79話 イシュマエル店長、カイチェアについて語る
「カイチェアが欲しいんだけど見せて頂けるかしら?」
「ありがとうございます。ではカイチェアをご覧下さい。ご案内します」
噂、ですか?良い噂なのか、悪い噂なのか気になります。まずは、お客様の反応を注意深く見ながら話を進めて行きましょうか。
カイチェアは当店の看板商品、製品の装飾の有無や、材質、高いもの安いもの色々あります。いくつかのカイチェアを店の中央に、少し高めの台の上に置いてあるのです。
1つは椅子の足、背もたれの裏に彫りの入った豪華な物。
1つは最近売り出した質素な作りの庶民にも手に届きやすいようにと値を下げた物。
さらに大人用の介助用などに使われる事になった物。
さらには、そのいずれにも屋内用、屋外用と円を描くように置いてこざいます。
お客様が1台1台をぐるっと見て回れるように私が考えた見せ方なのです。なかなか好評な見せ方ですよ。
「こちらがカイチェアでございます。」
1つ1つの商品を眺め、私の説明に頷きながら熱心に見て回るご婦人。
さぁ、どうする?どう出る?買うのか、買わないのか?上客か?または曲者?
探る私のその考えを悟られないように、私の顔には笑顔を貼り付ける。
「見させていただいてます。カイチェアと言っても色々ですわね」
「はい、どれも大変人気でございますよ」
「ねぇ、この印がカイチェア全部に付いているけど、これはマーシュ辺境伯の家紋じゃなくて?」
マーシュ辺境伯様の家紋をご存知なのだから、貴族に間違いありません。あー、貴族でなくとも裕福なお家の方なのでしょう。
「はい、このマーシュ辺境伯様の家紋と申しますより、紋章ですね。最近はこの紋章を付けたカイチェアを取り扱うようになりました」
「そう。それはどんな意味があって?」
「はい、この製品がマーシュ辺境伯様の事業であると認識させる事になると伺っております。1つの商標ですね。今後マーシュ辺境伯領から生み出される物には全てにこの紋章がつくようです。」
「なぜ、その必要があるのかしら?」
「それは、まがい物と《《区別》》するためでございます。」
「似たような製品ってございますの?」
「えぇ、似せたものが最近は販売されてますね。」
「あらそう、それならこのマーシュ領の紋章が入っている物は、マーシュ辺境伯製品と分かりやすくていいわね」
「はい、そうでございます。」
「それだけではございません。さらに、《《品質保証書》》という物をお付けしています。」
「《《品質保証書》》とは、品質を保証するってことよね?そのままの意味だとは思うのだけど、なぜ保証書をつけるの?必要かしら?」
「はい。この品質保証書とは、【製品の品質に関する情報をまとめた文書】のことです。製品がどのような品質基準を満たしているか、どのような検査を受けたか、どのような保証が適用されるかなどが記載されています。これにより、製品の信頼性や安全性を高めることができます。それだけ自信のある製品であることを証明する書面となります。」
「信頼性や安全性を高めてこそ安心してお買い求めいただけることになります。そのような理由で、保証書は必要としております。」
「そぅ、良く考えられてるわね。それではその品質保証書の《《保証》》とはどのようなものですの?」
「はい、まずお買い上げ頂きましたら、1つの製品に、1枚の品質保証書がつきます。お買い上げ頂いた日から半年間に、もしその製品に不具合があれば、それを直したり、新しいものに交換できる制度になります。もちろんお代は頂戴しません。」
「そんなことしたら、悪い人が製品に傷をつけたり、なにか細工して、それをあたかもカイチェアに不具合があるって言ってくる人もいたりするんじゃなくて?」
「流石です。ご婦人様。実は実際にそのような事がありました。だからこそ、物を保証する、質を保証する、この【品質保証書】が誕生したんです。これは革命です。素晴らしい取り組みです。だってそうでしょう?」
そうでしょう?そうでしょう?店主、よく理解してるじゃない。




