198話 グランドメゾンでの挨拶、アーシャの策略
グランドメゾン。
「ここが、新しいレストランですの。素敵なお店ね。」
「グランドメゾンという意味、高級レストランて意味なんでしょ?なんか素敵な響きね」
「ねぇ、あなた。コース?さっき説明を受けたけど変わった食事が出るなんてどんな風に料理が出てくるのかしら、楽しみね」
「ああ、今回は辺境伯様からの招待だからな、この食事も全てご馳走して頂けるようだぞ。食べて美味しかったら是非また来て欲しいとな。太っ腹だ。」
「さあ、どんな料理がでるのかしら?さっき入口で説明があったわ。何が出されても一口は必ず食べて欲しい、だなんて。あって驚く料理なのかしらね」
「見て、ダウニー辺境伯様がいらしたわ。相変わらずに美丈夫だこと」
「本当よね、はー、素敵すぎて眩しいわ。」
「ダウニー辺境伯様、なにかご挨拶されるようね」
「皆様、本日はようこそ、我がマーシュ領へ。そしてグランドメゾンへお越しいただきありがとうございます。今日皆様にご案内をする料理は、皆様にとって驚きの連続でしょう。まずは味わって頂きたい。どんな材料で、どのような味がしているのか?躊躇うことがあるかもしれないが、一口は是非食べてみてくれ。」
私の合図で給仕が始まった。
メイドが給仕の際に、料理の説明をしていく。皆、やはり驚き、手をつけるのを躊躇う者もいる。しかし、私がいるからか1口、また1口、口に運んでいるようだが、口にする度に、歓喜が起こる。
いつもなら静かに食事をゆっくり味わうのが貴族の食事の仕方なんだが、美味いんだろ、目を見開き、目が輝き、中には涙目になりながら食を進めている。
「美味しいわ」
「いや、これまでの料理はなんだったんだ。もうこの味を知ってしまった。屋敷の料理はもう食べたくない」
「知らなければよかったわ、もう私は他の食事が出来なくなりそう」
「ここの料理を、このレシピを是非譲って頂きたい」
「あー幸せ、もういつ死んでもいいわ」
そんな中だ。
「あの、辺境伯様。この珍しい料理は今後どうされるのでしょう?このグランドメゾンに来れば、また頂けるのですか?」
「ああ、具体的な日にちは決まってないが、近々オープンする予定だ。」
わぁー
これだけ高評価ならオープンを早めてもよいだろう。
「ありがとうございます。楽しみにしてます。それで、もしかして、予約が必要でしょうか?」
「ああ、予約が必要だな。席に限りがあるし、オープンの日にちは追って知らせるつもりだ。是非周りの人を誘って来て欲しい。」
「ありがとうございます。あの、えっと大変申し訳ないのですが、必ず次は私も行きたいとご希望がありまして。」
なんだ?なんか挙動不審だな。
「ほー、どなたのことか?」
「実は……ルドン公爵令嬢もお誘いしてもよろしいのでしょうか?」
困ったな、断りたい。さっきあの話を聞いたばかりだ。尚更断りたい。しかし、他の貴族の手前断れんぞ。
あいつはこういう手を使うんだ。他の貴族がいる前で、断れないように、わざと。
「………、ああ」
そう言うしかないだろ。断れないように。
やられた。
「では、みんなも楽しんでくれ。」
私は皆の前を後にする。
心に不安を感じる。不愉快だ。
あの女が来ようが相手にしなければ良い。
そして、何かしてこようなら、私は容赦などしない。
もしかするとカイチェアもあの女が絡んでいるのか?どんなに調べても主犯が分からなかった。ルドン公爵なら、しっぽを出さないのも納得がいく。
最悪だが、さて、どうするか。
考えておかなければ。
用心が必要だな。
私はカイトの待つ部屋へ向かいながら考えていた。
カイトには不安な顔は見せられないからな。よし、笑うぞ。
「カイト、待たせたな。いい子にしていたか?」
待たせてしまったようだ。
テーブルにうつ伏せにすやすや寝ている。
ルークが上着を羽織らせてくれたようだ。
大人の上着にすっぽり収まってる。
その姿を見て、まだ幼いのだと改めて認識する。私の愛する我が子だ。
この小さな体にイカルダの女神様の加護は大きな負担になっているのではないか?
心にくすぶる不安に蓋をして明るく息子に声をかけた。




