⑤
身体がダルくてたまらない中、目が覚めた海斗
最近、暑さのせいか身体が重くてダルい。
立ち上がって、ペタペタと歩きながらトイレに行く。
少しだけ、焦げたカレーの匂いがする。
グゥーー
お腹すいたのか
トイレに行って、リビングの扉を開けた。
「起きちゃったのか?」
凛音は、海斗を見て、そう言った。
「凛音、身体がダルいんだ。でも、腹減った」
凛音は、海斗に近づいた。
「これ、何?」
半袖から伸びる白い腕に、プツプツと赤い斑点が出来ている。
「湿疹かな?」
「かぶれたのか?」
「わかんないよ」
「どっか、おかしくないか?痛いとかないか?」
「何だよ!凛音。必死すぎな」
凛音の涙を海斗が拭った瞬間
「っつ」
「どうした?」
指を見ると真っ赤に腫れていた。
「何だろ?かぶれたのかな?」
海斗は、気にせずに凛音に触れようとするけれど…。
凛音は、どうしてそうなってるかわかっていた。
「凛音、泣かないで」
「待て、待て」
「どうしたの?」
「やめろ」
「何で?」
「いいから、触るな」
あの日の海斗のように言う凛音。
「嫌いなの?」
「違う」
「じゃあ、何で?」
「だから、駄目なんだよ」
「歯磨きしてないから?してくるよ」
「そうじゃない」
「じゃあ、何?」
「説明できない」
「はあ?何だよ」
「とにかく、カレーいれるよ。座りなよ」
凛音は、海斗を避けるようにカレーを注ぎに行く。
俺は、歯磨きをしにいってから戻った。
確かに、こんなブツブツはさっきまでなかった。
凛音の涙を拭って、火傷したみたいな痛みが走った手を見つめていた。
何か起きてるのか?
俺の身体に、何か起きてるのか?
うがいをして、Tシャツを捲る。
お腹にも、出来てる。
これって………。
もしかして、凛音が、触れた所なのか?
それって、唾液も汗も涙さえも…
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
バンっ
バリン…………。
ポタっ、ポタっ、ポタっ
「海斗」
凛音が、洗面所の扉を開けた。
「ガラス割った?大丈夫?」
「近づくな」
俺は、凛音を睨み付ける。
「海斗、気づいた?」
「凛音に、二度と触れられないみたいだ」
「海斗、手当てするのもってくるよ」
もう、添い寝は?
キスは?
ハグは?
お風呂にはいるのは?
ひび割れた洗面所の鏡に映る自分を見つめていた。
「海斗、ここに置いとく」
「凛音」
「どうした?」
「俺、死にたい」
「海斗、何でそんな事言うの?」
「凛音に二度と触れられないなら、生きてる意味ない。俺は、死んだ方がマシだ。凛音だけじゃない。例えば、近くの人の汗が飛んだら死ぬのか?」
「海斗、何言ってるの?」
「父親が、15歳の俺に、セックスしたら死ぬウイルスを飲ませた。だから、俺、凛音の告白断ってたんだよ。でも、キスは出来たろ?風呂だって、添い寝だって、ハグだって…。だけど、だけど、だけど…。今度は、今度は、それすら出来ないんだよ。」
洗面所の床を叩く。
「海斗」
凛音が、やってきた。
「凛音?」
凛音は、洗面所の鏡を殴った。
バリン………。
「凛音、何してるの?」
ポタっ、ポタっ、ポタっ
「海斗」
「凛音?」
海斗は、凛音の血があたらないようにのいた。
「海斗、一緒に死のう」
「凛音?」
「セックスしたら、死ぬんだろ?だったら、しよう」
「凛音」
凛音は、海斗にジリジリ歩み寄る。
「凛音、いいよ。しよう。俺を殺してくれ」
「海斗」
「凛音に触れられない俺は、もういらないんだ。」
凛音は、フェイスタオルを手に巻いた。
「死にたいなら、一人で死ねよ。気持ち悪いんだよ。何が、凛音がいなきゃだよ。海斗は、いつだって僕を拒否したじゃないか!今さら、何だよ。」
「今するって」
「するわけないだろ…。したいなら、知らない奴とすれば」
凛音は、洗面所を出て行った。
「凛音、凛音」
呼び掛けても聞こえなかった。
ポタポタ落ちた凛音の血に触れた海斗
「イッ」
火傷をしたような痛みが走った。
涙が流れて、止まらなかった。




