206話 表と筆算
表って《《こっち》》にはないのね。
「パパ、紙と定規とペンを借りていい?」
「ああ」
そばにはセバスがそれらをサッと用意してくれた。
ボクは紙に定規を使って表を書いていく。
収入と支出の紙を作り、それぞれ同じように
通し番号、日付、区分、項目、金額、備考
横に書いていく。最後は金額の一番下に合計だけを書ける枠を追加した。
それを見本に、定規に慣れたセバスにも手伝ってもらい数枚書き上げる。
「これを写して欲しいの」
セバスは部下を呼び、写すように指示を出す。
パパは数枚書いていくうちに、その利便性に気づいたようだ、さすがはパパ。
「よし、では今度は報告書を仕分けていくね、大きくは収入と支出に分けていくの」
パパとセバスとボクで仕分ける。
山ある資料がふたつに分けられた。
まずは収入からで、次は区分に分ける。今回はグランドメゾン、ビストロ(店内販売、テイクアウト)、祭り会場の4つ。
こちらは用紙を分けることにしていく。
グランドメゾンは、食事は招待だったけど、あとからおじいちゃん達のようにアラカルトとして案内したら、追加注文も入っていたらしい。
ビストロはかなりの料理が飛ぶように売れていた。テイクアウトも売り上げは予想以上のようだ。会場もかなり売り上げていた模様。
次は報告書通り表に転記していくだけ。
そこもパパとセバスに教えると、2人とも感心しながら記入していく。
つぎは、支出。
祭りで準備した材料、人件費、それらが中心。材料はほぼ自給自足だけど。
まとまった収入用紙は、1枚づつ縦の計算だ。
縦の計算をしていくと、不思議そうな顔のパバとセバス。筆算も分からない?
そこからかー。
ボクはまずはふたつづつを足していく。
説明を聴きながらパパとセバスも同じように計算をしている。10進法だ。
繰り返し教えるとこの計算法の利便性も理解できたようで、2人ともだんだん計算が早くなっていく。
「これは便利だな。」
「はい、かなり計算が早くなります」
「ああ、しかも間違えも少なくなるしな」
「よし、この用紙は最後まで計算できたぞ。合計は一番下に書けばいいな」
「これを全部の紙で計算していくよ。最後に収入の紙を全部足したら、全収入がわかるよ。これが終わったら、今度は支出も同じように全部の紙を足して、最後合計を出すよ」
「うん、収入と支出、それぞれ合計がでたから、収入から支出を引いて。出た答えが利益ってこと」
「カイト、すごいな。改めてお前の知識には驚かされてばかりだ。イカルダの女神様にも感謝しなければいけないな。本当に凄いことだぞ」
ボクの頭を撫でながらパパはニコニコしている。それをセバスは温かい目で見守ってくれてる。
素晴らしいです、坊っちゃん。あなたのその知識をぜひ我がマーシュ領に活かしていきます。ぜひ私の故郷のエルフの里にもその知恵を貸して頂きたい。
坊っちゃまは随分前の、過去にいた川の氾濫を見事に解決したあの青年と同じ知識を持っているようです。稀人なのでしょうか?そうでなければ、この数々の功績に説明がつきませんね。
旦那様も、奥様も、他も皆、坊っちゃまがもたらす知識は全てイカルダの女神様からだと思ってるようです。私もそう思っていました。けれどあの青年と坊っちゃまは似ているんですよ。
イカルダの女神様からの知識であれば、坊っちゃま《《も》》知らなかった知識なはずです。しかし、その知識を話す時、ちゃんと《《理解》》して話されている。話に矛盾が一切なく、《《理解しているものが教えてる》》んです。
あの青年は稀人でした。あの青年は死ぬ間際に私にこう話してくれました。
この世界よりはるかに高度な技術を持った異なる世界から来たと言ってましたね。
ある日急にこの世界に飛ばされて来たと。
けど、坊っちゃまは急にこの世界に飛ばされてきたのではありません。旦那様と奥様の子として生まれてきました。
そこが謎なんです。稀人の知識をなぜ坊っちゃまが持っているのか?
その理由のわかる日が来るのでしょうか?
まずは様子見ですね。




