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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
待てを言われた僕達は…。
75/135

②

ポタポタと顔にかかる雫で目を開ける。


「悪い!アイス垂れた」


「ふざけんなよ、凛音」


俺は、起き上がってティシュで顔を拭いた。


「気持ち良さそうに寝てるからさ!はい」


「寝起きに、こんなん食わねーだろ?」


「食べるよ!海斗」


二つに割ったアイスの片割れを口に入れられた。


「あー、もう夢見てたのに」


「いい夢?」


「嫌、そんな事ないわ」


あれから、父親は一度も帰宅して来なかった。


20歳の夏、【弟が出来ました。】と言う謎の写真入りの葉書が届いたのだ。


あんなにも、セックスに嫌悪感を示していた父親は、息子には『待て』を言い続けているのだ。


「意外に上手いわ。寝起きだけど」


「よかったな」


「なぁ、凛音。別れていいんだよ」


「何で?」


「セックスしたいだろ?」


「僕を野獣だと思ってる?」


「そうじゃなくて、凛音まで童貞じゃなくてもいいだろ?」


「初めては……海斗がいいに決まってるだろ!言わせんなよ」


「凛音…でも、俺」


「わかってるよ。母親のセックス見てから無理なんだろ?そりゃあ、僕だってしたいけどさ。無理にとは言わないよ。だから、いつかそうなろうね」


「うん」


10年も一緒にいるのに、あの話を出来ていなかった。


凛音と付き合って、すぐに父親から電話が掛かってきて、風呂は、はいれるのか?添い寝は、出きるのか?深いキスはいけるのか?ハグは出きるのか?腕は、組めるのか?

父親に、たくさん質問した。


とにかく、セックスさえしなければ大丈夫だとしか言われなかった。


一年付き合った頃に、凛音が俺のそこを手でしてくれたけれど、何も起きなかった。


だから、俺は凛音の事もしてあげたのだ。


きっと、この10年。


凛音は、苦しんでるはずなんだ。


何にもないよ、平気だよって顔してるけど…。


本当は、辛いんだ。


「海斗、ボッーとしてどうした?」


凛音は、アイスクリームで汚れた手を洗うために立ち上がって俺に言った。


「嫌、何でもない」


「そう」


凛音は、手を洗いに行った。


暫くして、戻ってくると俺の隣にピッタリ張り付いて、スマホのゲームをしている。


クルクルと円を描(か)くように動かしながら、輪っかを繋げていくというゲームにはまっている。


「それ、楽しい?」


「うん、楽しい」


「本気で言ってる?」


「本気で言ってるよ」


「ここ、半年。ずっとそれだね」


「うん」


「何で?」


「話ながらでも、出来るから」


「凛音、あのさ…」


「別れないから…。」


「えっ?」


「会社の先輩の奥さんみたいな事、言わないでよ」


「どういう意味?」


「子供が出来ないから別れようって言われてるって!先輩は、別れないからって言ったって。僕も海斗と別れないから…。セックスだけが全てみたいな関係に思われてるなら、違うから。確かに、10代の時は海斗にそれを求めたと思う。だけど、あれから10年だよ!もう、そんなのどうでもよくなるぐらい一緒にいるだろ?海斗は、セックスしなきゃ、僕といたくないのか?」


「ごめん。俺、間違ってた。俺は、凛音とセックスしなくても一緒にいたいよ。ごめん。」


「いいんだよ。」


凛音は、俺の手を握りしめてくれる。


「これだけでも、充分だから」


そう言って、笑ってくれる。


凛音に嫌な言葉ばかりを話させてる。


セックス、セックス、って俺の頭がおかしいだろ。


あの日、父親に言われてから一歩も動けてないのは俺なんだよ。


凛音じゃない。


海斗は、凛音の肩に頭を置いて、涙を流す。


今すぐにでも、打ち明けてしまいたい。


そして、楽になりたい。


でも、ウイルスがいます。何て、言ったら、凛音は俺から離れるんじゃないのか?


こうするのも、キスするのも、お風呂に入るのも、添い寝するのも、抱き締め合うのも、やめるんじゃないだろうか…。


それだけじゃなくて、別れようって言われるんじゃないのか…。



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