7話 妹の誕生と嫉妬
ボクが生まれて1ヶ月が過ぎた。
相変わらず子煩悩な両親とマールは、ボクを可愛がってくれて、たくさんの愛情を与えてくれる。
ボクの一日は
寝て、起きて、泣いて、オムツを変えてもらい、ママのおっぱいを飲んで、また寝る。
その繰り返しだ。
視界がだいぶ開けてきた。
マール以外の人も時々見かけるけど、まだよく分からない。
少しずつ覚えていけばいい。
だってボクはまだ赤ちゃんだから。
さて、今はもう寝る時間だけど、お腹の空いたボクはマールに泣いて訴える。
おぎゃー、おぎゃー、おぎゃぁー
(お腹すいたよー)
「はいはい、カイトお坊ちゃま、お母様のところにお乳を貰いに行きましょうね」
そう言ってマールは慣れた手つきでボクを抱っこして、ママの部屋へ向かう。
3時間おきに来ているから、もう道も覚えたよね。
コンコン!!
マールがドアを叩くと、すぐにママが出迎えてくれた。
「マール待っていたわ、さっ、カイくんを!」
ママは慣れた手つきで服を脱ぎ、ボクにお乳を飲ませてくれる。
ボクはお腹いっぱいになってきて、少し余裕が出来たから、ちょっとだけ周囲を見渡した。
すると―――
ママのベッドの上で、前ボタンを3つも外したシャツの隙間から、筋肉細マッチョなパパが色気ダダ漏れでボクを見ていた。
「カイト、お乳をいっぱい飲んで早く大きくなれよ!アマナのおっぱいは、本当は私のだからな!お前には貸しているだけだ」
ガハハと笑うパパ。
「もう、あなたったら」
ママは少し照れながらパパをたしなめる。
……なにこれ?
ボクは何を聞かされてるんだ。
まあ、パパとママが仲良しなのはいいことだ。
そう思っていた。
そう思っていたことが現実なんだと実感したのは―――
ボクが生後2ヶ月の頃だった。
2ヶ月を過ぎた頃から、ママのお乳ではなく、乳母からお乳を貰うようになった。
そして生後7ヶ月。
ママが太った。
いや、太ったんじゃない。
どうやらお腹が大きくなっている。
そして――
ボクが生後11ヶ月になった頃。
屋敷のなかが、いつもより騒がしかった。
廊下を行き交う人の足音。
慌ただしい声。
マールも落ち着かない様子だ。
「カイトお坊ちゃま、今日はお部屋でお利口にしていましょうね」
どうやらママの部屋の方が騒がしい。
しばらくして――
赤ちゃんの泣き声が響いた。
「おぎゃあああああ!」
その瞬間、屋敷が歓喜に包まれた。
「奥様が無事にご出産されたぞ」
「元気な女の子だ!」
……え?
女の子?
そして、マールがボクを抱き上げて言った。
「カイトお坊ちゃま。妹がお生まれですよ。
カイトお坊ちゃまはお兄様になりました」
その日。
ボクはお兄ちゃんになった。
……まだよく分からないけど。
その時――
パパがボクの頭を優しく撫でた。
「カイト、お前は今日からお兄ちゃんだな」
いつもの豪快な声じゃなくて、
少しだけ優しい声だった。
ボクに――
妹が生まれた。
なんだ、そうか。
そーゆーことか!
ママからお乳をもらえなくなったのも、ママのお腹がどんどん大きくなっていったのも、
妹が出来たからなんだね!
……って。
ふたりとも仲良すぎでしょー!
オヤジ、やるな!
妹の名前はアリアーナ。
パパもママも、妹にメロメロだ。
女の子ってこともあるみたい。
ママはもちろんボクにも優しいけど、やっぱりまだ小さいアリアーナの方についていることが多い。
ちょっぴり寂しくなったボクは――
仕方なく、パパの硬い胸に抱かれて、絶賛甘え中だ。
アリアーナが寝ている時だけ、ママがボクを抱っこしてくれる。
大好きなママの温もり。
甘い匂い。
「カイくんは甘えん坊ね。アリちゃんが生まれて、少しママと一緒に居られなくなっちゃっから甘えちゃうのかな?」
ママは優しく微笑んだ。
「カイくんはママの大事で大切な可愛い息子よ、大好きよ」
そう言って、ボクのおでことほっぺに優しくキスをしてくれる。
……ママ、大好き。
ちなみに。
さっき、ママを取られた気分になって――
嫉妬でアリのおでこを叩いて泣かせたのは、
ママには内緒だ。
……絶対に内緒。




