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王都である〝グローニャ〟に着いたのは夕暮れ時の日暮れ前だった



「取り敢えず宿屋に行こう」



途中で休憩を何度か挟んでいたといえど初めての乗馬にキアラの疲労は限界だった


体の節々が軋み、お尻がジンと痺れて痛い


アリオトの提案に一も二もなく頷いて、キアラは賛同した




「明日は僕の知人に会いに行くんだ。こっちにいる間はその人を頼るんだよ」



食事も済み、一段落したところでアリオトはキアラに語りかける


ふと見れば、ベッドの上でキアラは穏やかな寝息をたてていた


そんな娘の姿にアリオトはクスリと笑うと小さな額にかかる髪をそっとかき分け唇を落す



「お疲れさま。今日はもうおやすみ」



幸か不幸か、すっかり夢の中にいるキアラはそんなこと知る由もなかった







「……おとうさん」


「ん?どうしたキアラ」



唖然とした


王都だと教えられた街並みに落ちつきなく目を動かしていたキアラは段々と近付いてくる建物に嫌な予感を抱いた



「おしろ?」



でんっと佇む建物はお伽噺に出てくる様な洋風のお城、その門の前にキアラたちは立ち尽くしていた



「ああ、会わせたい人は此処にいるんだ」



なんて事ないように答えてみせたアリオトは固まるキアラに気付かず守衛のいる門を潜って奥へと進む


ぐいぐい進み、まるで迷路の様な道を黙々と歩いていた所で硬質な金属同士がぶつかる音が響いて来た



「もうすぐだ」



そして、その人物はいた



数十人の男性が皆、片手に剣を持ち手合わせをしている


訓練中なのかと目を瞬かせれば、その集団から数歩離れた場所にいた一人の男性がキアラたちに気付き近付いて来た



「アリオト?!」



キアラより濃い黒髪に程好く焼けた肌


涼しげな容姿は整っており清潔漂う気難しい空気をまとっていた


声音も心なしか硬質に感じる



「やあ、ガーユ」



ガーユ…容姿に合わず可愛い名前だ



「王都までどうした?漸く城使いになる決心がついたのか?」


「いや、今回は野暮用でね」


「野暮用?」


「ああ、ラムから聞いてないかな?」



アリオトの言葉にガーユはいやっと否定を示す



「知らないな。アイツはーー・・・」


「あぁ?アリオト?マジで来た?」



ガーユの声を遮りその男は軽やかに降ってきた


比喩ではなく正に上から降ってきたのである



「・・・」



は?と声に出さなかったがキアラは驚愕を隠せなかった



「ラム、キアラが怯えているじゃないか!」


「貴方いないと思えば木の上にいたんですか?まったく、煙と何とかは高いところが好きと言いますが訓練中は自重して下さい」



木の上と言われ、成る程と天辺の見えない木々を見上げる



「相変わらずガーユの言葉には棘があるなぁ。アートは親バカだし・・・と、これは失礼。ご挨拶が遅れました小さき姫。私の名はラムシェル・デ・ラムラと申します。ラムとお呼び下さい」



呆れた様子でユルリと話していたラムは不意にキアラと目が合うとスッと澄ました表情を繕い、流れる動作で口上を述べ紅葉の様な手を取った


そして膝を折り、その手の甲に唇を寄せた瞬間


ガッと正面から延びて来た手に前髪を毟ような勢いで掴み上げられた



「ラームぅ?君、何しようとしてるのかな?」


「イッテっ!?アート痛い痛い!!」


「今のは貴女が悪い」



静かに怒るアリオトに呆れた様子のガーユ


何となく、この3人の関係性が見えた気がした



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