなさそうな部署ではある、そんな所の室長なんかやっているのだから日陰者なのであろうと思うのだが


「まあ普段は防衛省の官僚をしているんですけど、所謂背広組(キャリア)と呼ばれている役職の者です。」


 なんだよ超エリートじゃねえかちくしょうめ


「そんな肩書きなどはどうでもいい、鷺宮と言ったな、妾はともかくここいる健登は少々頭が良くないのでわかりやすく話せ」


 悠紗に言われると鷺宮はこれは参ったという表情を浮かべて答える


「守羽健登君ですね、お噂はかねがね伺っております。それにしても姫巫女様以外の、それもクラスメイトの男子が神器を引き抜いてしまうとは正直驚きましたよ」


 健登は「いやぁそれほどでもぉ」と照れているが別に褒められたわけではないと思う

 鷺宮は悠紗の方を見るとこれまた爽やかな笑顔で言う


「それにメドゥーサさん、今は芽堂悠紗さんと名乗っているのでしたっけ?あなたの件にはかなり手を焼かされました。生徒会長さんには感謝してくださいね」

「生徒会長?ポイニークーンか、ちっ」


 悠紗はつまらなそうな顔をしてむくれる、紫の話をされると黙ってしまった。

 鷺宮、なかなかにやり手である・・・そんなやりとりを見ていた白が鷺宮に催促する


「前置きはその辺でよいじゃろ、とっととこやつらに説明せんか鷺宮」

「わかってますよ白様、本当は重大な機密事項なんですからねこれ」

「ふんっ!こんなことになったのもおまえらがわしを謀ったからであろうっ!!渋ってないでとっとと話せ」


 これ以上無駄話をしていると白がまた不機嫌になりかねない、と言うかもうなっている、ので鷺宮は不承不承ながらも話し始めた。


「事の始まりは北欧でフェンリルが復活したと言う情報が入って来たところから始まります。まあその辺は割愛しますが、情報は直ちに世界各国の首脳陣に共有されました。神話の時代の世界を滅ぼしたモンスターが復活したなんて、それはもう一大事ですからね」


 鷺宮の言葉に皆、神妙な面持ちで耳を傾けている、クローディアだけは俯き悲痛な表情をしていた。

 当然ここから先は誰もがすでに聞いているフェンリル討伐の話に及ぶだろう、それはクローディアが以前所属していた特殊部隊が全滅したという内容にもなる、やはり聞きたくはない


「この事態に対応したのがドイツ政府です。すぐにフェンリル討伐の部隊が編成され派遣されました。」

「その話なら知ってるぜ、あんまりここでは話してほしくないことなんだけど」


 クローディアのことを思い健登がそう言うと、鷺宮は申し訳なさそうな表情をしてすぐに真剣な面持ちになると続ける


「いいえ守羽君、これはそちらにおられるディートリッヒ少尉が派遣される前の話です。」


 前に派遣された部隊!?どういうことだ?健登は困惑する

 クローディアは膝の上で両手をギュッと握り締める、弥命は心配そうな表情でクローディアを見つめている


「そうか・・・・・そういう事か・・・・」


 そして、そこまで聞いて悠紗がどうやらピンときたようだ、驚きながらもこれで全てが繋がったと納得のいった表情で話し出す。


「つまり、クローディア達に先んじて派遣された部隊と言うのは、レーヴァテインのワルキューレであったと言うことだな?」

「そうです。さすがは石眼の魔女様」


 それはつまり、レーヴァテインを手にしていたワルキューレが敗れて奪われたという意味に他ならない


「レーヴァテインはドイツ国の所有する神器であることは我々政府間では公にされていました。私達はドイツ国がレーヴァテインだけしか所有していないと思っていたのです。でもそれは・・・もうご存知ですね」


