③
「もっと、もっと、凄い」
海斗は、母親が知らない男と寝室で、何かをしているのを目撃していた。
その何かをきちんと理解していたし、全く興奮しなかった。
母親は、モデルと間違われる程美しく綺麗な人だった。
海斗にとって、母親は幼い頃からの自慢の対象だった。
しかし、そんな母親は今、二人の男とベッドで交わっている。
「もっと、もっと」
「有希子さん、気持ちいいよ」
獣みたいな声をあげたり、息づかいが聞こえる。
母親は、一人の男の上に乗って狂ったように腰を振っている。
そして、もう一人の男のものを口に咥えている。
母親のスラリとした足に、キラキラと汗が光る。
「もっと、もっと」
目が合った。
ニコッと微笑まれた。
「したい?」
真っ赤な唇は、俺にそう言った。
ブンブンと首を横に振った。
「じゃあ、見てて」
そう言って、また腰を振り出した。
「こっちもして」
そう言われて、もう一人の男は背後から母に…。
「凄い」
母親は、よがり狂いながら俺をただジッと見ていた。
それは、父親が帰宅する二時間前まで続いた。
俺は、部屋に隠れた。
男達が、帰ったのを見届けて俺は寝室に行った。
「何してるの?」
「何って?」
母親のスラリと伸びた太ももの間から、白い液体がポタポタと垂れていくのが見える。
「それだよ」
「しっーだよ。かいちゃん」
「父さんは、知ってるのか?」
「知るわけないじゃん」
「何で、こんな事してるんだよ」
「だってね、つまんないから。父さんのセックスつまんないのよ。母さんはね、いじめられるのが好きなの。複数人に…。わかる?」
「触るな!」
母親が、髪を撫でようとしてきてそう言った。
「かいちゃんも、母さんの子よ。きっと、大好きよ。セックス」
「ふざけるな」
「混ざりたいなら、してあげてもいいわよ」
「ふざけるな」
「かいちゃん、これは気持ち悪くないのよ。気持ちいいの。わかる?」
「わかるか」
「いつか、わかるわよ!海斗」
そう言って、母親はニコッと微笑んだ。
父親が、どのタイミングであれをしったかは知らなかった。
気づけば、二人は毎晩、毎晩、喧嘩をして、母親は出て行ってしまった。
俺は、長期の休みになるとあれを覗いた。
嫌悪感が積もっていきながらも、母親の気持ちいい気持ちを解りたくもあった…。
心と心が、複雑で…。
切り離す事が出来なかった。
別に、下半身に熱をもつ事もなかった。
ただ、人形のように思えていた。
もう、最後は下らなくて笑えていた。
頭の中に、母親の映像が流れては消えた。
俺の恋愛対象者は、男になった。
母親が、気持ち悪かったからか、男にされてる母親の気持ちよさを知りたかったからなのか…
神様、どちらでしょうか?
俺は、汚く、醜い、存在でしょうか?
だから、罰があたったんでしょうか?
セックスは、汚い行為なのでしょうか?
神聖な行為なのでしょうか?
誰か、教えてくれませんか?
.
.
.
.
.
.
「大丈夫?海斗」
「うー。寝てたか」
「疲れてるんだよ。お風呂はいって寝たら?」
「そうだね。最近、忙しくて。でも、まだ七時半だし」
「早くても、疲れてる時は寝る方がいいよ。晩御飯食べて寝たら?温めようか?昨日のカレーだけど」
「うん、やめとくわ。お腹すいてない」
「熱ある?」
「ないよ」
凛音は、海斗のおでこに手を当てる。
「大丈夫みたいだね」
「大丈夫。夏バテかも?」
「まだ、夏には早いよ。5月の終わりだし。」
「最近は、暑いよ」
「そうだけどね」
「ごめん。歯を磨いて休むよ」
「海斗」
「何?」
「悩みがあるなら、聞くからね」
「うん、じゃあ、おやすみ」
チュッ
俺は、凛音のおでこにキスをして歯を磨きに行った。
父親が、マンションを残してくれたお陰で、俺は凛音と高校を卒業してからずっと一緒にここに住んでいる。
俺への贖罪なのか、何故か家賃だけは払ってくれていた。
俺は、歯磨きを終えて寝室にやってきた。
ベッドに横になった瞬間、吸い込まれるように眠ってしまった。




