284話 契約の証
白猫、うん、可愛い。
楽しそうに足を動かし、シッポを動かしてボクの周りをぐるっと一周するキノセイ。
「さあ、これでいいでしょ?」
さっきの響くような太くて低めの声とは違い、ネコの姿になったキノセイは子どものような高めの可愛い声になる。
周りのみんなは突然、姿かたちが変わったキノセイに少し戸惑っている。
キョロキョロしたりして。
「キノセイおいで」
床を軽くトンって蹴って、ボクに抱かれる、すっぽりボクの腕の中だ。
「カイト、ボクと従魔契約するよ」
さっきの白虎の時は《《私》》だったのに、ネコになったら《《ボク》》になった。
「カイト、今からカイトの血を貰うよ。ちょっと痛いかもだけど、大丈夫。ボクの額にある石に血を吸わせたら、さっきの聖水で傷を治してね」
うん、こっちのキノセイの方が話しやすいし、なんだか身近な感じ。
「うん、分かった。今準備するね」
腕に抱いたキノセイを床に下ろして、ボクはさっきペットボトルの聖水をルーク団長に使い切ったから新たな聖水作らなきゃいけない。
前もって準備しておいた水差しからお水をペットボトルへ注ぐ。
しっかり蓋をして、上下にシェイク。
シャカシャカ、シャカシャカ、シャカシャカ
いーち、にーい、さーん、しーぃ、ごっ。
ペットボトルの中では、泡がシュワシュワしている。うん、ちゃんと作れた。
さ、1分待つよ。
「用意は出来た?」
事が済むまでには1分はあっという間だよね。
「うん、大丈夫」
「じゃ、指出して」
ボクは無難な左小指を差し出す。
キノセイは、引っ掻く事なく、この小さな口を開き、可愛い牙でボクの指に噛み付いた。
ブスッと、痛い。けど、想像より痛くない。
「ね、痛くないようにしたよ」
ボクは、右手で血を押し出して、キノセイに血の滴る小指を差し出す。
キノセイはボクの指に頭を近づけて、額の小さなひし形の石に血を吸わせる。
石がピカッと強い光を放つ。
ボクとキノセイの足元には……なにこれ!
もしかして魔法陣?
なんだかボクはワクワクした。
これってボクに起きている現実なんだよね?わぁー、すごーい!
その光がボクたちを包み込んだ。
「わぁ……」
石がボクの血を吸って白からピンクへ。
そして赤紫になった。
その後は、そのままスーッとキノセイの中に吸い込まれていった。
なんかすごいっ。
神々しい感じがする、すごいっ、すごい。
何かわからないけどすごいねー。
みんなはじっと食い入るように見てる。
誰も声を発せないまま。
ボクとキノセイの一連の流れを見守っている。
「カイト、傷に聖水を」
あ、あ、そうだ。傷。
ズキズキする傷に聖水を掛ける。
うぉーーーっ、やっぱり痛い。
しみるー、しみるー、痛ーい。
泣きそうになるけど、みんなの前だからボクはガマン。
けど、やっぱり痛いから涙目になっちゃう。
ほー、痛み、治まったー。
うん、傷ないね。
「これで、ボクはカイトの従魔だよ」
「これからカイトが呼べば、ボクがカイトを助ける」
「100守り抜いたら、ボクは自由だ」
「カイト、よろしく。用があればボクを呼んで。あ、心の中でボクの名前を呼んだらボクはすぐ駆けつけるよ」
「うん、分かった」
「あー、なんて素晴らしきかな?」
「ええ、素晴らしいわ」
「私も感動しました」
「カイトちゃん、イカルダの女神様の使いを従魔契約しちゃうなんて」
あれ、おじいちゃん、おばあちゃん達?
どうしたの?感動したの?
浣腸ポーズになって祈りだしたよ。
ブツブツ何か言って、腕を伸ばしたら、胸元に戻したり。
見渡すと、みんな祈りだした。
えー、ボクもやらなくちゃだめ?
あれ?1人だけ。チラチラ周りを見てる。
王宮騎士だよね?容姿は目立たない人。
茶色なふわふわな髪に、濃い茶色の目。
ん?ボクの視線に気づいた?だから?
さっきと違い、みんなと同じように祈りだしたよ。
その騎士だけは、祈りながらもボクをじっと見ていた。




