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神器の巫女  作者: あぼのん
第二章 蛇姫神と迷い猫
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第16話 パンツなんかどうでもよいわっ!!

 どこか遠くから正午を告げる鐘の音が聞こえる、間もなくして工場のシャッターが開くと人影が見えた。

 その人影メドゥーサが無表情のままに弥命と芳乃に歩み寄ると、二人はメドゥーサを睨みあげる。


「どうやら和解できたようであるな芳乃、これでおまえの悩みも一つ解決できたわけだ」

「あら? お気遣いどうもゆうさちゃん、本当に嫌味なくらい気が利くのね神様ってのは」

「ゆうさではない、何度も言わせるな」


 メドゥーサは眉をひそめながら応えた。

 なんだか今度はこっちが喧嘩をしているような感じになっているので、弥命はドキドキしながら二人の会話を聞いていた。


「まあいい、もう間もなくあの小僧がここへやってくる、そこでなにもかもが決着する。そうすればおまえも巫女も無事に解放してやるから今しばらく辛抱しろ」

「どういうことですか?」


 弥命は怪訝顔でメドゥーサに問いかける。

 弥命と芳乃は途中でヒュプノスに眠らされてしまったので、その後の事は何も知らなかった。

 こんな所に石にされて二人監禁されているので、神器を手にした健登といえども神であるメドゥーサにはやはり敵わなかったのだろうと半ば思っていたのだが。


「あの後妾はあの小僧を打ち負かし神器を持ち帰るだけであったのだがな、とんだ邪魔が入りおったのだ。ポイニークーン、今はおまえらの学校の生徒会長とか言っていたな」

「生徒会長が!?」


 なぜ生徒会長が、そう思う弥命であったが同時に合点もいった。

 普段から得体のしれない雰囲気を纏っていたのもさることながら、やはりあの時の神器を知っているかのような言動、どうやらあれは勘違いではなかったらしい。

 なんにせよ常深紫、あの生徒会長が今回の戦いに介入してメドゥーサから健登を守ったらしいということはわかった。


「やはりおまえも知らなかったか姫巫女、あの女はとんだ食わせ物だぞ用心するのだな。さて、あの女との約束でな。これから妾はおまえらと神器を賭けて、あの小僧と一対一で決闘することになった。」


 自分らが寝ている間にとんでもない展開になっていたらしい。

 なぜメドゥーサが一度勝った相手ともう一度勝負をすることになったのかはわからないが、しかしもう一度同じように戦った所で勝敗は目に見えている、とても健登に勝ち目はなかった。


「ゆうさちゃんどうしてっ! もうやめてこんなこと、意味がないわっ! なんであなたと健登が戦わなくちゃいけないのよっ!」


 いまだになぜこんなことになっているのか理解できないが、芳乃はなんとか二人の争いを止めたかった。


「お願いっ! ゆうさちゃん」

「意味がないか……芳乃……おまえは、首を刎ねられたことがあるか?」

「え?」

「知らぬであろう……首を刎ねられても一瞬で死ぬわけではないのだ、全身を失った痛みと苦しみがいっぺんに襲いかかり、恐怖と悲しみが同時に訪れる、肉体を持つ以上神とてそれは人と変わりない」

「ゆうさちゃん……」


 メドゥーサは英雄ペルセウスに首を刎ねられた時の話をしているのであろう。

 その物語であれば芳乃も知っている、首を斬られる痛み、苦しみ、想像したこともない。

 メドゥーサはその痛みを苦しみを今でも覚えているのだろうか、魔力を秘めたその瞳の奥に宿る怒りの炎を芳乃は感じた気がした。

 したのだが……


「憎きアテナ……ことあるごとに自分よりも美しい妾に難癖をつけ、自分よりも優れた妾を侮辱し、自分よりも完璧な妾に嫌がらせをしてきたのだっ!! わかるかっ!? それに耐え続けた妾の気持ちが!! 怒りが悔しさがっ!!」

