233話 初めての王宮
どんな呪文?
「私の名前だ。」
どっち?
「ゆひうろじひんと」
ん?覚えられないよ。
「奇数の場所だけ、偶数の場所だけ読んでみたらいい」
ん?書かないとわからない。
ボクが悩んでると
「さあ、もう終わりだ。カイトはあちらに戻りなさい」
「あ、え。あ、はい」
戸惑うボクに、ヒラヒラと手を振り、またピカッて光って、目を開けたら《《元》》の場所に戻っていた。
「カイト、大丈夫か?あの光は何だったんだ?」
「大丈夫そうだな。なんだ?今までそんな光なんて無かったぞ」
パパたちも戻っている。
裕仁さんに会ったことは何となくボクだけの秘密にした方がいいような気がした。
「大丈夫、なんか眩しかったね、なんだったんだろうね」
「ああ、不思議だ。何かの前兆かもしれん、ちょっと調べた方が良いか?」
「そうですね、父上。王宮に何かあれば大変なことになります」
「そうだな。そうしよう。お前たちが無事なら安心だ。ではこの部屋は調べがつくまで封鎖しておくとする。では、行くぞ」
なんだか大事になっちゃった。
調べても何も無いと思うけどな。
ボクは初めての王宮。あまり良くないけど、ついキョロキョロしたくなるよね?
さっきの転移の間を出て、長い長い廊下を歩く。真っ白な壁に蔓草模様はずっと続いていて、明るくてキレイだ。壁には調度品が等間隔で並んでいる。
壺や絵画、ボクにはそれらの価値は分からないけど、でもきっと貴重で素晴らしい物なんだろう。絵には必ず人物が描かれていた。
ん?同じ人?祐仁さん?
それを確かめる事は立ち止まるしかない。
けど、陛下のおじいちゃんとパパについて行かなきゃ行けないから、歩き続ける。
角を右に、左にと曲がって行くと、どこをどう歩いたかわからない。
「カイト、はぐれるなよ、初めては迷うからな」
「はい、パパは迷ったりしないの?」
「ああ、大丈夫だ。私も10年以上はここで暮らしていたからな。」
そうだ、パパは第二王子様だったよ。
さっきからメイドや兵士、文官、すれ違う人達はボク達を見掛けると立ち止まり、端に寄って一礼し、ボク達が過ぎると動き出す感じ。
おじいちゃんが陛下だもんね、当たり前だ。
「ダウニー様だわ。今日はツイているわね、きゃっ、なあに?ダウニー様に手を引かれてるわ。ご子息よね?可愛いすぎない?」
「「「「「「「「本当に」」」」」」」」
「んもー、なんてかっこいいのかしら、ダウニー様の匂い...嗅いでみたい」
「第二王子のダウニー様、辺境伯になられて城を離れてからかなり頑張っておいでだ。最近教えてもらった表だったか?あれは素晴らしいな。」
「あと定規な。あれが有ると無いとでは、作業の効率化が違いすぎる。」
「なんでも、騎士団がかなり強くなったようだぞ。見た事の無い道具で訓練しているらしい。」
「最近きな臭い隣国に偵察に行って、敵に対する攻撃が圧倒的だったらしいな。」
「ああ、あん時忍び込んだ団員が見つけた決定的な証拠でこちらに攻めてくる計画を知ったんだよな」
「しかも、マーシュ領の騎士団やばいらしいぜ、この国最強だってさ、なんでも祭りがあってその時勝ったのはみんなマーシュ領の奴らばっかりだったみたいだぜ。そして見たことの無い美味い料理が出回って居たらしい」
「料理は食べられるだけの塩味だろ?それが美味いのか?そんなはずないだろ?」
「いいや、今まで食べたことない料理だったらしい。食べたやつはマーシュ領に引っ越すって言っていたな」
「そんなにうまいのか?俺もうまい料理ってのを食べてみたいな。またその祭りはないのか?あれば申し込みたい。」
「あれは、なんでも予選とかあって、そこで勝ち上がった奴らが祭りで競うらしい。会場もすばらしいんだと。キレイでなんでもトイレが臭わないって聞いたぞ」
「行ってみたいな」
「キャー、なに、あの可愛い子。お手振りしてるわ。本当に可愛わね」
「ほら、ダウニー様も一緒に手を振ってるわ!わ、た、し、に」
「違うわよ、気のせい気のせい」
なんだか、ボクたちが通り過ぎるたびに後ろのギャラリーが賑やかだ。
「陛下、私たちはこれで失礼して、王都の屋敷に行きます。」
「なんだ?母には顔を出さないのか?」




