243話 ルドン公爵とアーシャ公爵令嬢
パパとボクは今、王宮騎士団にやってきた。
お!みんな頑張ってるねー。
やっぱりエリート中のエリート軍団なだけあるね、まだ1人しか石を投げてないけど、石もちゃんと避けている。
だんだん人数も増えていくから気をつけて、頑張って。
しばらく眺めていてある程度落ち着いた頃にみんなを集合させる。
「これからケンケンパーと綱引きを教える。まずはケンケンパーからだ。カイト、お手本を見せてくれるか?」
「うん、分かった。まずケンケンパーは丸をいくつか書いていくの、あんな感じで」
先に用意して置いて正解。
「じゃ、実際にどうやるのか見てて」
ボクはウォーミングアップのようにケンケンパーをやって見せた。
みんなちょいと不服そう。簡単だった?
でも、見ててよ。
丸と丸の間隔を開き、バパに石を全力で投げてもらう。
あっぶねってするところもあったけど、ちゃんとやり抜けた。
みんな、どうしたの?腑抜けな顔しちゃってるけど?あれ?今度はびっくりしちゃった?
「いやー、素晴らしい、素晴らしいですね。お坊ちゃまですか?大人顔負けです。こんなに身体能力が高いのは、ダウニー様の血を引いていらっしゃるからですかねぇ」
だれ?やけに恰幅のある壮年のおじさん。
品はいいけど、毒のある笑顔のおばさん。
妙に香水の匂いがプンプンして、思わず顔をしかめちゃうじゃん。
パパの知り合い?
「いや、お久しぶりですね。ルドン公爵、お元気そうで何よりです。」
パパはそっとボクを背に隠す。
ボクは不思議に思ってパパを見上げた。
「あら、本当にお久しぶりですですわっ。ダウニー様が王都にいらしているなんて、私に連絡してくれても良かったのではなくて?」
「これはこれは、ルドン公爵令嬢。お久しぶりですね。よく私の顔を覚えてますね。絶縁してかなり時間が経ちましたよ」
「まあまあ、ダウニー様、あの頃の娘の若気の至りです。この通り私に免じてもう過去のことは水に流して貰えないですか?」
「そうですね。もう二度と会うこともないでしょう」
ん?さっきからこの親子ってだれ?
パパとなんかあった?
「あら、私は何時でもあなたのものですよ、アーシャと呼んでください。そしていずれはあなたの妻になるべき女よ。」
は?あー、おじいちゃん達が来てた時に話していた人だよ。思い出した。パパのお嫁さん候補の時に不貞したひと!
「あら、こちらはダウニー様のお子様ね。」
なんだか向ける視線が痛い。
「君には関係ないから、この子の事は気にしないでくれ」
一瞬、空気が張り詰めた。
「あら、私は将来のお母様よ。よろしくね、覚えてて」
は?何言ってるの?
ボクはこの忌々しいおばさんを睨む。
「なに、馬鹿なことを言っているんだ。私はあなたを娶る気もなければ、近づきたくもないんだ。自分が過去に起こしたことを考えれば、そんな考えをしないはずだ。」
「そしてだ、私の妻はアマナだけだ。私はアマナを愛しているんだ。だれも、その隙間に入ることなんて一生涯ない事だ。だからルドン公爵令嬢は早く別の相手を見つけることだ。」
「公爵も、娘の手網を引いとかないと困る。我が家に被害があるなら、私は容赦しないから、覚悟して置くんだな」
「まあ、怒った顔も素敵ですよ、ダウニー様、私の旦那様はあなたしか居ないの。」
「馬鹿な考えしないでください。父上は、ボクたちの父上で、母上の事をとても大事にしています。だから諦めてください」
怒りに任せてそう言ったけど、それじゃダメだ。
「あなたはこんなにも美しいのです。あなたに相応しい人は他に居ます。その人に出会うまで、自分自身を磨いてください。」
性格もね。今更、無理だろうけど。
「わはは、ダウニー様のご子息はなかなか見る目がある。どうです。うちの娘と婚約しませんか?」
「馬鹿なっ、そんなことはさせない」
「まあまあ、冗談ですよ。さあ、表敬訪問はこれくらいにして私たちはこの辺で。これから私たちはガリガリクゥーステーキととんでもなく美味しいトン汁を食べに行くのですよ。ダウニー様は辺境地からいらしたからご存知ないでしょう?」
このおっさん、知らないのにも程があるよ。ガリガリクゥーステーキも、トン汁も作ったのボクだから。今から食べに行くとこってきっと全然美味しくないよ、ちゃんとした作り方してないはずだから。
自慢げに話しながら、去りゆく2人をパパもボクも睨みつける。




