110話 美味しいご飯に目覚めたママは暴走中
「カイくん、ママ、このスープが、すっごく好きだわ。もう一生このスープだけで生きていくわ。毎日このスープでもいいわっ」
いやいやいや!ママ、それはダメでしょ!
「ママ、もっともっと色々美味しい料理作れるはずだから、そんな事言わないでっ」
ママに抱きしめられたままのボク。
きゃー、ママ、そんなにキスしないでー。
唇は奪っちゃやーよ。
ファーストキスもママに奪われたし。
なんなら唇はパパにも奪われたし。
アリ、うん、アリはいいのよ。
アリのファーストキスを奪ったのはボクだけどねっ。
「カイくん、ママの子どもに生まれてきてくれてありがとう」
あはは、このタイミング?
「ママ?美味しいご飯を作れるボクだから、ママの子に生まれてよかったの?」
「なに言ってるの。美味しいご飯は必要だけど、それだけではないわ。あなたはパパとママの大切な可愛い息子なの。愛してるの、これは絶対に忘れないで」
「うん、パパとママがボクのパパとママで良かったよ」
キューッて抱きしめるママの力はボクの心をとっても満たしてくれる。
ボクからも、ギューってしちゃうね。
カイくん、また匂うわね。けど、今日のチキントマートゥスープの匂いだわ。これは大変だわ、なんか永遠に嗅いでいられるわ。
ママ?なんかさっきからボクの匂い嗅いでない?クサい?あれ?ママ深呼吸になってるけど?
気のせいかな?ゴードンも近いっ。
やだ、ふたりとも大丈夫?
「ママ、ちょっと離してくれる?」
やっと抜け出せたー。ママ、ボクの匂い嗅いでちょっと変態ぽいよ。もしかしてパパの匂いも嗅いでるのー?なんか、やだぁ。
想像しちゃって思わず顔をしかめる。
「カイくん、ママに抱きしめられるの、そんな顔するくらい嫌なの?」
あちゃー、ママが拗ねちゃったよ
「そんな事ないよ。ボク臭うの?」
「このスープの匂いがして、カイくんが美味しそうって」
えー?なに?ママもなの?
お尻かくせー、緊急事態だぞー。
我が家の人達、ボクをどうしたいのかな?
「ママ、ボクを食べちゃう?」
「んふふ、可愛いから食べちゃおうかしら?」
いつもの妖艶ウィンクじゃないよ、今日のママ。
ボクが焦ってると、ママがフッと笑う。
「カイくん、焦って可愛い。食べちゃうのは冗談だけど、それだけカイくんが可愛いって事だから安心して」
う、うん。わかってはいるけどたまに冗談なのか、本気なのか分からない。
そんなとこって、貴族の『表情を悟られないようにする』ってことかな?
貴族怖ーい!ママ怖ーい。
「わかったよ、ママ」
「ねぇ、そろそろスープが気になってるんだけど。」
「あ、そう。スープね」
「カイくん、今日の夕食にはこのチキントマートゥスープも出るのかしら?」
期待 し、す、ぎ !! ウケるよね~
「うん、出すよ。本当は別の料理も出したいんだけどね」
「なんですって?他の料理ってなんなの?カイくん、ママに教えて。いえ、違うわ。新しいスープかしら?」
うーん、スープじゃなくて。
「ごめんね、ママ、ボクが作りたいのは材料が足りないの」
「なんですって?ゴードン、カイくんの言う材料はこれからは全部揃えてちょうだい。美味しいご飯のためだもの」
「はい、奥様。承知しやした」
「それで?何が足りないの?すぐ用意するわ」




