⑤
あれから、二年が経った。
私達は、結婚15年目を迎えていた。
ピピ…ピピ…ピピ…
「目覚ましとめてー」
「ああ」
私達は、同じベッドに眠るのをやめた。
「婦人科行くの?」
「うん。体調悪いからバスにする」
「そっか!わかった」
妊娠、子供、そんなキーワードは言わなくなった。
起きて、朝御飯をしてお弁当を作る。
シャワーから、あがってきた慎太郎と朝御飯を食べる。
週二回のパートは、相変わらず続けてる。
ポムは、もう9歳になった。
何も変わらない日々の中を過ごしてる。
私は、バスで朝一番に、産婦人科に向かった。
診察内容を聞いて、すれ違う妊婦さんを見て絶望した。
バスに乗って、家の近くより手前で降りて歩く。
誰もいない公園を見つけた。
ベンチに腰かけて、子供のように泣いた。
「あぁー、ああ」
「大丈夫ですか?」
女の人が、ハンカチを差し出してくれた。
「すみません、大丈夫です」
「体調悪いんじゃないですか?大丈夫ですか?」
「大丈夫です。」
涙が、全然止まらなかった。
「何かありました?」
「主人と別れなきゃいけないって」
「どうして?」
「今日、産婦人科に行ったら閉経したって言われたんです。子供をもう産んであげる事は出来ないから、だから別れようって。でも、そしたらどうしようもなく悲しくなって…。どうしたらいいかわからなくなって…。ごめんなさい。初めて会った人にこんな話」
「いいんですよ。気になさらないで。私で、よかったらいつでも話を聞きますよ。」
彼女は、スマホを取り出した。
「浜田友里亜です。よろしく」
「三上恵美子です。よろしくお願いします。」
私は、連絡先を交換した。
「車なんで、送りますよ」
「すみません」
浜田さんに、お家まで送ってもらった。
「ありがとうございます」
「いいえ」
お辞儀して、帰宅した。
「ポム、ただいま」
ポムに声をかけてから、寝室のベッドで横になって泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて、気づいたら寝ていた。
「ただいまー」
慎太郎の声がした。
寝室にやってきた。
「ただいま」
「おかえり」
「体調どう?」
「うん、まだ調子悪い」
「熱あるか?」
慎太郎が、触れようとした手をかわした。
「大丈夫?」
「もう、慎太郎とエッチ出来ない」
「どういう意味?」
「もう、妊娠しないから」
「恵美子?」
「しないのわかってるのに、するの空しかった。慎太郎も同じでしょ?だから、もう出来ないんだって!もう、生理終わったの。もう、排卵なんか二度としないの」
私は、ボロボロ泣いていた。
「そっか、わかった。」
「あのね、離婚。考えようよ」
「俺、外で飯食ってくるわ」
パタン…。
喧嘩する度、離婚するーって、よく口にだしていた。
ここ、5年は言わなかった。
言えば冗談ですまなくなるのを知っていたからだと思う。
今みたいに、本気の言葉に変わるからだと思う。
今日は、せっかくの金曜日で!
明日は、慎太郎も休みで!
いつも通りの、朝がやってきて。
いつも通りの、夜が終わると思っていた。
なのに…。
私は、今、どの選択をしても、BATENDにしか辿り着けないゲームの主人公だ。
結婚なんかしなければ、よかった?
【今日は、ありがとうございました。】
浜田さんに、連絡した。
私は、彼女しか友達がいなかった。
スタスタを開いた。
優樹菜は二人のママに、絵里香は三人のママに、楽しそうな日常が散りばめられてる。
鴨池はやての映画みたいな。
BLもの慎太郎苦手だから、一人で行くしかないかな…。
【心だけが繋がらない】か…。
私と慎太郎と逆かな。
【旦那さんと、大丈夫でしたか?】
【駄目でした。怒らせたみたいです。離婚を口に出してしまって…。】
【明日、休みだからお茶しませんか?】
【大丈夫ですよ。】
【明日、迎えに行きますね。13時頃に】
【はい】
私は、もう一度目を閉じた。




