254話 貸借対照表とパパの疑問
「美味しかったわ」
「本当に美味しくいただきました」
「カイトのお陰で満足いく食事だったぞ」
「はい、私も大変美味しくいただきました、カイト様、ご馳走ありがとう」
うん、やっぱりご飯美味しいと最高ね。
そのまま楽しく談話し、急遽行われた食事会は終わった。
おじいちゃんとおばあちゃん達を見送り、あとは寝るだけ。
明日は衣装合わせ。明後日は、イカルダの女神様からの祝福を頂く日。
翌朝ゆっくり起きて、午前中はのんびり過ごす。
ちょっと興味が湧いて図書室へ足を運んだ。パパも一緒だ。パパは図書室のデスクでボクを見守りながら書類整理。
「キノセイいる?」
「いるよ」
「ね、ちょっと出てきて。猫の姿でね」
「うん、分かった」
うん、真っ白の猫。可愛い。
「抱っこしていい?」
「いいけど」
抱っこして喉元を撫でると、ゴロゴロ言ってるー、気持ちいいんだね。
「気持ちいいでしょ?」
「どうかな?」
いや、ゴロゴロ言ってるし?
なんなの?もしかしてツンデレなの?
まあ、いいや、癒されるから。
パパはボクの方を向いてキノセイを見てちょいと目を見開いて驚いてた。
「キノセイ様ようこそ…?」
ようこそお越しくださいましたじゃないよな?私より先に住まわれているしな、この場合なんて言うんだ?お邪魔します?
ん?パパどうしたの?上向いたり、下向いたり、顎を掴んだり、ん?
「キノセイ様、こんにちは」
「お兄さん、ボクに様はいらない。様なんて言われたらムズムズしちゃうからやめてよね。それと普通に話してって言ったんだから普通に話しなよ」
「あぁ、分かった」
なんだか納得したのかな?パパはボクがキノセイを抱いてモフモフしてるのを優しく笑って、視線を書類に移した。
パパ、さっきから何してるんだろ。
なんかブツブツ言ってる。
気になるー。
「パパ、さっきから表を見比べてるけどどうしたの?」
「ああ、今、財政を見ているんだが、分かりづらくてな」
ん?ちょっと気になる。
「ちょっと見ていい?」
パパがみている資料を見比べる。資産、負債、純資産バラバラで見てる、これじゃあ分かりにくいよね。
「パパ、これバラバラだからまとめたらどう?」
「どんな風にまとめるんだ?」
「あのね、貸借対照表を使うとわかりやすいよ」
「なんだその、たいしゃく?たいしゅう?」
「たいしゃくたいしょうひょう、ね」
「それはどんな物だ?」
「あのね。まず左側に「資産」の全体額を一覧にするの。それは、領が持っている財産だよ。次に右側には「負債」、「純資産」、財産の元となったお金の調達方法を書くの。つまり、「資産=負債+純資産」になる訳。必ず左右で同じ合計金額じゃなきゃいけないよ。」
「ん、なるほど。では、それで何がわかるんだ?」
「これで分かるのは、右側には、領がどのように資金を調達しているのか、左側には調達した資金をどのように事業に活かしているのかがわかるようになっているの。貸借対照表の右側と左側の合計は、必ず一致するんだよね。純資産が多いと安定した経営ができてることがわかるよ」
「なるほど、よくできてる。この表は素晴らしいぞ。文官に教えて活用すれば仕事がかなり捗るぞ」
ん?パパ、ボクを見てどうしたの?
あ、しまった。なんでこんなこと分かるのかって、うーわー、どう説明したらいいの?
「カイト、怒らないから教えてくれ。なぜお前はそんな知識がある?これまでは不思議に思っても、イカルダの女神様からの知識だと言っていたな。これも、そうなのか?」
やばい、やばい。
パパ疑ってる。どーしよー。
前世の記憶ってはなしたほうがいい?
けど、怖い。怖い。
「カイト、なぜ黙っているんだ?パパには言えないことか?」
ごめんね、誤魔化すしかないよ
「うーん、よく分からない。頭に浮かんだの。これがイカルダの女神様からの知識なのかはボクには分からないの」
ね、ね、ボクを見つめて黙ってないで何か言ってよ、ね、パパ?
「ふーっ、そうか」
なんだか納得してない?
「稀人」
え?
「稀人って分かるか?」
ボク、疑われてる?ばれちゃってる?




