288 邪魔な存在話
「シルビア様、今日も《《良かった》》ですよ」
皇太子妃のわたくしに許可もなく話しかけてくるなんて不快だわね。
「ハーレン、もう用はないわ。着替えたら出ていって」
「シルビア様、つれないですね、私とあなたの仲ではありませんか?あなたのお子さんの父親ですよ」
「やめて。あの子はジルバートの子よ」
「それは無いでしょ?王子様の髪色も目の色も、私にそっくりでしょ?」
「いいえ、いいえ。わたくしの家系よ。あの子の髪が茶色なのも、目が茶色なのもわたきなしからの遺伝なの」
「変なことをこれ以上言うのは許しません。」
「おっと。枕元にそんな物騒なナイフを隠してたんですね。でも忘れてないですか?私はこれでも王宮騎士団の第2騎士団を任されている団長ですよ、そう簡単には刺される訳ないじゃないですか?危ないから仕舞って下さい」
「あなたには力では敵わないわ。でもわたくしには権力があるの。あまり変なこと言うと消えてもらうわ」
「怖いこと。何も言いません。今日、謁見の間で見聞きした極秘情報も言わずに帰りますよ、では」
「待ちなさい。待って。何の話?」
「こんな情報は話しちゃいけないって陛下から箝口令が敷かれましたからね、そう簡単には教えられないですね」
この男厄介になってきたわ。そろそろ終わらせないといけないわね。
「分かったわ。情報料ね」
ニヤニヤしているこの男に、金貨の入った小袋を手渡す。中を確かめるのも小物感がするわね。
情報を手に入れないと。
「これは《《小銭》》。内容によってはもう少し弾むわ」
「ありがとうございます。気前のいいことで。では、私は今から独り言を言いますよ」
「謁見の間では、陛下、王妃、宰相夫妻、私たち王宮騎士団が数名。そして怪我をしたルーク団長。そいつを担いできた騎士団数名。その後に第二王子とその息子がいて」
そういえばダウニー様の息子が確か5歳の誕生日を迎えて今、《《こっち》》に来てるんだわ。
「ルーク団長はかなりの酷い怪我で意識が朦朧としていて、なんでも足を切断しなきゃ行けないくらい、死んだ顔をしていてね」
ルーク団長は確かマーシュ領の騎士団をまとめる団長だったわね。
「第二王子の息子が持っていたなんか透明のガラスのような容器に入った水をその怪我をしたルークにかけると、怪我や傷が治るっていってて。水をかけようとすると、いきなり白虎が出てきて、それを止めたんです」
白虎?あれは伝説じゃないの?
透明な容器に入った水をかけると傷や怪我を治せるですって?
「そしたらいきなり白虎がルーク団長の足を食いちぎりまして」
なんですって?
「そこに聖水をかけろっていうんですよ。」
その容器の水は聖水?まさか?
「その聖水?を第二王子の息子がルーク団長に掛けたんですよ、そうしたら食いちぎられたところからあっという間に足がにょきにょき生えて来たからびっくりしました」
足が生えた?そんなことある?
そういえば小さい頃お父様から聞いたことあるわ。それはたしか大昔の稀人のユージン様がなした偉業で奇跡だったのではないの?ユージン様以外の人には出来なかった奇跡を、あのダウニー様の息子がしたというの?
「しかも、その白虎はイカルダの女神様の使いらしく、第二王子の息子の従魔になったんですよ、びっくりしたのなんのって」
わたくしもびっくりしたわよ。このままじゃわたくしの息子の将来が危ういわね。やっぱりあの子、邪魔だわ。




