106話 トマートゥは薬だけど、美味しい食材です
ボクは早る気持ちでその赤い薬?に近づく。近くによって確信する。
これ、トマトじゃん。こんな所にあったのー。薬認識なら、見つからないはずだよ。
「お坊っちゃまは、トマートゥが気になりますかな?」
「うん、これはトマートゥっていうの?どんな時に使うの?」
「これは、解熱剤ですよ。水分補給にも使えますな」
そうだよ、そうだよ。確かトマトは、体を冷やす効果のある夏野菜だよね。水分も多く含んでいるから夏バテの時や、体や、口の乾きを潤してくれるんだ。
「ただ、青臭くてね、苦手な人が多くて。またすぐ痛むから、売れる前に腐っちまう。それもあって全然売れないんですよ。だから仕入れもしません。」
「今日は野生の熟れたトマートゥがあったんで採ってきたんですよ。近くの小さい子が熱出したって言うから食べさせようとしたけど、嫌がられてね。この通り余ってしまいました。」
トマトだよ、万能野菜だよね。美味しいじゃん。トマトスープ、鶏肉のトマト煮とか、美味いじゃん。
「ボク、これが欲しいです。全部ボクが買います。いくらで売ってくれますか?」
いくらでも、ちょっと高くても買うぞ。
ま、お金はパパが払うんだけど、これは何がなんでも買うんだからっ。
「ね、ね、ボクがトマートゥ全部買います。それでもし良かったらこのトマートゥが野生に生えている場所も教えてもらいたいですっ」
「ご主人、息子が欲しがっているんだか、譲って欲しい。いくらかな?」
「領主様、お代はいりません。売るつもりで採って来たわけじゃありませんし、トマートゥ自体はうちは、と言いますか、どこの店でも売ってませんよ。」
やったー、タダで貰える、嬉しー。
「ありがとう。おじいちゃん」
「いえ、お坊っちゃまに喜んで貰えて、私も嬉しいですよ」
「そうそう、トマートゥは、イリンの森の入ってすぐの所に生えてましたよ」
イリンの森?どこのことだろ?
「あー、イリンの森か、あそこだな。情報感謝する。これは情報料として取っておきなさい。」
ん?お付きのメイドさん。おじいちゃんに持たせたよ、なんだろ?
後でパパに聞いてみよう。
その後は、特に珍しいものはなく、ボク達は市場をあとにした。
いやー、思いがけずにトマトが手に入ったね、嬉し~。
「どうした、カイト。このトマートゥが手に入ってそんなに嬉しいのか?これは私も食べたことがないな。どれ!」
あ、パパ、勝手に食べないで。
「あ、もう勝手に食べちゃだめ」
「うっ、これは生臭いな」
そんなに美味しくないかな?
まあ、昔の野菜はエグ味があったらしいから生で食べたら生臭いって感じるのかもなー。確か、前世でも田舎のおじいちゃん家に遊びに行った時、戦争の話を聞いたり、昔の話を聞いたりしたよな。昔の野菜は苦い物が多かったって。最近は品質改良されて野菜の味がしないとか言ってたな。ゴーヤーも最近では苦くないって言ってたっけ。
「そう?ボクも味見してみよっ」
一つかじってみたトマトは、確かにエグ味があった。多分おじいちゃんが話してくれた昔の野菜はこんな味がしていたのかもしれない。今はもう確かめることは出来ないけれど、何となくおじいちゃんの話が本当なんだってわかった気がした。
「本当になんか生臭いね」
「どうした?泣くほどだったか?」
ボクは泣いてたみたい。
トマートゥが生臭いからじゃなくて、前世の記憶が蘇ったからちょっと懐かしくなっただけ。そんなこと言えないから
「パパ違うんだ。このトマートゥもイカルダの女神様のレシピにあって、無限の可能性がある食材なんだよ。食が広がるんだよ。だから、ボクは嬉しいのっ」
「なんだとー。美味いのか?これが、美味しくなるんだな。そうか、楽しみだな。今までカイトが作るイカルダの女神様のレシピは全部美味しいからな。あー、楽しみだ。」
「うん、楽しみにしていて!」
「わかった。んで、カイト」
「なあに、パパ」
「今夜楽しみにしてるからな」
あはは、どれだけ楽しみなの?
美味しいの作るからね。
あまり沢山じゃないから、何を作ろうかな?
ボクは、帰り道。トマトをベースにしたたくさんの料理の中から何を作ろうかと考えていたから、気がついたらあっという間に屋敷に着いていた。




