251話 アーシャの思惑 ルドン公爵side
「アーシャ、どうするんだ?やるのか?」
「ええ、お父様やりますわよ。私はダウニー様さえ手に入ればいいのですもの」
「そうは言っても孤高の大魔神と言われた方だぞ。そう簡単にいくかどうか」
「あら、あの子、あの子を捕まえれば、良くてよ。あの子を使ってダウニー様を大人しくさせるのよ。そしてこの媚薬をダウニー様に飲ませばいいことよ。これを飲ませれば、ダウニー様は私の虜だわ。」
「そう、上手くいくか分からんぞ」
「大丈夫ですわ。段取りは用意してますもの。お父様、ご安心なさって」
「ああ、しかし、これが王家に知られれば私もお前も、家族諸共断罪されるんだぞ」
「そうね」
「そうねって、アーシャ。私は不安しかない。お前には他にもいい縁談はあるだろ?ダウニー様を諦めて、他の男に目を向けても良いのではないか?」
「いいえ、お父様、私に来ている縁談?もう適齢期を少し過ぎた私にいい縁談は来ていないはずよ。来ていたとしても、死にそうなじい様と、変態な趣味の男、貴族でもない商家の跡取り、そうだったわね?」
「いや、隣国のひとつ、ケンブルクの王から結婚の打診も来ておる、そこで手を打てばよかろう」
「嫌よ、60過ぎなのよ。お父様より年上じゃない。しかもなに?私に王妃でも、側妃でもなく、愛妾よ。しかもなによ、愛妾なんて20人もいるって言うじゃない。どれだけ変態なのよ。どれだけ盛っているのよ。気持ち悪いわっ」
「大丈夫だ、お前は美しい。そしてまだ若い。すぐに一番の愛妾になれるぞ」
「止めて。虫唾が走るわ。大丈夫よ、上手くいくわ。そうしたら、あの美丈夫が手に入るの。あの筋肉も、んふふふ」
「私は最後まで反対したんだ。これ以上の事は知らんぞ。やるなら失敗は許さん。絶対にやり遂げろ、いいな」
アーシャ、なぜあの男にこだわる?
他の女を愛してお前に見向きもしないあの男のどこがそんなにいいんだ?
あの男の婚約者選びが始まった時、王家の文官に金を握らせた。そしてアーシャを婚約者候補に上がらせたんだ。アーシャがあの男に一目惚れをしていたのを知っていたからな。娘を喜ばせたかったんだ、実際に喜んでたな。
しかし、あの男には惚れた女がいて、アーシャには見向きもしなかった。恋する男に振り向いて貰えず、悔しかったのか?それとも、あの男に妬いて欲しかったのか、その時近づいてきた悪い男に溺れた。
あの男は王子だ。影や周りの奴らを通してすぐにアーシャの不貞が知られた。
悪い男は私が消したがな。
あの男の婚約者候補から外され、家にこもり謹慎させた頃からか。
少しづつ、少しづつ、おかしくなって言った。普段はアーシャの様子は変わらない。
ただ、ダウニー様、あの男の話になると、押黙る。爪を噛みながら、目が虚ろになる。何を考えてる?
だけど、何かをするわけじゃない。
しばらくして、社交界には出せないが、取り巻きの令嬢を屋敷に招いてのお茶会は再開を許可をした。
お茶会では楽しそうに笑ってた。
いつもの優雅で上品な娘で、安心したものだ。
それから数年がすぎ、ダウニー様が移住して行ったマーシュ領でカイチェアという商品が出回った。貴族の間でかなりの評判になったから私も買ったのだ。そのカイチェアをアーシャはよく隅々まで見ていた。よほど気に行ったのかと、さらに購入した。
ただ、カイチェアの欠陥品も出ていると話だったが我が家のは問題なかった。
しばらくして故意に過失を作りあくどく働いていた一味が捕まり、その一味の兄貴分が毒殺された。殺した犯人がまだ捕まってない。私の屋敷の自白剤が盗まれた。あれは量を間違えると人は死ぬ。無味無臭だから跡は追えない。まさかな?という疑念が拭えない。アーシャは時々夜自室に居ないことがあったからな。
お友達の家にお泊まり会に出かけることがよくあった。あの日もアーシャは出かけていた。疑いから確信したのは、兄貴分のニュースを聞いた時、アーシャが笑ったんだ。自白剤は元に戻されていた、少し使用されたまま。
「お父様、私はもうすぐダウニー様のものよ、ダウニー様は私のものになるの」




