78話 カイチェアの不具合
「カイチェアが最近手抜きらしいぞ。座った子どもがイスごと前に倒れて怪我したからしい。」
「なんでも、足が1本短いらしいな。それで前のめりになって、子どもが怪我したんだな、手抜きか?」
「売れすぎて手抜きして作ってんじゃないのか?」
「あれだけ売れちゃ、忙し過ぎて手抜きしちゃうこともあるよな、しょうがないか。」
「いや、怪我しちゃおしめーよ。俺ん家の子にも買いたいって言った女房と話してよ、買うのはやめたんだよ」
「最近は、質素な感じの、俺たちの給金でも何とか無理して買えるかも?なんて思える安価なものも出てきていたんだ。流行にもなってるしな。安価なものでも持ってると自慢できたんだ。だから、欲しがってる子どもと女房にも買ってやりたくて金貯めてたさ。だのによ、頑張って高い金払って子どもに怪我させちまうのはなー、買えねーな。」
その日から、日を空け、同じような事がありました。来た人達は見た目は違いました。時には男の子、時には女の子。幾度か同じようなことが続きました。
おかしいですよね?変装はしていますがあの二人、最初に慰謝料を受け取って行ったあの二人に間違いありません。1人はがに股、1人は右肩が上がっています。
男性がふたり、子どもは毎回違うが毎回パンをかじっている。慰謝料を受け取り、何らかの理由をつけて、カイチェアは持ち帰る。
さすがに、こうも似たような事続くのはおかしいと気づきます。この者たちは馬鹿なんでしょうか?いいえ、馬鹿なんです。はい、はっきり断定できます。
そこに気づいた私は、街を巡回しているハンス副団長に相談したのです。
ことのあらましを説明するといつもにこやかな笑顔の爽やかなハンス副団長の顔が怒りに燃えてました。さすがは赤鬼。
「イシュマエル、情報感謝する。」
私がハンス副団長にお伝えしてから数日後には、あの二人が仲間と一緒に捕まったとの事でした。そのあとすぐに、今度は小太りの油ぎって、目はギョロってしている男が遺体として小屋で見つかったようです。
あの二人と、遺体で見つかったあの男はなにか関係があったのでしょうか?
私は長年商売をしてきました。だからでしょうか?事件があるとなにか感じるんです、臭うんです。あの2つの事件は同じ臭いがします。
まだ終わってない、そんな気がしてなりません。このマーシュ領が早く落ち着きますことを願うばかりでございます。
パカパカパカ.........
馬車が来ましたね、どうやらお客様がいらしたようです。
では、私の独り言はそろそろ終わりでございます。
その店の前に、見るからに貴族のものとわかる一台の馬車がゆっくり停止した。
行者が馬車のドアを開け、中からは少し金持ちなくらいな装いの夫人が舞い降り、ゆっくり歩みを進め、店に入ってゆく。
カラカラカラ
客が来たよと知らせる風鈴が、店主を呼びだす。
「いらっしゃいませ、ようこそイシュマエル木工商会へ。ご夫人様、なにかお探しでございますか?」
「噂のカイチェアが欲しいのだけど…」




