287話 王太子妃の野望
「ねぇ、王子は寝たの?」
「えぇ、王太子妃様、ただいまお昼寝したところでございます、ぐっすりですわ」
「そう、本当によく寝てるわね。」
「あなたは、下がりなさい」
私の大切な息子。わたくしと夫であるジルバート様との間にやっとできた子として、結婚して7年目にようやく授かったわ。
なかなか子に恵まれなかった。
わたくし達が結婚して、同時期に第二王子のダウニー様が結婚して、あちらはすぐに男子誕生。聞いた時はショックだった。
わたくしに子が生まれなければ、いずれダウニー様のお子が王位に就くことになる。
それは嫌。いずれ王になるのは、わたくしの子でなければならない。
でも、ジルバート様は協力的じゃなくて夜を共にすることもほとんどなかった。
そんなんじゃ授かるものも授からないじゃない。
子どもが欲しいとお伝えしてもはぐらかされてばかり。そうしていたらダウニー様に第2子がお生まれだと言うじゃない。
わたくしは焦りで毎日イライラしていたわ。
だから、ジルバート様に気づかれないように媚薬を盛ったの、その夜のジルバート様は見たことないくらいに私に夢中になってたわ。
そして、私は懐妊、あの時の子が、この子ってことにして。
ジルバート様は、子ができた事は喜んでくれたけど、あの日から私に触れなくなった。なぜかしら。媚薬を使ったのかバレたのかしら。だけどあの媚薬は無味無臭よ。
そのあたりかしらね、噂を聞いたのは。
ダウニー様が拝命され、マーシュ領を賜ってから10年、この1、2年前から最近、妙な事が起こり始めたのよね。
初めはただ珍しいイスが売り出されたと思っていたの。子供用の椅子、噂が流れてきてすぐ椅子の販売もされて、このカイチェアは爆発的に売れ始めたわ。噂は噂を呼び、王都にもかなり出回っているわね。
ある時陛下が興奮していたわ。
なんでもマーシュ領に行って来たらしいじゃないの。
そこには見るもの食べるもの今までにこの世界になかったものらしいじゃない。
祭り?なに?汗臭い騎士団や男たちが紐を飛んだり、丸太に登ったり、這いつくばったりしていたらしいじゃないの。
縄を引っ張りあったり、それのどこが楽しいと言うのよ。全く理解不能よ。
ただ気になるのが食事ね。《《味がした》》んでしょ?けどこれも意味不明。だって食事は生きるために食べるだけよ。
塩味だけでは無い味があるなんて、想像もつかないのではなくて?それが、最近、王宮料理が変わったの。
なんでも、陛下がマーシュ領の食事が美味しいからって、マーシュ領に料理人を派遣したらしいわ。その後から料理に味があるって知ったのよね、あの時は感動してしまったわ。悔しいけど。
他にも美味しい料理があるって言うじゃない?王家に運ばれた味噌?だったかしら?あれを料理人にこっそり融通してもらったわ。
もちろん、使い方を学んだ料理人を買収してね。初めは渋っていたけど、金貨を数枚握らせたら、味噌をよこしてくれたわね。
ついでに、味噌汁だったかしら?
あれの作り方も盗んできたから、それを私のコマであるルドン公爵に預けた。
ルドン公爵の贔屓の店で味わった味噌汁は王宮で食べた味噌汁とは、味の格が落ちていたけど、それでも今までの料理と違って美味しかったのよね。
この味噌、まだ売り出し前って言うじゃない。これを使って何かをするのはバレるからまだ保留ね。
そんな事を考えながら、私の体を這うこの男ともそろそろ終わりね。
また王子と同じ茶色の目と、茶色の髪で産まれたらごまかせないもの。
私がクリーム色。私の一族には、濃い茶色の目と髪の者がいるから、私の遺伝が濃く現れたと思ってるわ、王家も簡単に騙されて。
王家には薄紫の子が生まれるはずだもの、今度はどこからか薄紫の男を探さなきゃ。
ジルバート様がダメなら、ダウニー様がいるわね。




