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神器の巫女  作者: あぼのん
第二章 蛇姫神と迷い猫
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第7話 おまえも腹が減っているのだろう?

 なんであんなことを言ってしまったのだろうか?

 後悔先に立たずとはよく言ったものである、口に出して言葉にしてしまった後にあんなことを言うんじゃなかったと酷く後悔した。

 明日からどんな顔をして弥命と同じ教室で学校生活を送ればよいのか、考えただけで気が滅入ってくる。

 それでも言ってしまったものはもうどうしようもない、芳乃はとぼとぼと歩きながら弥命に言った言葉を振り返る……




「わたし、やっぱあんたのこと嫌いだわ」


 そう言われた弥命は一瞬なんのことか理解できずに不思議そうな顔をするが、みるみるうちに困惑した表情へと変わる。

 それを見た隣にいるメイドが慌ててフォローを入れる。


「あ、あああ、あの、すいません、わたくしめがなにか粗相をいたしましたでしょうか?」


 違う、あんたじゃない


 弥命も芳乃になにか不快な思いをさせてしまったのかと、申し訳なさそうな表情で謝罪してくる。


「あの、ごめんなさい葭埜さん、わたしは見ての通り世間知らずで、知らず知らずなにかご迷惑をお掛けしてしまいましたか?」


 違うの、そうじゃないの


 芳乃は弥命とは視線を合わせずに言う。


「んーん違うの……」

「葭埜さん?」

「違うのよ姫宮、あんたはすごくいいこだと思うし皆に好かれて当然だとも思うわ、これまでだって、ちょっと近寄りがたかったってだけで本気であんたを嫌ってたやつなんていないと思う」

「じゃあどうして?」


 弥命は芳乃が何を言いたいのかまったく理解できなかった。

 紅葉も困惑してしまい黙って二人の様子を見つめている、芳乃は小さく溜息を吐くと静かに言った。


「でもね……それでもやっぱり、誰からも嫌われないそんないいこなんていないのよ」


 そう言う芳乃の顔は無理に感情を押し込めるような、そんな引き攣った笑顔をしていた。

 そして、震える酷い顔で最後に芳乃は付け加える。


「だから……あなたもわたしを嫌ってくれてかまわないから……でないと……わたしは……」


 ―― 今以上に惨めで嫌な女になってしまう ――


 最後まで言葉にできずに、芳乃は振り向き弥命達に背を向けると走り去ってしまった。

 背後から弥命が自分の名を呼ぶ声が聞こえたが、それもしばらくすると聞こえなくなった。



 さて、勢いで走ってきちゃったけど自転車で来ていたんだった。

 引き返してまた鉢合わせになったらみっともないことこの上ない、しかし置いたままにしておくわけにもいかないので芳乃は来た道を戻った。



 コンビニまで戻ってくるともう二人の姿はなかった。

 ホッとして自転車置き場に向かう途中、コンビニの裏のゴミ置き場に人影が見える。

 浮浪者がゴミを漁りにでも来ているのかな?くらいにしか思わなかったのだが、その人物を見て芳乃は仰天した。

 まだ10歳くらいのかわいらしい女の子が、なにやらぶつぶつ言いながらゴミを漁っていたのだ、白いフリフリのワンピースに、腰まで伸ばした長い髪が印象的でその横顔は幼いながらもとても美しい少女であった。

 少女はゴミ袋の中から賞味期限の切れた菓子パンと総菜パンを一つずつ手に取ると、少し残念そうな顔をして包装を開け中身を取り出す。


「今日はこれだけか、不作だな」


 そのゴミを少女が頬張ろうとした瞬間、芳乃は叫び声を上げていた。


「ちょおおおおおおっと待ったああああああああああああっ!!」


 芳乃の声に驚きパンを落とす少女、手から零れ落ち転がるパンはそのまま側溝に落ちてしまった。


「なっ、あぁぁぁ……妾の夕飯が……なんてこと……なんてことをしてくれたのだっこの痴れものめっ!」

「え? いや、ごめんなさい」


 そのあまりの気迫につい謝ってしまう芳乃、尚も少女は怒り心頭捲し立ててくる。


「きさまあっ! きさまもこの収穫場を狙っていたのか? しかしな、こればかりは早い者勝ち。謂わばこれは戦争なのだ。先に獲物を奪われたからと言ってその邪魔をするなど恥を知れっ!!」


 なんだか偉そうな物言いの少女に少しカチンときたが、これはとんでもない場面に遭遇してしまったのではないかと芳乃は不安になる。


「えーとお嬢さん、あなたいくつ? お母さんは? それはこのお店から出た賞味期限の切れたゴミだから食べられないのよ」


 なぜこんな小さな女の子がゴミを漁っているのか? 芳乃は想像したくないが想像してしまった。


 児童虐待!!


 その言葉が頭に浮かぶ、昨今大きな社会問題となっているが自分とは無関係だと思っていたことに今自分は関係してしまっているのかもしれない。

 どうしよう、警察を呼ぶべきか? いやでも間違いだったらどうしようすごく怒られるかもしれないし。

 でも、間違いでなければこれは大変なことだ、ご飯を食べさせて貰えず空腹に耐えかねてゴミを漁っていたのなら、早く然るべき所に通報して対処してもらわないと、取り返しのつかないことになってからでは遅いのだ。

 どうする? どこに言えばいい? スマホで検索するもパニックになりよくわからない。

 そんな芳乃の様子を見て、少女は仕方ないなという表情でもう一つのパンを包装袋から取り出すとそれを二つに割り片方を芳乃に差し出した。


「ほれ半分こだ、今日は特別だぞ、おまえも腹が減っているのだろう?」


 あ、もう無理。


 耐え切れず芳乃は号泣しながら叫んでいた。


「おねえちゃんがお弁当買ってあげるううううううううううううううっ!!」


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