 “ グングニール ”もう一つの神器、ドイツはこれを秘匿していた。理由はわからないがこの秘密兵器を持って、レーヴァテインの敗北強奪されたことを隠蔽しようとしたのだ

 そしてクローディアが派遣される、その後のことは知っての通りだ

 レーヴァテインを退け、それを手にグングニールをも退けたフェンリルは日本へと渡る、その情報漏洩を恐れたドイツ政府が口止めの為に日本と密約を交わしたのだ


「今回の取り引きは日本政府にとっては好条件でした。その見返りにドイツ政府の提示した条件と言うのが・・・」

「ふっざけんじゃねえええええええっ!!!」


 鷺宮の言葉を遮り怒声をあげて立ち上がる健登


「見返りなんてそんなもんどうでもいいっ!てめえら人のことをっ!クローディアのことをなんだと思ってやがるんだっ!!偉い奴の失敗の尻拭いの為にこき使って、さらにそれを利用しようとする奴まで現れてっ!クローディアは泣いてたんだぞっ!!泣きながら戦ってたんだぞっ!!!仲間を沢山失って、友達を傷つけて!!そんなひでえ話があるかよっ!!」

「タケト・・・」


 鬼神の如き表情で捲し立てる健登、それを「いいから座って聞け」と悠紗が黙らせる

 驚いた顔の鷺宮に白はやれやれといった様子

 クローディアは前に座る健登のシャツをキュっと摘まむと「ありがとう、タケト」と小声で言うのであった。


「これは・・・話には聞いてましたが気持ちのいいくらいの熱血漢ですね守羽君、君くらいの年代の時にはそれくらいの正義感があったほうが好感がもてますよ」

「うるせーやい」


 なんだか馬鹿にされているような気分になるのだが、残念そうな笑顔で健登を見る鷺宮


「褒めてるんだけどなぁ、まあでも大人の世界、それも永田町と言う伏魔殿ではそんな風にはなかなかできないものなんですよ」

「きったねえ大人のやることだろ」

「その汚い大人のおかげで、君達は普通の生活を送れているということも忘れないでくださいね」


 ぐうの音もでない、ニコニコと微笑みながらもチクリと痛い所を刺してくるあたり、やはり汚い大人である

 また話が脇道に逸れてきたところで、そこまで黙っていた弥命がようやく口を開く


「鷺宮さん、経緯はわかりました。色々と言いたいこともあります。納得のできないことも山ほどあります。でも、今やるべきことは一つです。フェンリルは、我々の手で討ちます。」


 白と鷺宮を見据えて弥命は力強い声で言うと、隣り合う二人がチラリと目線を合わせる


「はぁぁぁ、まあそう言うと思っておったわ弥命」

「予想通りでしたね白様」


 溜息を吐きがっくりと項垂れる白と、ニコニコと楽しそうな様子の鷺宮が言う


「弥命ちゃん、そう来るだろうとはすでに白様と話していました。ですから止めません、後のことは私と白様でなんとかしますから、好きなようにやってみてください」

「わしはもう知らんぞー、後はおまえが一人でなんとかせい」


 冷たく言い放つ白に「そんなぁ」と助けを乞う鷺宮であった。


 話も終わり白と鷺宮が席を立とうとすると健登が鷺宮を呼び止め、なにやらモジモジと恥ずかしそうにしながらなにか言いたげな様子だ


「鷺宮さん、そ・・・その、さっきは生意気言ってすんませんでした。あんたらが色々とやってくれてるってことにはその、正直感謝してます。」


 珍しいこともあるもんだと皆が驚きその様子を見ているのだが、白が驚きの声をあげて健登をからかう


「ほほぉ小僧、珍しく殊勝な心構えじゃな、なにかあったのか?」

「うるせーな、色々あったんだよ。ついカッとなっちまうところが俺の悪いところだって、相手の立場のこともよく考えてから言うんだったなって反省したんだよ」


 そう言いながらチラっと弥命の方を見ると、ニヤニヤしながら嬉しそうな様子の弥命であった。

 鷺宮は最後に健登達に告げる


「まあ大変ではありますけれどそれが我々大人の仕事ですからね、でもそうやって面と向かって直接感謝されるのもなかなかに気持ちのいいものですね、ちょっと気合い入りました」


 そう言うとその場を後にするのであった。


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