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転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件  作者: 想いの力のその先へ
第三章 17歳 辺境領、フェネクス

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四十五話

 アスガルの吉報にして凶報を持ち帰ってきてから、早くも一ヶ月が経った。あの後、基本平和だった。モンスターの襲撃が起こるわけでもなし、金鉱についても王都には情報が入ってないようで、アクション自体がなかった。どうやら、誰かしらが情報操作をしている節がある。

 ……まぁ、そういうことをしそう。できそうな人物について、心当たりは一人しかいないが。


「それでイオネ。情報操作の件だが、足取りはつかめたか?」

「あぁ、領主さま。完璧、とまではいかないけどねぇ……」


 気だるげな表情でこちらを見るイオネ。

 この一月で新たに判明したこと。それは、彼女。イオネ、そして彼女が率いる紫煙の蜻蛉団が直接戦闘だけではなく、いわゆる諜報活動も得意としていたことだ。

 はっきり言って、嬉しい誤算だ。防諜体制を敷こう、と考えた矢先のことだったのだから。

 そして人材が育った後、イオネを配置する場所が決まった、ということでもある。


 ――辺境領、情報室室長。それがイオネに与えるポストだ。つまり、彼女に情報などの裏方仕事を一任する。

 これで領地の指揮系統。最終決定と外交を俺、軍事をアスガル、内政をレグルス、諜報をイオネ。という大枠が決まったとも言える。


「少なくとも、正規の手段。というか、きれいなやり方には見えないね。間違いなく()()()側だよ」

「こちら側、ということは――」


 つまり、情報操作を行っているのは同業者。傭兵だと言いたいのだろう。そして、それを行いそうなのは一人。


「マイアさま。ディオスクロイ子爵夫人か」

「まず、間違いないだろうねぇ。特にあの領地はお抱えの傭兵団がふたつある」

「……そうなのか?」


 それは俺の知らなかった情報だ。

 イオネはにやり、と笑って続ける。


「そうさ、なんて言ってもあの人は太客。御大尽だからねぇ。アタシらも噛ませてもらったほどさ」

「ほう、それは……」


 俺は自身も目が険しくなるのを自覚した。イオネが悪びれもなく、マイア夫人と過去、取引していてその事をこちらに教えていなかったから。

 そんな俺を見て、イオネはけらけら笑っていた。


「心配しなくとも昔のことさ。それにアタシらでは食い込めなかったしねぇ」

「食い込めなかった、とは」

「領主さまはアタシらの兵力が100くらいだってのは言っただろ?」

「それは、まぁ……」


 こくり、と頷く。イオネは満足そうに笑った。そして、すぐにそれが苦笑いに変わる。


「それで、契約してる傭兵団の兵力が1500と800、と言ったら?」

「……なっ! いや、まさか。確かに――」


 苦笑混じりのイオネの話に俺は愕然とした。

 確かに、それならイオネの話は納得だ。納得なのだが、その兵力が問題だ。なにしろ、1500や800なんて数はそれこそ子爵家の貴族が抱える兵力だし、それを合計すれば、伯爵家を凌駕する兵力となる。

 さすがに貴族の正規兵より練度は低い、と思いたいが……。いや、希望的観測はやめよう。イオネ率いる紫煙の蜻蛉団も我が本家。アルデバラン伯爵家の正規兵に肉薄する練度があったんだ。

 そして、そのイオネが敵わない、と素直に評価した傭兵団。最低でも同程度、と判断するべき。


「……恐ろしいものだな」


 素直にそう思える。マイア夫人は間違いなく傑物だ。しかも、本来軍事国家に現れない、出世できない類いの。間違いなく、道半ばで果てる。暗殺されるだろう。

 彼女はそれだけの才覚がある。あるいは、俺と同じように――。


「いや、ないな」

「どうしたんだい?」

「いや、なんでもない」


 あるいは、俺と同じように転生者。かつての世界を知るものか、とも考えたがそれにしてはちぐはぐだ。

 その最たるものが火の秘薬、火薬だ。

 よく、剣と魔法のファンタジーでは銃は発展しない。なんて、話を聞くが必ずしもそうではない、と俺は思っている。


 理由はいくつかあるが、大きな理由を言うと、魔法とは天与の才能、どうしても各人で能力にムラが出る。

 もちろん、大魔導師なんて呼ばれるやつは単騎で都市ひとつ、簡単に堕とすだろう。かといって、それが万人に出来るか?


 不可能だ。

 才あるものならそれこそ重戦車のように障壁で攻撃を防ぎ、魔法という名の砲撃であらゆるものを吹き飛ばすだろう。

 だが、再三言うように万人にそれは出来ない。むしろ、出来たら簡単に国が、大陸が滅ぶから出来ない方が良いというのはあるが。


 ……脱線したが、ともかく。魔法、というのは画一的ではなく、才覚によるところが大きい。

 それに比べ、銃は整備、製造、物資などに金がかかるが、画一的だ。ある程度訓練した農民でも騎士を殺せるようになるだろう。……一部の規格外を除いて、だが。アスガルとか、姫騎士たるエレインとか。


 だが、それもいつの日か濁流に飲み込まれるだろう。平民の軍人化(職業軍人)圧倒的物量(大量生産)。すなわち、産業革命という濁流に。

 騎士が陳腐化し、大量の兵士、物資による総力戦。かつての世界で、二つの世界大戦を知る身として、この国も、この世界もいずれ同じ道を辿るだろう。

 ……あるいは、この世界に俺という異物(転生者)がいなければ――。


 そんな、たら、ればなど考えても意味はないが。

 ともかく、その選択をしなかったマイア夫人は良くも悪くも俺の同類(転生者)ではないようだ。

 それが素晴らしいことなのか、そうでないのか。それは分からないが……。

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