228話 トン汁に恋と、狙われた馬車
「なあ、俺はどうなっちまったかな?」
「あぁ?なんだお前、恋わずらいか?」
「だな、恋しちまったな。」
「おぅ、なんだ、相手は誰なんだ」
「1度だけじゃ足りねー、また、次もってなるんだよ」
「そりゃやべえな、どこの誰だ?」
「ああ、トン汁って名のよ」
「なんだ、おめぇ、そっちか。あー、あれなら俺もまた食べたい、もっと食べたいってなるわな。けど、金が続かねーよ」
「だな」
「どうしたお前たち、なんか落ちてねーか」
「ああ、実はよ、トン汁美味かったって事から、食べたいけど金が続かねーなって話になってよ、我慢は辛いぜって話だ」
「おー、そうか、それは残念だったな、俺は家を売ったぜ、なんか俺の住んでる土地が必要だってよ。土地を買ってくれた代わりに新しい家までくれるってさ。まだ引っ越しちゃ居ないからな、金はまだだが入ってくるのは確実だからな。金が入ったらビストロに通うつもりだ。」
「すげーな、羨ましいぜ」
「あのイヌマって商人がよ、土地を買い上げてるようだぜ、お前らの家もそろそろ声かかるんじゃねーの?」
「夢のような話だな」
「イヌマのねーちゃん、そういや、マーシュ領に引っ越してくるらしいぜ」
「なんだ、あのねーちゃん、左遷か?」
「違うぞ、どうやら栄転ってかな?あのなんだっけな、本店がこっちに来るらしいぞ。」
「「「すげーな」」」
町には噂が広がり、人が動き、そして影も動き始めていた——。
「兄貴、マーシュ領に行った商人がこの道を通るって言っていたが、そろそろか?」
「ああ、情報が正しければな」
「なんだ、はっきりしねーな、ずっと待ってなきゃいけねーのは暇でしょうがね」
「まあ、そう言うな。これが成功すりゃ、報酬弾むって言っていたからな、金が必要な俺達には美味しい話しよ。」
「確かに。でもよ、荷馬車の荷物を奪うんだろ?奪うだけか?なんでもそこの商人は女だろ。いい体してるらしいじゃねーか。別の楽しみも有りそうだな」
「おい、おめーら、あれだろ?偉そうな荷馬車じゃねーか?」
「殺るか?」
ハアハアハア「兄貴、あれはやばいっよ」
「泥沼にハマった商人役のおめーがここにきちゃダメだろ?」
「いや、兄貴、あれはまずいっす、マーシュ辺境伯の家紋が付いてるぜ。辺境伯御用達の馬車は狙ったらまずいことにならねーか?」
「なんだと?どうすっかな?でも俺は金が必要なんだ、躊躇ってちゃならね、行くぞ、お前らっ」
「おらおらおら、出て来やがれ。荷物置いて馬車を降りてきなっ。」
ガチャガチャガチャ
「なっ、なっ、なんだ?お前ら今どっから出てきた?なんだ、俺たちは馬車に声掛けただけじゃねーか?」
「お前たち、抵抗しても無駄だ。この商人の馬車がマーシュ辺境伯御用達の馬車だってことが分からないみたいだな。声掛けた?違うな、脅していたな。脅迫罪だ。」
「こいつらを捕まえろっ」
「「「「「「ハッ」」」」」」
「ハンス副団長、こいつら下っ端のやつらかと。盗賊の真似してるんでしょうか?親を探さなきゃいけませんね」
あの祭りの後から、何やら不穏な動きが多いな。特に荷馬車を襲う強盗騒ぎが多すぎる。まあ、強盗ごとき、私たちには大した敵でもない。捕まえて取り締まればいいだけだ。
「ああ、取り調べをしてくれ。まあ、馬車には被害がなかったからな、針は1本でいいだろ」
「なんでぃ、針って、刺されたくらいじゃ痛くも痒くもねーぞ。だから何も話さんからな」
「まあ、お前ら足掻いているのも今のうちだぞ。親は早めに話しちゃった方がいいぞ。針は刺すんじゃねぞ、飲ますんだ。喉、腹、尻、飲んだ針はお前らの腹の中を刺しながら動いて尻に向かって進むんだ。何処に刺さるか分からねー、もしかしたら、心臓に刺さってあっという間にあの世に行くことも、あるかもしれんな」
「ひえぇー、鬼だ、鬼がいるぞ」
「なんだお前ら知らないのか?10年前に呼ばれた赤鬼のハンス副団長はこの人の事だぞ」
「「「「赤鬼!!!」」」」




