22 作戦会議
「真犯人からの手紙か……」
閻魔庁、第百二十八部門のソファに座り、小野から一連の状況を聞いた久場が腕組みをしてそう呟いた。久場の向かいに座る小野が話を続けた。
「そうなんです。名前の部分は、あの同心の妨害で破れてしまって分からなくて……このままだと、春之助さんの臨終時幸福度が下がったままのような気がしまして」
小野の隣に座った阿佐美が応じる。
「春之介さんは、たまたま拾った書状の中身が裁判に影響しないかずっと気にするほど真面目な人みたいですからね。冤罪の可能性があると知って、それを解決できなければ、絶対に一生悔やみ続けますよ」
そういうと、阿佐美がどら焼きを手に取って食べた。久場がため息をつく。
「一難去ってまた一難か……とはいえ、今回初めて手紙を読むところまで進んだんだ。なんとか天国へ行けるようにしてあげたいね」
「となると、春之助さんがこの真犯人を見つけ出して冤罪を防げるよう、サポートする必要があるということですね」
小野がそう言った。相当ハードルが高そうだ。
久場が頷くと、阿佐美に尋ねた。
「閻魔帳データベースで、堀端屋の清吉さんの人生を調べられないかな。何かヒントがあるかもしれない」
「調べてみます」
阿佐美が自席に戻り、ノートパソコンで検索を始めた。
「あ、ありました。清吉さんは、堀端屋の手代、今でいう中間管理職のサラリーマンですね。同じく手代の庄吉さんを殺した罪で、寛政元年十二月十三日に十七歳で刑死しています。小野君が行った日から二か月ちょっと後ですね……」
阿佐美がノートパソコンを見ながら言った。
「清吉さんは、やはり冤罪ですね。堀端屋の主人の娘で、一歳年下のお仙さんを庇って自ら身代わりになったようです」
阿佐美が閻魔帳データベースで調べたところ、事件の概要は次のとおりだった。
……寛政元年九月二十五日(西暦一七八九年十一月十二日)夜。お仙に一方的な好意を寄せていた庄吉が、お仙の部屋に忍び込み、お仙の寝込みを襲った。
お仙は抵抗し、枕元に置いていた小刀で、抱きついてきた庄吉の背中を刺した。
その直後、事態に気づいた清吉がお仙の部屋に助けに入ったところ、清吉と庄吉が揉み合いになり、縁側から中庭に転げ落ちた。
転げ落ちた際、庄吉は背中から落ちた。背中に刺さっていた小刀が深く刺さり、そこで庄吉が絶命した。
その後清吉は、お仙に固く口止めすると、自らが小刀で庄吉を刺したと言って自首した……
「ちなみに、清吉さんは、お仙のことが好きだったようね。身代わりで死刑になったけど、愛するお仙を守れたという気持ちがあったんで、臨終時幸福度は問題なく天国に行っています。お仙さんの人生も調べてみますね」
阿佐美がノートパソコンで検索すると、驚いた顔をした。
「あ、お仙さん、長期未済案件に入っていました。お仙さんも、実は清吉さんのことが好きだったようです。清吉さんを助けるべく自首しようとしたけど、両親に止められ、しばらく家に閉じ込められてしまったそうです。店の小僧さんを使って、本当は自分が犯人だという書状を奉行所に投げ込んだのですが、結局、あの同心が燃やしたみたいですね……」
阿佐美がパソコンの画面から顔を上げた。
「お仙さんは、その後、近くの堀に身を投げて亡くなっています。もちろん臨終時幸福度は足りていません。こちらも過去に何度かサポートしているようですが、臨終時幸福度が伸び悩んでいて、天国へはまだ行けていませんね」
「なるほど、もしかすると、これを踏まえて上手く春之助さんをサポートすれば、お仙さんもまとめて天国へ行けるんじゃないか?」
阿佐美の説明を聞いた久場がそう言った。小野が心配になり久場に聞く。
「あの、かなり難易度が高そうですが、僕で大丈夫でしょうか……」
「大丈夫! 小野君ならきっとクリアできるよ」
そう言って、久場がニカッと笑った。




