⑨
ピンポーン
インターホンの音で、目が覚めた海斗
「寝てたか」
泣き疲れて、寝てたらしい
ピッ…「はい」
「関口と言います。市川海斗さん、いますか?」
「あっ、はい。ちょっと待って下さい。5分ぐらい」
「はい」
海斗は、そう言って風呂場に行く。
パジャマを脱ぎ捨てた。
シャワーを捻って、お湯が出た瞬間に下半身だけをサッと洗った。
服を着替えた。
寝癖を直すスプレーで髪の毛を整えて、シュッと天井にスプレーした香水をくぐり抜けた。
五分以上経ったかもしれない。
海斗は、玄関の扉を開けた。
「お待たせしました」
「滋の息子だよね?」
「父を、ご存じなんですか?」
「ああ」
関口さんは、海斗の腕の湿疹を見つめていた。
「副作用出てるね」
「えっ?」
長袖を着ればよかったと海斗は後悔した。
「少しついてきてくれるかな?」
「あっ、はい」
そう言われて、海斗は家から出て鍵を閉める。
「あの?」
「Sウイルスの検査に行こうか?」
関口は、そう言ってエレベーターを押した。
「何ですか?それ」
「滋が、海斗君に打ったウイルスだよ。」
「それって、セックスしたら死ぬってやつですか?」
「そうだよ」
関口は、一階のボタンを押す。
「俺、死ぬんですか?」
「死ぬよ!セックスしたら確実に…。」
「何で、そんなウイルス作ったんだよ」
海斗の言葉に、関口は答えられなかった。
「何でだよ」
「はあー。これはね、国をあげたプロジェクトなんだよ。ほら、同性感のセックスとかね。認めるのも、もうね」
「はあ?」
「だから、最近の若い人は同性を好きになる率が高いし、結婚はしないし、出生率が下がってるし」
「だから、なんだよ。」
「だから、解毒剤以外とセックス出来なくされてるんだよ。」
「解毒剤………?!」
「そう、それは女の人だ!必ず妊娠出来るか調べられてる人か、出産経験がある人に限られている。」
「それって………。」
「海斗君の父親は、そのウイルスを海斗君に飲ませたんだ。」
関口は、近くのコインパーキングに海斗を連れていき。
乗用車の助手席を開いた。
「俺は、凛音と…」
「いたら、死ぬよ。」
関口は、そう言って助手席を閉めた。
お金を払っている関口を見つめながら、涙が流れてくる。
初めては、凛音じゃなきゃ嫌だった。
女という生き物は、嫌いだった。
苦手とかじゃない、嫌いなんだ。
友達を蹴落としていた、佐上さん。影で憧れの先輩の文句を言っていた藤井さん、SNSで晒し続けている駒井さん…。
女は、怖くて大嫌いなんだ。
「行こうか」
関口は、運転席に乗り込んで扉を
閉める。
エンジンをかけて、発進する。
「あれから、研究してわかったんだけど…。一度も解毒剤を使用しなければ、15年目に死ぬみたいなんだ。」
「えっ?」
「仲間が実験台で、12年前にSウイルスを飲んだんだ。その湿疹みたいな症状が現れてね。検査すると、ウイルスが増殖していた。マウス実験で、ウイルスが5万を越えたら死ぬってわかっていてね。検査したら、2万を越えていた。計算した結果、3年かなって結論になったんだ。で、仲間は解毒剤とした。いっきに数値が下がり、今はまた最初の頃と同じになった。ただ、どういうわけか45歳を越えた肉体に打っても繁殖しない。だから、45歳までの我慢だよ!海斗君」
その笑顔に、海斗は血の気がひいていく。
「俺は、凛音以外としません」
「じゃあ、死ぬだけだ」
「解毒剤を凛音に…」
「それは、無理だ。」
「えっ?」
「調べてるよ!そっちも。だけど、繁殖しなかった。解毒剤が、解毒剤としての効果を生み出すのは2万を越えてからだ。男性に解毒剤を打っても繁殖しなかった。同性愛の女性に打っても繁殖しなかった。あのウイルスは、きちんと脳内を理解しているようなんだよ。だから、無理だ。ウイルスを飲まされたせいで、同性愛をやめたゲイカップルを知ってる。」
そう言うと関口は、真っ白な建物に車を停める。
「タダより怖いものはないよね。」
新しい飲料の試飲だと言う旗が立っている。
「試飲会にランダムで混ぜるように、最近決まったんだよ。」
その目が、怖い。
海斗は、関口に黙ってついていく。




