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神器の巫女  作者: あぼのん
第四章 道に外れし世迷人
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第28話 エピローグ裏 それがリンを産み落としたあなたの罪への罰よ

 男は自宅に戻ると冷蔵庫の中から缶ビールを取り出した。プルタブを上げるとプシっと音が鳴り一気にそれを飲み下す。

 一服しようとライターを探すのだが見つからない。


「ちっ、テーブルの上か?」


 愚痴りながら台所からリビングへ行くと男は声を上げた。


「なっ!? なんだおまえっ!?」


 部屋には見知らぬ少女が一人、真っ白な素肌に白いドレスのような衣服を身に纏い、まるで幽霊のようであるがどこか見覚えのある顔であった。


「お、おまえどっから入って……ぎゃあああああああっ!!」


 男が悲鳴をあげる。少女が突如刀を取り出し振り下ろすと男の右太ももを斬り付けたのだ。男は呻き声を上げながら倒れ込む。傷口からは血が流れだし水たまりの様に床に広がった。


「いてえ、いてえよ、ぎゃっ!」


 今度は左脚、脛の部分へ振り下ろされた刀はいとも簡単に男の左脚を切断した。


「んー、男の肉って女とは違って固いのね」


 少女はなんだか不満そうに呟いている。


「あああああっ!やめてくれやめてくれよぉ、リン? おまえリンだろ? おまえ死んだんじゃないのかよ? 復讐しにきたのか? 頼むやめてくれ、悪かった。俺が悪かったからあ、痛い、痛いよぉぉ」


 男はやめてくれと少女に乞う。自分がそう言われた時には笑いながらやめなかったのに、自分の懇願は聞いてもらえるとでも思っているのであろうか。

 少女はニヤニヤと口元に笑みを浮かべながら楽しそうに言う。


「ちがーぅよ。わたしはリンネ。その名前の子はもうとっくに死んでいるわ」

「な、なんだよそれ? 頼む、やめてくれ死にたくない、痛い、死にたくない」


 涙を流し命乞いをする。


「やめるわけないじゃない……こんなに楽しいことっ!」


 リンネは男の左腕を斬り落とし右腕を斬り落としそして最後に右足を斬り落とした。

 刀を振り下す度に鶏のように「ぎゃっ、ぎゃっ」と悲鳴をあげる男の姿がおもしろかった。

 服を引き剥がすと陰茎に切っ先を付ける。


「や……やめ……て、やめてやめてやめてえええええっ!があああああああああっ!!」


 男はそのまま気を失った。




 リンの母親はベッドの上で酒を煽るように飲んでいた。酔わないとやっていられなかった。

 別に望んで生んだ子供ではなかった。行きずりのセックスでできてしまったら男は雲隠れしてしまい連絡が取れなくなった。お金もないし下そうかどうか迷っている内に産まざるを得ない状態になってしまい産んだだけなのだ。


 変な子供だった。気持ちの悪い絵をいつも書いていた。虫や動物の死骸を見ている時の目が異常に恐ろしかった。どう接すればよいのかわからなかった。

 ある時新しい男が煙草を押し付けた時にもがき転げ回る姿を見た時にはホッとした。

 こうすればこの悪魔の子供を弱らすことができると、弱点を見つけたのだ。


「死んだのか……あは……あははははははっ!死んだんだあの悪魔ああああっ!!」


 突如笑い声を上げる、一頻り笑い終えると今度はぼーっとし始めるのだが、部屋から見える廊下の奥、玄関を見つめているとドアがゆっくりと開いていく。

 鍵を閉め忘れたか? と思い立ち上がろうとしたところでギョっとした。


 開いた扉の向こうには、血塗れの少女が立っていた。


 年齢は少し上だがどことなくリンに似ているその少女の姿に恐怖する。

 悲鳴を上げることもできず、ぶるぶると震え見つめていると少女は左手に持っていたサッカーボールくらいの大きさの物を投げつけてきた。ベッドの上に転がるそれを見て戦慄する。


「き……きゃああああああああああああああああっ!!」


 それは男の頭であった。リンに煙草の火を押し付けて日々虐待を繰り返していた男の頭。


「うふふふふ、怖がらないでよ。あなたは殺さないから、あなたは怖がっていただけだものね、うふふふふふ」


 歩み寄り頬に血塗れになった手を当てるとそれを塗りたくる。母親は恐怖の余り失禁した。ガチガチと歯をならしながら声を絞りだす。


「あ……あぁ……リン……リンなの? どうして?」


 名を呼ぶ母親の目を見つめると少女はボソリと言う。


「だれ? それ?」


 足元に転がる男の頭に刀を突き立てると刺したまま持ち上げ母親の顔に押し付ける。


「あははははっ!あはははははっ!ところで、あんたの名前なんだったっけ? あははははははっ!!まあいいわ、あなたは生きたまま地獄に落ちなさい。それがリンを産み落としたあなたの罪への罰よ。あはははははははははっ!!」


 リンネは笑い、男の頭をぶら提げながら夜の闇の中へと消えていくのであった。


「……あ……アハハハ……アハハハハハハハ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!」



 笑い声とも叫び声とも泣き声ともつかない母親の声が部屋の中に虚しく響いていた。



 第四章 道に外れし世迷人

              

                                            完


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