149話 マールと文字のお勉強
ボクの部屋の勉強机には、動物の皮で出来た用紙に、マールお手製の文字のお勉強、前世でいう「アルファベット表」みたいな表がある。どちらかというとパソコンの文字入力に近い。
「さぁ、カイトお坊ちゃま。今日からは文字や計算を学んでいきましょう」
「うん、楽しみ」
っても、読めるし、書けるけどね。
なんなら計算もできるよ。
日本の義務教育、小学生が必ず通る道だしね。
「さ、これから私が読むので、その後カイト坊っちゃまは、私の真似をしてくださいね」
「えい」
「えい」
一通り読んで問題ないらしい。
「では、次にカイト坊っちゃまが一人で読んでみましょう」
初めから完全に完璧に読むのはまずいのかと思い、時々、引っかかたり、読み間違えてマールに教わったりした。
「カイト坊っちゃま、凄すぎます。私は感動してます。天才ですか?」
それでも、マールの中ではかなり優秀らしい。
「では、文字を組み合わせて、単語を読んでいきましょう」
「うん」
「これは、か、い、と、ですよ。坊っちゃまのお名前です。では、坊っちゃまの名前を指さしながら、言ってみてください」
「カイト·ブラウン·マーシュ」
ボクは完璧に僕の名前の文字を指さしながら、ボクの名前を言っていく。
「はぁぁ、こんなにすぐに覚えてしまわれて凄いです。感動です」
マール、祈ってるね?そこのみんなもさっきから驚いて、手をパチパチして、ニコニコして、ウンウンしてるよね。んで?マールと一緒に祈ってるー。
「では、お父様、お母様、アリアーナお嬢ちゃまのお名前を指さしてみましょう」
これも完璧!エッヘン。
「はー、こんなに手がかからないお勉強があったなんて」
「あはは、多分ボク、文字も書けそうな気がするっ」
「そうですか、そうですか。では、この用紙に文字を書いてみましょうか。なんて書きますか?」
「えっとね、ないしょ。今から書いてみるからマールはあっち向いてて」
「あらあら、分かりましたよ。書き終わったら教えてください」
「うん」
ボクに背を向けたマール。ボクは文字を書く。あっという間に書き上げられるけど、初めての文字を書く前提だから少し時間をかけて、間違いもしつつ、それを直した風にも装いながら文字を書いていく。
「できたよ、マール、読んで」
「はい、楽しみですね。では読みますね」
「マール、大丈夫?なんで泣いてんの?」
「坊っちゃま、よく書けました。ありがとうございます。ありがとうございます。嬉しいです。」
ボクを抱きしめてくる。いつものマールの暖かい抱擁にやっぱり安心する。
「まーる、いつもあり、がてう。ここは《《て》》ではなくて《《と》》ですよ。そして、いつもの《《も》》とありがとうの《《あ》》の部分を1文字あけましょうね。ありがとうの間の《《、》》もいりませんよ」
ボクを離して、泣きながらマールはボクの書いた文章に手直しを入れる。
「だい、ちき?これはなんでしょうか?」
「あ、間違えた?「大好き」って書いたつもりなんだけど」
いつも言葉では言えずにいた大好きの気持ち、口に出すのは照れるねっ。
「ここも《《、》》もいらないですよ。《《ち》》ではなくて《《す》》ですね。では、初めから書き直しましょうか」
「うん」
「まーる、いつもありがとう。だいすき」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
泣きながらボクをまた抱き締める。
けど、マール涙でボクの肩はびちょびちょだよ。
「マール、大丈夫?泣かないで?」
そんなに感動するんだ。喜んでもらえてよかった。けど、涙で濡れたのどうにかしたい。
あ、マール鼻かんだね。みんなも、ハンカチで涙拭うとこ?そんなに感動したの?
「すみません、カイト坊っちゃま。今日のお勉強はこれで終わりです。暫くは文字の読み書き、すぐに忘れないように何回も練習あるのみですよ。明日から毎日頑張りましょう。カイト坊っちゃまならすぐに読み書きできますから大丈夫です。」
マールは嬉しそうにボクの書いたあのマールへの感謝の紙をそっとポケットにしまった。




