220話 マールの祐仁さんとの思い出話
「この白いのがぽーぽーで、中には甘い油味噌をぬって、巻いてあるよ。そしてこの茶色いのがチンピンで、生地に黒砂糖を混ぜているの。どちらもデザートだよ。」
「ほーこれはどっちももちもちしていて、うまいな。私はぽーぽーの方が好きだ」
ぶぶっ。パパ、だからぽーぽーっていう時に頭の後ろから手を出してひらひらしなくていいから。もー、ボク達がウケてるからわざとしてるでしょー。
「私もどちらも美味しいわね。」
「アリは茶色いのが甘くて好き」
アリ可愛いなー、パパ、ママ、ボクもなんだかほっこりだ。
「最後は、シーレモンジュースだよ」
「ほぉ、なんか色が濃いな、香りもいい。ではいただくとするか」
ママとアリとボクはすでに《《試飲》》済み。パパは初めてのジュース。
「なんだ?濃いぞ、酸っぱくない。甘酸っぱいぞ。これはすごい。うまい。うまいぞ」
だよねー、ジュースだよ。水じゃない。
「美味しいわね」
「うん、おいちー、アリ、これも好き」
「これも全てグランドメゾンで出すのか?」
「うん、そのつもり。黒糖はさっきのように小さくして売ってもいいんじゃないかな?」
「そうだな。あともう少しメニューが欲しいな」
「うん、考えてみるねっ」
「さて、食事は本当に美味しかった。どれもこれもイカルダの女神様からのレシピのおかげだな。みんなも感謝するように」
また1日が終わりを告げた。
翌朝、いつものルーティンの朝の訓練、ビービーとダブルジーをニコイチしたあと、ボクはちょっと悩んでいた。
ナップルの話をエルフであるセバスやマールに聞いたとして、ナップルの本については話せない。よく考えたら《《日本語が読めること》》がわかっちゃう。
わかったとして、どう誤魔化す?誤魔化せるのかもわからない。それに、異世界転生者だという事も、ママのお腹の中で生まれ変わった事も話さなきゃいけない。
ボクはそれが1番怖い。お腹の中で死んじゃった子どものことを知ったら?ボクは責められる?本当の子供じゃないって言われたら?そんなことは、嫌だ。
やっぱり、ナップルの本のことは誰にも話せないや。
気を取り直そう。
「カイト坊ちゃま、何か悩みでもありますか?その、お役に立つかはわかりませんがお話を聞く事くらいならこのマールにもできますよ」
あー、やっぱりマールは優しいな。
だから、嫌われたくない。
「大丈夫よ、ちょっとボーっとしただけだから。それはそうと、マール、セバスと結婚していたんだね、知らなかったよ、びっくりしちゃった」
「んふふ、聞かれませんでしたからね。」
「えー、ボク達長い付き合いなんだから話してくれても良くない?」
「私たちにとっての坊ちゃんとの時間はあっという間に過ぎましたよ。」
そうなの?なんかエルフって長生きするって聞いたことあったかも。
「そうなの?ねー、ねー、マールは幾つになるの?」
「あら、女性に年齢を聞いちゃいけないって貴族教育で教えましたよね?」
「あ、確かに。でも、大体は教えてもらうのもダメ?気になるじゃん。」
「そうですね、エルフの寿命は大体1,000年ですね。私は稀人の祐仁さんともお会いしてますよ」
「え?稀人のひと、祐仁さんていうの?」
やっぱり日本人じゃん。この人があの本を書いたのかな?
「祐仁さんのお話し聞いてもいい?」
「はい、よろしいですよ。私がわかる範囲ならお話ししましょう」
「じゃあさ、稀人の祐仁さんとはどうやって出会ったの?」
「はい、昔話でもしましょう。その前に私とセバスの話からする必要がありますね」
マールは、話が長くなるのか、ボクをソファーに座らせて昔話を始めた。




