①
「付き合って下さい」
「ごめんなさい」
高校一年生、俺は同じクラスの的場凛音に告白されていた。
「どうして、男だから?」
男子校で、周りも結構付き合っていたし、俺は母親の浮気現場を目撃してから女は駄目だった。
だから、別に男とか関係なかった。
「嫌、そうじゃないんだ。」
「僕、上手いと思うんだよ。何なら、やってあげようか」
ズボンに手をかけられる。
「待て、待て、そうじゃない」
「何で?そっから、始めてるやつもいるから、やってみてから」
「やめろ!!!」
「そんな怒んなよ」
とんでもない程、大きな声が出せた。
的場は、俺から離れてくれた。
「ごめん。とにかく、無理なんだ」
俺は、そう言ってズボンを整えてスタスタと歩いて行く。
俺の名前は、市川海斗。
俺には、とんでもない秘密がある。
あれは、そう、高校入学の二日前だったー
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「父さん、暫く放浪しようと思ってる」
「はあ?」
「心配するな!貯金で、何とか賄えるだけあるから」
「いやいや、そうじゃなくてさ」
「いつか、海斗が死ぬと思ったら涙が出るんだ。」
滋は、海斗を見つめながら涙を拭っていた。
「どういう意味だよ」
「海斗、すまない」
滋は、海斗に土下座する。
「何の真似だよ」
「実はな、母さんが不倫してたのは知ってるよな?」
「ああ」
「父さんも、目撃したんだよ」
「そうなんだな!」
「母さんが、3人としてただろ?」
「あ、ああ。見た」
「だろ、だろ。そんな癖だと知らなかった。」
「だから、何だよ」
「あれがね、許せなかったんだ。気持ち悪くて、堪らなくてね。だからね…」
海斗は、父親が何を言いたいのか全く理解できなかった。
「だから?」
「だからね、海斗。セックスしたら死ぬウイルスをお前に飲ませたんだ。」
「ブハッ……ゲホッ、ゴホッ」
麦茶を吹き出してしまった。
これから、待ち受けているキラキラした青春が消えて行ったのが見えた。
「で、解毒剤とかは?」
「ない」
「はあ?ふざけんなよ。」
「それと、海斗とセックスした奴も死ぬ」
「いや、いやいや、いやいや」
あまりにも軽々しく言う父親の姿に、海斗は固まってしまった。
「どういう事だよ。俺、今まで一人ではしてたぞ!」
「それは、問題ない」
「じゃあ、何で死ぬんだよ」
「相手の体液と混ざり合ったらそうなるみたいだ。」
「キスは、出来んのか?」
「キスは、問題ない」
「じゃあ、口とか…」
「そのだな!言いにくいけれど、下半身がよくないんだ。だからだな。口も駄目だ。手ぐらいなら大丈夫だぞ!汗と唾液はオッケイだ。ただ、そのモノは駄目だな」
「嫌、父さん」
「何だ?」
「俺は、どうなるんだよ」
「さあな!わからない」
「嫌、わからないじゃ困るんだよ。一生、童貞かよ」
「そうかも、知れないな」
「そうかもじゃないんだよ。どうするんだよ!じゃあ、待てよ。俺が、やられる方なら大丈夫か?」
「なわけないだろうが!体液が駄目だって言ってるだろ?ちょっとは、頭を使えよ」
「いやいや、お前のせいだろうがよ」
「父親をお前って言うな」
「まじで、どうにかしてくれよ」
「無理だ」
「無理じゃ、困るんだよ」
「気をつけて、高校生活を楽しむんだ。」
「父さん」
「おやすみ」
俺の話を全く聞かずに、父さんは眠りに行った。
それから、高校の入学式の日に父さんはいなくなった。
そして、今、俺は毎日、毎日、的場に告白をされている。
本当に、死ぬのだけは嫌だ。
だから、関わらないでいい方法を考えよう。
さっきも、不意打ちであいつは俺のを…。
ヤバイ奴だ。
授業が終わると、俺はすぐに立ち上がった。
「海斗くん」
「お疲れ」
必死で、階段を降りた。
「海斗、待ってよ」
必死で、走った。
走って、走って、走って…。
家に帰ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
まじで、嫌だ。
まじで、辛い。
糞だ。
こんな青春は、糞だ。
家の鍵を開けて、家に入る。
冷蔵庫を開けて、ゴクッゴクッと麦茶を飲み干した。
「ぷはー。生き返った」
父親が、リュックサック一つで旅に出て、1ヶ月。
もっと、寂しいかと思っていた。




