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神器の巫女  作者: あぼのん
第三章 闇の黒狼と頑こ姫
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プロローグ

 誇り高きドイツ国民として、いや、名誉あるドイツ軍人として……それも違う……


 ワタシは“槍を持って進む者(ゲイレルル)”祖国を守護し民を守り、どんな困難にも敵にも決して屈することは許されない……


 そう……ワタシは神の代行者


 人としての人生などはとうに捨てた。

 私を滅しこの国に仕えること、そして神の代行者として民を導くことそれがワタシの使命であり、戦士としてその身を賭して戦い天寿を全うした兵士達をヴァルハラへと送らなければならない。


 その為にワタシは……ワタシは絶対に負けることなど許されないのだっ!


 ワタシは聖なる武器“グングニール”の選ばれし戦巫女(ワルキューレ)なのだから。


 だから今、宿敵を倒す為に、石眼を手に入れる為にこうして戦っているのだ。

 作戦は全て順調に進んだ、魔眼を使う神であろうがワタシの敵ではなかった。

 石の刃も柱も壁も全てこのグングニールの一撃で砕いてやった。

 石手も切り落とした。心を操る眼も主神オーディンの叡智の眼には通用しない、ワタシは勝ったのだ、勝ち得たはずなのだ。


 なのにどうして……どうしてワタシは、たかが一人の……今目の前にいる自らを神と名乗る少女を、人々に仇なす悪神を討つことができないのだ。


「どうして……ワタシは……何の為にこのニホンまで来たのだ……何の為に……」


 白銀の鎧を身に纏う美しい金髪の少女は、その三つ編みを背中で揺らすと手にしていた突撃槍(ランス)を落とし両手で顔を覆った。

 涙を流し震える少女の前で傷つき膝を突く悠紗、そしてその傍らで同じく傷つき倒れ込む健登とそれを心配そうに抱きかかえる弥命。


 じっとりとした重たい空気の流れる廃墟の中は蒸し暑く、じっとしていてもじわりと肌が湿ってくるのを感じた。


 もう間もなく夏が訪れようとしている、梅雨明け前の湿気を纏った風が吹き抜けた。


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