13話 幻のナップル
ボクは2歳なった。
2歳にまでに色々わかったことがある。
ボクのパパは、
ダウニー·ブラウン·マーシュ。
我が家の当主で、なんと、辺境伯だ。
イスカダルの国の南の砦を守る仕事をしている。
……パパかっこいい!
領名は、マーシュ領。年中緑豊かな土地。
日本で言うと沖縄っぽい。
ハイビスカスやブーゲンビリア、なんならヤシの木だっていっぱいだ。
ボクん家のお庭は南国そのもの。
近くに海はあるのかな?
食卓に上がるのは前世で見た事あるような果物だったりする。
たまにって言うけど、
実はまだ食卓に1回しか出たことがない果物がある。
ボクの2歳の誕生日に1切れだけパイナップルがあった。
この世界では、ナップルっていうらしい。
食べてみたけど、アクが強くって、そして物凄く酸っぱかった。1切れだけ。
このナップル、とーっても貴重なんだって。
何でも幻の果物と言われてて、滅多に食べることが出来ないらしい。
ただ、分かっていることはエルフから貰えるらしい。塩と交換って。
なんでも、夏の満月、月が真上に登る頃、湖面にいっせいに芽が出て、どんどん大きくなって実がなっていくんだって。
その実は大きくなって成長しきると急速に萎んでいくから、その実を採るには時間の勝負。
ある程度大きくなったら実を刈り取るんだ。
刈り取られた実はそこで時間停止の魔法が発動して1年は腐らないらしい。
けど、その湖がどこなのか、エルフの長しか知らないらしい。
秘密の湖はエルフの長しか知らない。
エルフは貴重な塩と交換でその実を人間に譲ってくれるらしい。
なぜ2歳のボクがそんなことを知っているかって?
ボクの世話係のマールが読んで聞かせてくれた本に書いてあった。
なんて事ない絵本なんだけど、ボクの目には本の文字が二重になって見えた。
最初は自分の目がおかしいのかって、目を擦ったりしたけど変わらない。
ジーッと見つめていると――
文字が浮かび上がって来た。
ファンタジー!
いや、大興奮だよ、大発見だよ!
本を読んでくれるマールには本の文字しか見えないと思う。
ボクには
《《満月の、月が真上に登る頃》》
って浮き上がる文字が見えてる、だけど本には「真夜中」ってあるし。
《《セリーヌ川》》
って、浮き上がる文字には書いてあるけど本では「あるところに不思議な川」って書かれている。
え?マールには浮き上がる文字が見えてない?この
《《満月の、月が真上に登る頃、セリーヌ川ではナップルの実が一斉に大きくなっていく、それは見ていて楽しいものだ》》
って浮き上がってる文字見えないの?
思わず浮き上がる文字に手をかざす。
浮き上がる文字はボクが手で触れると揺れるんだ。
そしてボクの手は浮き上がる文字をすり抜けて本に触れる。
「マールゥ、つゅき、まんま、おっきぃ」
(マール、月は真ん丸お月様、満月だ)
って教えてあげる。
けど、上手く伝わらない。
「今日は三日月ですよ、満月ではないんですよ、あらあら、カイトお坊ちゃま、お外に気が向きましたか?退屈でしたかねー?もうご本は読まなくていいですか?」
「うううん、ごほん、大すき、マール、もっと読んでくれる?」
キラキラお目目でお願いしちゃえ。
「うっ!…てっ、天使だわ」
マールは直ぐに笑顔になる。
「分かりました、お坊ちゃま。続きを読みますね、あるところに不思議な川があり、そこには・・・」
凄いっ。
なんかすごい!
もしかして、ボクだけなんて、女神様が言っていたプレゼントってこれのこと?
なに、なに、鑑定かな?
これって。超すごーい!
……あれ?
急に体から力が抜けてく。
これって、もしかして魔力切れ?
「あらあら、お休みなさい。カイトお坊ちゃま、また明日ですね」
マールが言い終わる前にボクは多分魔力切れに近いのだろう、思ったより鑑定は疲れるみたいだ。グー。




