285話 キノセイ、300年ぶりの旅立ち
「なんでみんなボクのことを祈ってるの?」
「それはキノセイがイカルダの女神様の使いだからだよ」
「ふーん、人間って変な祈り方するね」
え?ん?
「あんな風に指なんて立てないよ」
え?こうじゃないの?
人差し指立てて祈るって教わったけど?
「そうなの?」
ちがうの?やっぱり浣腸ポーズ変だよね?
「うん」
「指は立てないよ」
みんな、え?って顔してる。
そして静かに指は立てないで《《普通に》》手を組んで祈りだした。
指立てたの誰?もしかして祐仁さんかもね。
「そうだ、カイト。ボクの魔法をといてくれてありがと。カイトが心を込めて、自ら真剣にイカルダの女神様に祈ってたから、ボクの魔法が解けた。ボクは今からこの世がどうなっているか見てくるよ。何かあったらボクの名前を念じればいい」
え?今から?この世がどうなったか見に行く?なぜそんなこと?
「ボクのそばにいるんじゃないの?」
「そうだね。心配しなくていいよ。ボクはカイトの従魔だけど、その前にイカルダ様の使いだからね。ボクが閉じ込められていた300年の間に世の中がどうなっているか知りたい。知っていた方がいいんだ。」
「だから、少し世界を見てくる」
え?なんか羨ましい。ボクも見に行きたい。
「いーな」
うっ、パパ、急にボクを抱きしめてどーしたの?苦しいよ。
「カイト、キノセイ様について行くとか、思ってないよな?」
おぉー、ちょっと思ったけども?
「うーん、思ってないよ」
「そうか、それならいい」
「じゃ、カイト、ボクはちょっと行ってくる。世界を見たらカイトのところに戻って来る。それまではお別れだ!」
え?行くのはいいけどさ、いつ帰って来るの?
「いつ帰ってくる?明日?」
「いや、明日は無理だろう」
「じゃ、明後日?」
「明後日、どうかな?いつ戻るか分からない。でも必ずカイトのところに戻って来るから。そろそろボク、行くよ」
「あ、うん、分かった。早く帰って来てね、そして世界のこと教えて」
「分かった、じゃ、またね」
またねって手を振るボクに、行ってくるとでも言うようにシッポをブンブンしてキノセイは消えていった。
「ふぅ」
「ちょっと疲れたわ」
「なんかな。今までのことどう受け止めたらいいのか?」
「信じられないけど、真実なのよね」
ちょっと脱力した感じのおじいちゃん達。
「失礼ます。グロー先生をお連れしました」
さっきグロー先生を呼びに行った兵士がグロー先生を連れて戻ってきた。
「話はこの者から聞きました。ルーク団長を救ったと。それがカイト様なんですね。あのペットボトルを使われたのですね。カイト様が、あなたも稀人だったのですね。」
あ、そうだ。グロー先生は昔、ドラゴンに襲われて、祐仁さんがこのペットボトルを使ってグロー先生を救ったんだったね。
「ああ、詳しくはあとだ。ルークを診てやってくれないか?」
パパとボクの気持ちは一緒。
「ボクからもお願いっ。」
「分かりました」
ルーク団長に駆け寄り、診てくれてる。
怪我をしていた足を念入りに。そして全身も。隅々まで確認してくれてる。
ボクが使ったペットボトルの《《聖水がちゃんと怪我を治してくる事は》》ボクは知っている。
けど、ボクの時はほんのちょっとの傷。
ルーク団長のあの酷い大怪我が治ったのかも、不安。
「どうなんだ?ルークは問題ないのか?ちゃんと治っているのか?」
パパは気になるよね。部下だもん。
「……信じられません」
「これが再生した左足ですか?」
グロー先生は、様々な角度から、ルーク団長の左足を確認する。
そっとさすり、聴診器を当て、脈を測り、慎重に状態を確かめていく。
「そう言われないと分からないです」
「ちゃんと温かいし、脈もある」
「ほら、ちゃんと動きます、問題ないでしょう」
「……これは、奇跡としか……」
声が詰まっている?
それだけすごいことなんだ。
ボクは周りを見渡す。
あ、良かったー。みんな安心した顔してる。あとはルーク団長がいつ目覚めるかだね。




