16話 女神様からのお願い
ボクは3歳になった。
相変わらずご飯は薄味だ。
というより――ほとんど全部、塩味だけ。
最初は、ボクがまだ小さいから塩分を控えているのかと思った。
けれど、違うのだ。
この屋敷の料理、全部が薄いのよ。
正直に言うと……もう飽きちゃった。
そんなある日の食事中。
「どうした、カイト。最近食が細いな」
パパが不思議そうにボクを見る。
するとママが心配そうな顔をした。
「そうなの、最近のカイくん、あまりご飯を食べてくれないのよ、どっか悪いのかしら?」
「あなた、グロー先生に診てもらってはどうかしら?」
「そうだな」
待って待って待って!
違うんだ。
ボクは体調なんて悪くない。
健康優良児だよ。
ただ――
塩味だけのご飯に飽きただけなんだ。
「もう、やだ、ご飯おいちくない」
その瞬間だった。
「おい!ゴードンを呼べ」
パパ声が低くなる。
うわ、怒ってる。
少しして――
「ゴードンが参りました、旦那様、お呼びでしょうか?」
強面のオジサンが入ってきた。
顔が真っ青で、プルプル震えている。
「おまえ、料理作って何年になる?」
「ハッ、ハィィ、旦那様!」
ゴードンは背筋を伸ばす。
「私は料理を作って30年。料理長などとなって10年、ずっとこのお屋敷で働いてきました」
「そうか」
パパは短く答えた。
「本日はなにか問題が……?毒味もしておりますし、いつも通り料理をお出ししております、ヘイ!」
敬語に最後ヘイって。
ちょっと面白い。
きっと平民なんだろうな。
料理長ゴードン、よし、覚えたぞっ。
――あ、ちょっと間って。
ゴードンめちゃくちゃビビってるよ。
手をどこに置いてるの?
パパが怖すぎて、縮みあがっちゃってんじゃん。
……何がって?
いや、その……ナニが。
なんで今、ボクの鑑定眼発動するかな?
ゴードンのゴードンが小さくなってます、って――
そんな情報いらないから!
「うむ……私も分からんな」
「ゴードンの料理はいつも通り。毒もない。では、なにが問題なんだ?」
するとママがいった。
「あなた、カイくんがさっき小さな声で「美味しくない」って言ってたの」
「私はいつもと変わらないと思うんだけど……」
あ、これはもう言うしかない。
「ママ、パパ違うよ」
みんなが、ボクを見る。
「ゴードンは悪くないよ。」
「塩の味しかしないの。でもね――」
ボクは言った。
「もっと美味しーいご飯、ボク知ってる!」
「ごはん、おいちくしたい。」
そして、ちょっと考えてから言った。
「ボクこの前ね、夢見たの。女神様が出てきたよ。」
「「「え?!」」」
部屋にいる全員が固まった。
「なんだって?!」
パパが立ち上がる。
「カイトは女神様に愛されし子なのか?」
いや、そこまでじゃないよ。
「え?そうなの?そうなの?」
ママまで大騒ぎだ。
ママ、違うってば!
「さすがは、マーシュ家のお坊ちゃま。」
執事のセバスまで目をキラキラさせている。
「女神様に愛されるお方……可愛い上に尊いとは……」
セバス、目がハートになってるよ、ボクその気ないからねっ
ねぇみんな、ちょっと待って!
みんなして拝まないで!
「さぁ、カイト」
パパが真剣な顔で聞いてくる。
「女神様は、なんとおっしゃった?」
期待の目だ!
えーと……
「女神様、ボクに言ったの」
ボクは思い出しながら話す。
「ご飯おいちくしてね、って。」
「それから、この国を豊かにちなさいって。」
部屋が静まり返る。
「ボクにできる?って聞いたら――」
ボクは続けた。
「ボクにしか出来ないって」
パパの目が見開かれる。
「なんだと……」
「でもぉ……」
ボクは言った。
「ボクまだ魔法使えないよ」
「だって、まだ3ちゃいだから」
「そしたらね、プレゼントあげゆって」
パパがつぶやく。
「ご飯を美味しく……」
「この国を豊かに……」
そしてボクを見る。
「カイトは……女神様の使いなのか?」
ママは目を潤ませている。
「カイくんが……女神様の使い?」
「なんて素晴らしいの……」
いやいやいや。
そんな大げしゃじゃないよ。
でも。
ボクは心の中で思った。
この世界のご飯は、まだまだ美味しくなる。
マーシュ領も、もっと豊かにできる。
だったら――
やるしかないよね。
ボクが。