「え? それって……ゆうさちゃん……」


 なんだかだんだんと恨み言も愚痴っぽくなってきたので芳乃は眉を顰める。

 ふと弥命の方を見やると、なにやら大真面目な目をしてうんうんと頷いている。


 なに共感してんのよあんたは……


「許せんのだ、どんな手を使ってでもあの女に復讐してやらんと、妾の腹の虫は収まらんのだっ!! その為に巫女の中にあるその神器が必要なのだっ!!」

「ゆうさちゃん……だからそれってあなた……アテナに苛められてたの?」

「なぁっ!?」


 芳乃の身も蓋もない言い方にメドゥーサは、神である自分が苛めにあっていたなどとそんな言い草……神である……気高きゴーゴン三姉妹が末妹……石眼の……魔


「苛められてなんかないもんっ! なんだおまえは! いつもいつも妾に対して無礼な娘だなっ!! ばかあっ!!」

「はいはい、要するに苛められてた相手に仕返しがしたいってだけじゃないの、あーもうアホくさー」

「くぅぅぅうううっ! おまえまで妾を馬鹿にしおってえええええ!!」


 悔し涙を流しながらスカートの裾を掴み噛むメドゥーサの姿は、なんだか普通の女の子が駄々をこねて泣いているようでとても可愛らしかった。


「はいはいわかったから、なにも泣くことないじゃないパンツ見えてるわよ」

「パンツなんかどうでもよいわっ!!」


 それにしても神を相手に臆することなく接する芳乃に、それにまるで甘えるように振る舞うメドゥーサ、この二人は余程相性が合うのだろうかなんとも不思議な光景である。

 そんな二人のやり取りがなんだか姉妹喧嘩をしているようで、弥命は可笑しくなってしまった。


「なにが可笑しいのだ姫巫女、おまえも妾を愚弄するのか?」

「あ、いえ、そうじゃないんだけど」

「弥命に八つ当たりしないの! もうほんとに、ねえ弥命? あの神器っての? あの剣この子に貸してあげることできないの? それで丸く収まる話じゃないこれ」


 芳乃の言う通りではあるが、そう簡単に貸し出しできる物であったら苦労はしない。

 某国に仕返ししたいから核ミサイルを貸してと頼まれて貸す国があるか? と言うのとはちょっと違うけどまあ似たようなものだ。

 それにメドゥーサだけならともかく、ヒュプノスの存在が弥命には引っ掛かっていた。

 弥命はまだ今回の件にハーデウスが関与していることを知らない、だがヒュプノスの存在が、この問題をメドゥーサがただ単に仕返しをしたいだけという単純な動機だけではない様に思わせるのだ

あとは一番肝心な問題もある。


「言いたいことはわかるのですが、そうおいそれと許諾できるものではありません、それに……この神器はわたしには解放できないんです。なぜか守羽くんの手でないと引き抜くことはおろか、具現化させることもままならないんです。情けない話ですよね」

「そ……そうなんだ……」


 これには芳乃も困ってしまった。

 だいたい自分の中にあるもんをなんで他人に出してもらわないと出せないのか、まったくもって理解不能であった。

 しかもそれがなんで健登じゃないといけないのよ、わたしがちょちょいとこの娘のおっぱい揉んでも出せるんじゃないの?

 そう思いおもむろに弥命の胸に手を伸ばし揉んでみる芳乃。


 うおぉっ……想像以上ねこれ……


「きゃあっ! 急に何するんですか芳乃さんっ!」

「ちっ……やっぱ無理か」

「なんで舌打ちしたんですか? 意味が解りませんっ!」


 急に胸を揉まれた上になにやら恨めしそうな顔で舌打ちをされたので弥命はなんだか納得がいかなかった。

 それでも許してやってください。だって、芳乃のおっぱいと弥命のおっぱいを比べたら誰だって憐れんだ目で見ちゃうよねっ!!

 そんなくだらないやり取りを黙って見ていたメドゥーサであったが。


「まあそういうことだ芳乃、結局はあやつを説得し抜かせるしかないのだ」

「あー……それはもう無理かもねー……」


 苦笑いしながら冷や汗を流す芳乃の視線の先をメドゥーサが振り返ると、鬼の形相で入口の所に息を切らしながら立つ健登の姿があった。

 芳乃も弥命もそしてメドゥーサでさえも、これはもう話すら聞いて貰えないなと諦めムードになる。


「ゆうさちゃん、もういいやっ! やっちゃいなさいっ! 気の済むまで殴り合えばあいつのほとぼりも冷めるでしょ」

「そんな!? 芳乃さん、本当にいいんですかっ?」

「まあ、言われなくても妾はそのつもりだがな」


 こうなってしまっては健登を止めることはできないであろうと芳乃はわかっていた。

 あんな顔で怒る健登を見るのは久しぶりである、あの顔をしている時の健登は誰かの為に本気で怒っている時だ、それが弥命の為なのか自分の為なのか両方なのかはわからないけれど、芳乃はそれが健登らしいなと思ってしまったのだ。


「ほらっ! やっちゃいなさい健登っ!! そしてわたしと弥命を助けてっ!!」


「あったりめえだあああああああああああっ!!」


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