186話 怪しい男からの声掛け
「あのー、トイレはどこですか?」
「あー、後ろにある、ほら、あれがトイレよ。凄くキレイで匂いもしないわ。いったいどんな技術が使われていのかしらね」
「そうなんですか?良かった。いつも臭いが嫌だったから助かります」
「マーシュ辺境伯様の発案で今回の祭りが開催されたようですな。いやいや、見てるだけでハラハラドキドキしますな。どうです?どっちが勝つか、勝負しませんか?」
「いいですね、賭けますよ」
「お知らせします。ロープ飛びの個人と団体の準決勝チームが決まりましたー。休憩を挟んで個人、団体の準決勝戦は午後から行います。アスレチック競技はまだまだ続いております。皆様、引き続き応援下さい。」
色々なところで楽しんでいるようね。
うんうん。みんな楽しんでいるみたい。
やったねー。
「パパ、盛り上がってるね?」
「ああそうだな。こんなに盛り上がるとはな」
「うん、嬉しいね」
団体戦、個人戦、どちらも笑いあり、迫力あり、ハラハラドキドキもあって、みんなが心から楽しんでくれているのが、この大きな歓声から伝わってくる。
あまりの歓声の大きさにびっくりだよ。
隣にいても声を大きくしなきゃ聞こえないくらいなのかあちこちで大声ではなしてる。それくらい盛り上がっている。
ボクたちの席は後ろの方だから普通の声で話せるけどね。
貴族の皆様は、パパにご挨拶がひっきりなしだ。パパもにこやかに挨拶を交わしている。
さてと、盛り上がっているけど、だんだんと貴族の皆様が移動し始めた。お昼タイムだね。
「あなた、私はグランドメゾンに先に行っているわね。アリを屋敷に送ってから向かうからもう行くわ。」
アリは初めてのお出かけだからお昼前には屋敷に戻ることになっている。
「アリ、気をつけて帰るんだよ。」
「うん、パパもお兄ちゃまもまたね。」
おっとー、帰るのやだって言ったりはしないのね。もしかしてスラちゃんとヒナたち優先かな?
ママに連れられて帰るアリに手を振る。
パパが誰かに気づきたようだ。
「カイト、少し待って居なさい。私は少し席を外す」
あれ?パパはどこに行くんだろー?
一般席の方に行くね?ん?誰かに挨拶してる!誰なんだろ?
「今、話してもいいかのー。」
誰?突然声を掛けられた。声の方をむくと50代くらいの優しそうな笑顔の男性が声を掛けてきた。
「はい、どちら様でしょうか?」
なんか怪しい。鑑定眼君、この人大丈夫?
《《はい、ご主人様。大丈夫です。ご主人様に対して、好意的です。ただ鑑定ができません。隠密されております。》》
なんだって?ボクに対して好意的?え?幼児趣味なの?隠密?身分を隠してるってこと?ますます怪しい。
《《そのような好意的ではなく、どちらかと言うと「興味対象」のようです》》
「なあに、怪しいもんでは無いぞ。」
いや、十分に怪しいけど?警備は何してるの?僕を助けないのかな?何故か見守ってるみたいだけど、このおじさん、怪しい人なんじゃないの?
けど、大勢の人のいるこんな場所で事件なんて起こらないよね?
話しかけられているからにこやかに対応しなきゃ。もしかしたらお忍び貴族かもしれないからね。だって《《辺境伯嫡男のボク》》だって知って普通に話しかけてくるから。
「こんにちは。なにか御用でしょうか?」
「ああ、今回わしは初めてこの街に来たんだか、いい街だな。」
「ありがとうございます。父上が喜びます」
「この祭りとやらは誰が考えたのかな?なかなか面白いことしてるなと思ったんだが、お父上が考えたのか?」
「はい、父上や、私どもの騎士団が考えました。」
実は、前もってこの質問が来たら、ボクの事は話さないように言われている。
「おん、そうか、そうか?」
「トイレも入ったが匂いもせん。あれはどのような仕組みだ?」
うん、これは今回話していい部分だけ話そう、その手筈になっているからね。
「はい、実はスライムなんです。スライムはなんでも食べてしまうので、もしかして汚物も食べるのでは?と考えて試したら食べたんです。それも匂いも消えたので、今回トイレに使ってると《《父上から》》聞きました」




