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「改めて紹介するよ。コレがキアラに会わせたかった人だよ。こんなのでも王国騎士団隊長なんだ」
「こんなの・・・」
「非常に不本意だが王都で一番頼りになるのはお前だからな」
「アート、君酷すぎないか?」
ニコニコ笑うアリオトの声は穏やかなのに言葉は辛辣だ
ラムはガックシと肩を下げガシガシと麦色の頭を掻いて『ガーユ』とすぐ側に待機していた掛けた
「訓練は終了だ。いってこい」
シッシッと手を払って言えば、ガーユは呆れた様に目を眇ながらも無言で隊員たちの元へと離れていく
その背を少し見守ってラムは胡乱気にアリオトを見詰めた
「で?」
「キアラが学園に入る事になったんだ」
「はぁ?まだ3つになったばっかだろ?」
「特別クラスだよ」
ピクッと小さく肩が跳ねた
ラムはそれまでの興味なさげな表情を一変して真剣な表情になる
「だから君に会わせに来たんだ。君はあのクラスだっただろう?」
「何があった?」
気遣わしげにアリオトやキアラの身体を見やるラムの眼差しは心なしか険しい
「大丈夫。君が心配するような事は起こっていないさ」
「そうか」
目に見えてホッとした様子のラムにキアラは内心小首を傾ける
アリオトの表情も柔らかいし2人にしか通じない何かがあるのだろうと予想はついた
「しっかし親バカなお前が手放すなんてなぁ。生まれて直ぐに嫁にはやらん!とかほざいてたお前がなぁ」
真面目な雰囲気を一掃させニヤニヤと悪戯な笑みを浮かべるラムにアリオトはムスリと視線を逸らす
「断腸の思いで送り出すに決まってるだろ。悲惨な結末を知っているだけに最善の選択をしたまでさ。ああ、キアラ!本当の本当に君を手放したくないんだよ!しかも、こんな奴に任せないといけないなんて!!」
「君、俺に頼む立場だよね?何でそんな渋々な上に不遜なんだよ」
「休みの日にはなるべく会いに来るからね!」
「無視かよ」
「おとーさん、いたい」
抱えられたまま、ぐいぐい頬摩りされてもハッキリ言ってうっとおしいだけだ
「ま、学園は敷地内だしな。時々は様子を見に行ってやるよ」
「わっ・・・!?」
ニッと人懐っこい笑顔を浮かべクシャリと頭を撫でられる
一見チャラ男に見えるが実は兄貴肌の様だ
男らしい綺麗な顔をしている
成る程、伊達に隊長の地位に就いている訳ではなさそうだ
「さて、保護者代理人としてディーオの把握といこうか」
そう言ってラムは目線で訴えて来た
アクアマリンの瞳が隠しきれない期待にキラキラ輝いている
まるで新しい玩具を前にした子供の様だ
そそそっと視線を逸らしてみたが無言の熱視線には敵わなかった
「ヨル」
諦めて呼べば直ぐに現れてくれる片割れに笑みが浮かぶ
「へぇ、〝ユグ〟じゃないんだ」
キアラの肩に座るヨルに目を合わせ、ラムはふむと唸ってみせた
「ユグ?」
「〝ユグ〟てーのは動物型のディーオのこと。因みに無機物・・・えーと、生きてない物の形を〝イグ〟。そしてキアラちゃんのディーオみたいにどちらにも属さないものを〝ドラシル〟って呼んでるんだ」
「ドラシル」
初めて聞いた話にキアラは素直に感心する
まだまだディーオについて知らない事がありそうだと改めてヨルを見詰めてみた
本人(?)は理解しているのかいないのかギッギッと鳴きながら耳を揺らしている
「俺のディーオもドラシルだ。ベロウ」
ドッと音がしそうな程、圧倒的な存在感を持って現れたソレにキアラは思わず怯んでしまった
どう著せば良いのだろう
蔓の様な太く長い髪は後ろに流れ捻りながら地に着き、顔にあたる部位には布が巻かれ窺えない
ただし口許だけが顕になっている
顔を真横一文字にぶった斬った様に大きな裂け目
ソコにはびっしり歯の様に小さな舌が生えていた
次いで身体は人間に見えるが厳めしい鎧に隠れて定かではない
ダランと垂れた腕が厭に大きく見える
そして、その胴体を支えるのは淫らに開いた唇
スカートの様に広がる唇からは鋭い歯が外層に並び、紅くうねる舌が地面にとぐろを巻いていた
え?これ何てホラゲ?状態である
「ラム、君のディーオは子供向きじゃない。予告なしに喚ぶのはやめろ。キアラが怯えているだろ?」
ギュッと無意識にアリオトにしがみついていた様だ
キアラを守る様に抱き締め直し、咎める様にラムを睨む
「あのなぁ、これから関わっていくなら今のうちに一度見てた方が良いだろ?それにヨルっつたっけ?ソイツの反応も見たかったしな」
ニィと凶悪に笑うとラムは視線だけで促して来た
「?」
疑問に思って肩口に目をやれば普段と違う様子のキアラのディーオがいた
「ヨル!?」
ギチギチと威嚇の声を発てながら体制は毛を逆立てる猫の様
ピンと立った尻尾と鋭く尖る耳
そして、ぶわりと纏うのは闇色の霧
それはまるでヨルの感情に呼応する様に質量を変えていた
「どうやら見た目に沿ぐわず勇猛らしいな。キアラの感情にリンクしてヤル気満々だ」
おどける様に笑いながらも視線は決して外さない
敵意を見せるディーオを前に油断は何よりも愚かな行為だと理解しているからだ
「ヨル、大丈夫だよ」
キアラの感情が落ち着いても一向に警戒を解かない自身のディーオに対し、柔く声をかければヨルは戸惑う様に一哭きした後、一瞬増した霧と共に姿を消してしまった
「拗ねてしまったか?」
その様子を一部始終見ていたラムは未だ咎める様なアリオトの視線に気付き態とらしく肩を竦めてみせたのだった




