216話 黒糖作り
ボクが居た前世ではたしか、20cm程度のサトウキビ4~5本で約100ccのジュースが取れたはず。そしてサトウキビ1kgから約120gの砂糖ができたっけ。
田舎のばあちゃん家にサトウキビが植えてあって1月から3月の土日祝祭日はキビ刈りを手伝わされたよね。
お駄賃は1杯のサトウキビジュースと、いっぱいのご馳走。そして黒砂糖だった。
サトウキビジュースは中休みに振る舞われたな、3月になると20℃を超える日も多くなってきていたから、熱中症対策や疲れた体に甘いものって感覚だったのかも。たまの寒の戻りの時は粉黒糖に生姜を少し入れた生姜湯もおいしかった、懐かしいな。
「坊ちゃん、坊ちゃん、聞こえてますか?泣いてますが、大丈夫ですか?」
セバスの声に慌ててボクは目をこする。
「うん、大丈夫。心配ないよ」
こんな時のセバスは何かを察してくれているのか、それ以上は何も聞いてこない。出来る執事だよね。
ゴードンもみんなも、気づかない振りをしてるぽい。何気にみんなボクに背を向けてるから。
「ありがとう」
聞こえるか聞こえないかの小さな声でお礼を言った、恥ずかしいからね。
「さあ、次は、この汁を 漉してね」
丁寧に 漉され、鍋には不純物のないキレイな緑色の汁が出来上がった。
ボクはまたあの本の内容を思い出す。
《《その汁をかき混ぜながら煮つめてみよ。そうすればひとつの暗闇のように照り輝いてくるだろう。》》
「次はこの汁を煮詰めていこう。初めは強火で、煮立ったら中火にして。焦げないように注意してね」
火が通ってきたら、甘い匂いも強くなり、辺り一面甘い匂いだ。はー、幸せすぎっ。
緑色だった汁は茶色から黒くなっていく。
かき混ぜる料理人の額に汗が出て、腕に力が入って来ているのがわかる。料理人達は交代しながら鍋の汁をかき混ぜていく。
みんな興味津々で代わる代わる鍋を覗き込んだりしている。
《《暗闇のように照り輝ければ、もう煮詰めなくて良い。》》
って言ってたからそろそろいい頃かな?
「色が変わって暗闇のように照り輝いているよね。じゃ、火を止めて。」
《《あとはまた続けてかき混ぜながら冷ましてゆけば良い。あとは固くなるだけだ。》》
「火を止めても、まだまだかき混ぜるよ。頑張ってっ」
漆黒の汁は水分がとんで重くなってきているようだ。まだ湯気が出ているから熱いよね。
もっともっとかき混ぜて行くと、さっきまでの照り輝いていたものとは違う焦げ茶色の粘土質になっている。湯気も出てこなくなった。
《《食べてみよ、至高の極み!感じるが良い。》》
「じゃあ、かき混ぜるのをちょっと止めて。少し取ってみるよ。」
スプーンでひとさじすくう。料理人にはまたかき混ぜてもらっている。
湯気は出ていなくても、熱いはずだからフーっフーってしているボク。
はやる気持ちとワクワクしてる。
「坊ちゃん、まずは毒味をしない事には、私が毒味を致します」
いやー、セバス、ロックオンしてんじゃん。食べたいの?エグ味あって青臭くて不味いんじゃなかった?
「あれ?好きじゃないって言ってなかった?」
「いいえ、そんなことは一言も申してませんよ。その前に貴族は毒味の後しか食べてはいけませんよ。ご存知ですよね?ですからそのスプーンを私に寄越して下さい」
えー、そんなー。でも言われてるのはもっともなんだよね。仕方ないよねー。
渡したくないけど渡した。スプーンを受け取ったセバスはゆっくり温度を確認するように口に含む。
だよねー?やっぱりこうなるよね?
目を見開いちゅったよ、からのー、至高至福の満点の笑顔、だよねー、美味しいよねー。
「だめ、セバス、おかわりはないよー」
えっ?って顔しないの。今度はボクの番なんだからね。
「いただきまーす」
食べたよ。濃厚で甘くて、頭が痺れそう。
これー、きたー、もう最高ー。
ボクのニヘラな笑いと、思わず垂らしちゃったヨダレに、みんな我先にとスプーンを持ち出してきたよ。




