239話 声だけ聞こる正体不明な者
ボクは走り出してパパの足にしがみついた。
ボクが足にしがみついたからパパは背を折ってボクの顔に耳を寄せた。
「どうした、カイト?」
「パパ、ここに誰かいる」
小声で話してると、パパはボクを落ち着かせるようにボクの背をトントンと叩きながら
「大丈夫だ、パパがついてる」
優しい声に少し安心する。
すると突然耳元で声がする。
「みーつけた」
「ぎゃーーーーっ」
「カイト、どうした、大丈夫か?誰だ!?」
「こわい、こわい」
ボクは必死にパパの足にしがみつきジタバタする。
尋常じゃないボクの大騒ぎにパパは慌ててボクを抱き上げ周りを警戒する。
キョロキョロしながら、ボクが怖がっている原因を探ろうとしてくれてるけど、ボクはそれどころじゃない。
「びっくりした?」
また耳元で声がした。そこはパパも聞こえたみたい。
「誰だ?」
ボクを強く抱き締め、後ずさる。
「あー、やっぱりボクの声が聞こえるんだね?」
コワイ、怖い、怖いよー。
姿見えないのに、声が聞こえるってナニ?
「大丈夫、危害は加えないから。君たちがボクを認めてくれたらね」
パパも見えない何かに警戒心が高い。
「姿が見えないんだ、警戒するだろ、だれだ、姿を見せろ」
パパは声を荒らげる。こんなに怖いパパ初めてだよ、そっちもビビる。怖い。
チビりそう。
「分かったよ、姿見せるから、その暗器は使わないって約束して」
暗器っていつの間に持ってたのー?
「姿も見せない、どんなやつかも分からないのに、武器は収められるはずないだろ」
そうだよ、そうだよ、誰だよ。
姿見えないから怖いじゃん。
「うーん、じゃ、ごめんね、そこのお兄さんには寝ててもらうから」
プシッ
何かがパパの首に刺さり、パパは首を押さえながら前のめりに倒れた。
「カ、カイト、逃げなさい」
「やだ、ヤダ、パパ」
「おい!お前、パパに何した?出てこい。出てこないのは卑怯だぞっ」
足が震えて、声も震えるけど、パパを置いてはいけない。
気配からしたら、僕たちの前にいるはず。
だから、ボクはパパを守るように両手を広げ足を広げ、頑張って踏ん張っている。
「パパ、起きて、大丈夫?」
ボクの後ろにいるパパに声をかけるけど
「うぅぅん、に、げろ、カイ、ト」
なに?ボクはどうしたらいい?
気配だけはわかるんだ。
こいつがパパをあんな目に合わせたんだ。
絶対許さない。
なんか、なんか、使える魔法。
なんか、なんか、ない?
ボクはパパに抱き着き、念じる。
フンッ、出来た?パパを強く抱き締めボクは瞬間移動をした。ボクの部屋だ。
何とか移動できた、良かった。
あ、でも良くない。あの声は誰?
パパは大丈夫?
どうしよー、どうしよー。
「あ、いたいた。せっかく見つけたんだ。逃がすわけないじゃん。逃げても無駄だからね」
怖すぎ、追ってきたよ、ボクの瞬間移動はあと1回だけしか出来ない。けど、パパも一緒なら無理だ。魔力が足りない。
でも、
「なんか考えているようだけど、何処に逃げても無駄だよ、君の魔力を覚えたからね。だから、諦めな」
ボクはもうここで殺されちゃうの?
いやだ、まだ5歳にもなってない。
やりたいこといっぱいある。
こんな訳の分からない奴にやられてたまるかよ。
でも、為す術がなくて、悔しくて、涙が出てくる。こんな奴のせいで泣くなんて嫌だ。けど、止まらない。
その時、ふっとボクの涙を拭う誰かの手がボクの頬に触れる。
「ボクに触るなっ」
そういうのが精一杯。
「なんだよ、泣いてるから涙を拭いてあげようって思ったのに。親切はありがたく受けるものだよ」
「誰か分からない奴に親切にされても、ありがたくもなんともないよ」
「そりゃそうだ、アハハ!」
「笑うなっ。だからお前誰なんだよ。なんでボクを探してる?見つけたってなんだよ。ボクはお前なんか知らないぞっ」
「うーん、それは当たり前だね、だって初対面だしね」
「じゃあ、なんで見つけたなんて言うのさ、ボクをなんで探してるのさっ」
訳が分からなくなって一気に巻くし立てた。




