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転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件  作者: 想いの力のその先へ
第三章 17歳 辺境領、フェネクス

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五十二話

 閣下との会談で大枠を決めることは出来た。しかし、それだけで終わるわけにもいかない。協力者が必要だ。それも、中央。王都に影響力のある協力者が。

 そして、俺の知己のなかでそういう人物はひとりだけ。


「お久しぶりですね、アインくん」

「お久しぶりです、夫人」


 そう、ディオスクロイ子爵夫人。つまり、マイア夫人だ。


「それにしても、あなたがわざわざこちらへ乗り込んでくるとは。どういったご用事で?」


 にこにこ笑いながら問いかけてくるマイア夫人。しかし、目だけは鋭く笑っていない。警戒しているのだろうか。

 まぁ、分からなくもない。

 マーネン商会を通じて間接的に取引しているとは言え、そこまで親しい間柄でもない。そんなやつが直接乗り込んできたんだ。警戒するな、というのが無茶な話だ。


「まずは感謝を。王都で精力的に動いていただけたようで」

「あら、なんのことかしら?」


 クスクス笑う夫人。心なしか、雰囲気も柔らかくなっている。感謝しているのは事実だし、嘘は言っていない。

 それゆえに警戒を多少解くことになったのだろう。


「それで、そんな夫人にお願い事があってきたのです」

「お願い事、ですか……」

「えぇ、夫人の情報網にて協力していただきたいことが」

「それは……?」


 少なくとも、無茶なお願いではない。現状とほぼ変わらないのだから。


「噂を流していただきたい。これまで通りの噂と、そして、それに公爵閣下が危機感を抱いている、という噂を」

「閣下が……?」

「えぇ、そうです」


 奇しくも、王都には俺が奇人変人という悪評が広まっている。ならば、それを最大限利用させてもらう。

 シナリオとしてはこうだ。


 奇人領主が森向こうの土地を開拓しだした。農業都市を作るつもりらしい。しかし、そうなると帝国との国境が近くなる。それを公爵閣下は憂慮している。という内容だ。

 そして、この農業都市とは金鉱がある都市のことだ。


 本来は隠した方が懸命だ。王都にいまだ金鉱のことがバレていないのだから。だが、このバレていない、というのを利用する。

 ここにあるのは金鉱ではなく、農業だ。と印象付ける。印象付けてしまえばこちらのもの。まさか、農業都市に文字通り金の卵があるなど思うまい。


 そして、本来食糧というのは生活にして軍事物資。これが野心ある相手に渡るのなら警戒する。

 だが、それを取り込もうとするのはサルガス王の腹心でもあるイオス公エルファス。そうなれば人々、貴族たちはこう思うだろう。パルサ王国を守るため、辺境領を管理下に置こうとしている、と――。


「ですが、それをすることでこちらのメリットは?」


 ――マイア夫人のある意味当然の問いかけに、俺の思考は中断される。


 そして、マイア夫人を見ると。

 そこには真剣な表情をしながらも、どこか楽しそうな彼女の姿。

 閣下といい、夫人といい、人を試すのが好きなことだ。


「経済ブロックへの参入――は、既になされようとしているので置いておくとして。泥舟からの安全な離脱、というのは魅力的ではない?」

「……イオス公の軍門に下れ、と?」

「早いか遅いかの違いでありましょう?」


 そう、公爵家が公国として独立するとすれば、その時は対等な扱い、というわけにはいかない。どこかで閣下を立てる場面が出てくる。それが早いか遅いかだけだ。


「なるほど、確かに。ですが、それだけでは――」

「強欲は身を滅ぼしますよ、夫人。良くご存じでは?」


 その言葉で、ぐむ、と二の句が告げなくなるマイア夫人。そう、彼女はよく知ってるはずだ。アクラという醜聞を。

 ……まぁ、それだけで終わらせても良いが。せっかくのことだ、今後のことも考えて少しは勉強するとしようか。


「……と、言いたいところですが、それではあまりに不義理。ゆえにひとつ提案があります」

「なにかしら?」

「我らに投資する気は? ちゃんと利益は還元しますよ」


 いまももとの世界に連なる技術を色々研究させているが、やはり先立つものが必要だ。そして、それらは今後の激動の時代には必ず必要となるだろう。

 たとえば火の秘薬。火薬は出来ているがそれを使用する武器。火縄銃などはまだ試作段階で実用に足るのは、それより前のてつはう。つまり前時代的な手投げ爆弾ぐらいだ。

 たとえば馬。馬車などの人を運搬する概念はあるが、それを物資運搬に使う、という考え。いわゆる兵站の概念はない。

 それに馬車を改造。ならびに大砲の製作が可能になれば簡易的な自走砲ができる。それが発明されれば軍事イデオロギーの刷新となりえる。


 それは商売、という意味でもそうだが。なにより、国防という意味で重要となる。

 都市の防衛機構。軍隊の機動力上昇。経戦能力の向上。あらゆる意味で重要なことだ。


 俺の提案にマイア夫人は悩む素振りを見せている。いや、あれは正しく素振りで少しでも良い条件を引き出そうとしている、のかもしれない。


「あなたはなにを作るつもり。いえ、創るつもりなの」

「ただ、領民たちの安全。……そして、昔馴染みが安心して暮らせる場所を、ですよ」


 その一言に、マイア夫人は驚きで目を見開く。

 あるいは、マイア夫人と俺。ふたりは同じ目的で動いていたのかもしれない。彼女の驚きに、そんなことを感じたのだった。

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