30話 カイトお坊ちゃまは普通の子ではありません
私はセバス。
マーシュ辺境伯家当主であらせられるダウニー様に仕える、マーシュ家の筆頭執事であり、またはマーシュ家の影でもござます。
私が影である事は当主であるダウニー様しか知り得ない事。でも、最近、私が影であることをもう1人知っておられます!
私が全身全霊を持ってお仕えするダウニー様の御子息、マーシュ辺境伯の次期当主になるべくカイトお坊ちゃんですね。
本来では、新しい当主になって明かされることですが、私は、私の口から告げてしまったのです。カイトお坊ちゃんに、私がマーシュ家の影であると。
カイトお坊ちゃんは、生まれた時は普通の坊ちゃんでした。いつ頃からでしょうか。
カイトお坊ちゃんは、普通の子どもではありません。よく周りを見ていらっしゃいます。大人との会話にちゃんと意味を理解していらっしゃるんですよね。
私がカイトお坊ちゃんが普通の子どもではないと気づいたのは、そうですね、あの日の事でしょうか?
マールがカイトお坊ちゃんにご本を読んで差し上げた日でしょうか。
あの本は、ナップルの本でしたね~。
表紙に書かれたあの文字のようなあのデザイン。まだ誰も読めない、飾りだと思われていたあの装飾です。
「月‥芽が出る‥エルフの長‥」
坊ちゃんの呟きに、私は耳を疑いました。
あの装飾は、文字だったのだと。
しかも、エルフの長とはっきり言いました。
そして、目の動き。文字を読んでいる目の動きです。きっと意味を理解しているんでしょう。
私は驚きつつも、その場は静かに見守ることにしました。マールや他のメイド達もいました。私が影だとバレるわけにはいきません。
いつかどこかで確かめねばなりませんね~。
そして、あの川での事。なぜ坊ちゃんはミソバチのあのクソみたいな、あの臭い、おえーっ、失礼、あの臭いを思い出すと物が上がってきますね。なぜ坊ちゃんは、あのミソバチのあの、例の物が美味しいとわかったのでしょうか?
女神様が告げたとおしゃってましたが、目が泳いでおりました。ウソをつくと人は目が泳ぎますからねー。
坊ちゃんはいったいなに者なんでしょうか?
まぁ、旦那様も奥様、マーシュ家のみんなは坊ちゃんが大好きです。可愛がってますね、坊ちゃんも素直でございます。
だから、大丈夫でしょう。もし、マーシュ家の害なるならその時は、私が嫌われ役になって差し上げます。
さて、一体、いつまで私を待たせるんですかね~。旦那様から、子どものイスを作るように言われましたのに。
モントルー、私、ドアをノックしましたよね~。
「ちょいと待ってくれ」
って一体どれだけ待たすのでしょうか?
待ってる間に、つい、余計な事を考えてしまいましたね~。
さあ、もう一度、
「モントルー様、まだですかっ」
ちょっとドスがきいた声が出たのは、待たせた事にイラッとしたのだから、仕方がないでしょー。
「悪い、待たせたな」




