76話 ライナスの最後に関わる謎の女
遡る事数日前。
カイチェア詐欺一味の下っ端が捕まった日。
はっはぁはぁ、クソっ、あいつら捕まりやがった。気づかれたのはいつだ?いつバレちまった?ちっ、さっぱりわからねー。
まずいぞ、かなりまずい。
身を隠さねーと俺も捕まっちまうぞ。
とりあえずは報告してってからズラかるか。
「ウーラとエドガーが捕まっちまった。」
「そう、あなたも捕まるかもねぇ」
「いや、その前にズラかる予定さ」
「なぁ、しばらく来れねーんだ、一晩付き合ってくれや」
「うーん、どうしましょう、私、あなたの事好きじゃないし、あなたがどうなろうがどうだっていいのよねぇ」
「なんだと?なんだ、その言い方。今まで俺に惚れてただろ?散々甘えた声出してよっ」
惚れてる?なにを言ってるの?お前が私に惚れてんでしょ。ンフ、だから?使いやすかったけどもっ。
「そうね、甘えた声は出したかもね、そうしたらお前はなんでも私のいう事聞いてくれたもの、便利だったわ」
女が男にお願いを聞いてもらうために、甘えた声出すのなんて当たり前でしょ?そんなこともわからないなんてねぇ。
「はぁ?便利だと?俺を物扱いしやがって。それにお前ってなんだ。今日こそお前を抱くからな。優しくなんかしねーぞ。」
吠えるしか脳がないんだから。お前はお前呼ばわりでいいんだよ。敬う要素ひとつもないんだし。小太りの油ぎったおっさん、目はギョロってしていつも気持ち悪いほどニヤニヤしてさ、なーにが俺に惚れてる?なに言ってんの、お前になんかにちーっとも惚れちゃいないよ。
こいつの子分たちが捕まったんなら、こいつも用なしね。もう要らないわ。
ま、少し優しくしてやるわ、冥土の土産ってことね。サヨナラよ、ライナス。
「まぁまぁ、ねぇ、ライナスさん、落ち着いてっ。あの2人が捕まったって聞いて私もイライラしちゃったの。ごめんなさい。だから、貴方に冷たくしちゃったわ、許して。今、お茶淹れるから、それ飲んで落ち着いて、それからなら、ねっ」
さっきまで怒っていたのに、私がちょっと甘えるフリするとすーぐ鼻の下伸ばしてさ、鼻の穴も膨らんじゃってさ、ニヤニヤしてさ、ほんと気持ち悪い嫌なやつ。でも~、やっと今日でサヨナラよ。
「あぁ、ならいいが次からそんな態度取るなら俺はなにするかわからねーからな、気をつけろっ」
「わかったわ、さぁ、これ飲んで。熱いから気をつけてね」
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ ウッ。
「お‥‥ぃ、お茶になに入れやがった‥うぐっ」
バタっ。
最後までバカね、ライナス。
さっ、おしまい。ライナスの死因は、子分が捕まった、自分も捕まるかもしれん。捕まる前に口を閉じました。
とまぁ、そんな筋書きでいいわよね?
こんなミスをして良いといいの?だめよねぇ、ミスするからこんな事になるの。
さ、私は行くわ。サヨナラ、ライナス。
静かに開かれるドア。
街角にある小さな小屋ほどの家。
静けさの中に軽やかな女の足取りがあり、先にある馬車のドアに身を潜め、女を乗せた馬車もまた闇に紛れるように消えていった。




