111話 卵が食べたいの
「あのね、鳥の卵が欲しい」
豚があるからトンカツ。鳥もあるからチキンカツ。牛もあるよね?和牛だし、牛カツも!オムライス、あ、お米ない。卵焼き、とにかく卵が食べたーい。
ん?あれ?ママもゴードンもどうしたの?
そんな驚く事?
「カイトお坊ちゃん、卵は食べないですよ」
えー?なんで?美味しいじゃん。
そうだよ、卵出たことないよー。
「え?美味しいー、と思うよー。なんで食べないの?」
おっと、危ないっ!この世界では卵はまだ食べたことないから、美味しいって断言できないんだったよ、ぶぅー、危なっ。
「だって、卵の中には雛がいるじゃないですかい?あれはちょっと可愛そうだし、産まれる前に殺すのはちょっと、それは、しないとです」
え?有精卵なら雛が育っていずれは卵から孵るけど、無精卵とか、雛になる前の卵なら普通に食べるよね?もしかして、サルモネラ菌?それで食中毒になった?
さっき卵に雛がいるって言ってたな。もしかして黄身、白身の事知らない?
「ねー、卵っていつ取ってるの?」
「いや、取らないですぅ」
「取らないのになんで、卵の中に雛がいるって知っているの?」
「たまーに、割れた卵が見つかるんでさ。割れた卵には必ず雛がいるんだそうで」
「鳥が卵を生んですぐとか、生まれて2、3日の卵を割ったことある?」
「ないですな。卵を取らないですからな」
そーなのー、食べ物として考えがないんだ。でも食べたいな。
「卵は食べられるはずだから、その日に産みたての卵を用意して欲しいの。ねっ、お願い。」
ゴードン、困った顔しないで。
「えーっと、どこで買えますかね。売ってるとこやお店を知らないんでぇ。」
ガーン!そんな!
「じゃ、まずこの鶏肉の、生きてるとこみたい。そこでどんな鳥なのかとか、卵とかみたいの、ゴードン段取りお願いっ」
「それは構いませんよ。鶏肉を仕入れている店は養鶏をしてるから、そちらに話を通しますで、よろしいですかえ?」
「うん、ありがとう。」
「ママは、パパの説得をお願いっ」
「わかったわ、美味しい食事のためだ………可愛い息子のためだもの。パパを説得してみるわ」
じとーっ。ママ、今美味しい食事のためっていったねー、んでさらっと言い直したねぇ?
「パパを説得するのはママに任せてね」
「うん、ママ、お願いね」
「じゃ、ママ、今日の夕食楽しみにしててよ。パパよろこぶよね?」
「絶対に喜ぶわ。泣いて喜ぶはずよ」
そして、その日の夕食は、もちろんチキントマートゥスープは大絶賛の上に、感動で涙を流すパパに高い高いをされ、また吐きそうになった。
さて、美味しい楽しい食事の後は、久しぶりに本が読みたくなった。
アリも一緒にボクの部屋でマールに本を読んでもらって、アリがボクのお部屋でお泊まりなんてこともよくある事だ。
アリは本を読んでもらう度に、途中から寝ちゃうんだ。だから、本の内容は最後まで分からない。
「おにーちゃま、今日もお兄ちゃまのお部屋にいっていい?マールにご本を読んでもらいたいの」
「うん、いいよ。アリ、ボクの部屋に行こー」
「うんっ」
ニコニコ笑顔のアリの手を繋ぐ。
アリはボクの手を握り返してくれる。
仲良く2人並んで僕の部屋へテクテク、テトテト歩く。
ボクのベッドにアリとボクは並んで座ってマールを待っている。
コンコン!
「マールでございますよ」
「入って」
数冊の本を抱えたマールがボクの部屋に入ってきて、ボクの部屋のテーブルに本を置いた。
「さあさあ、カイトお坊ちゃま、アリアーナお嬢様、今日はどの本にしましょうか?」




