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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
それが、運命(さだめ)ならば…。
53/135

⑧

やってしまった。


僕は、ミスをした。


口にだしては、いけなかったんだ。


殺されるんだ。


僕は、殺されるんだ。


「離しなさい」


ドサッ………。


「ゴホッ、ゲホッ、ゲホッ」


「僕の弟を殺すつもりですか?」


「ゲホッ、ゲホッ」


「十季、大丈夫か…」


現れたのは、正美だった。


「何を言ってるのですか、そんな事しませんよ。」


椎名先生は、僕を睨み付けた。


「もし、またこのような事をされるのでしたら警察に言いますよ。」


「遠藤君が、遅刻しそうだから声をかけただけですよ」


「二度と、近づかないでいただきたい」


「わかってますよ。」


椎名先生は、フラフラといなくなってしまった。


『十季、大丈夫?』


「君が、愛斗さんですか?」


『見えるの?』


「はい、見えますよ」


『しーちゃんは、なぜ十季を?』


正美は、僕のビジョンを読み取った。


「えっと」


僕は、正美の腕を掴んだ。


「十季」


ブンブンと首を横に振った。


「言っては、駄目なの」


十季は、首を縦にふる。


「わかった。これ、忘れていた。けど、今日はもう帰ろうか、十季。心配だから」


正美は、体操服を持ってきてくれたようだった。


「わかった」


僕は、やっと話せて立ち上がった。


『十季』


「さよなら、愛斗」


『待って』


十季の手を愛斗は、握りしめた。


ドクン………。


『そんな……。』


愛斗は、その場に崩れ落ちる。


「十季、offにしなかったのか?」


「あっ!」


正美に言われて、十季は能力をoffにしていない事に気づいてしまった。


『十季、今のは本当なの?』


「ごめんね」


『そんな、しーちゃんが…。』


「ごめんね」


『だから、さっき十季まで』


僕は、何も言えなかった。


「十季、外にいるよ」


「わかった、正美」


正美は、そう言って行ってしまった。


『十季、僕を愛してくれる?』


「もう、愛してるよ」


『十季、僕をここから解放してくれる?』


「わかった。やるよ!」


『十季』


愛斗は、僕を抱き締めた。


「今日の夜。会いに来るよ」


『わかった』


僕は、愛斗の涙を拭った。


十季は、愛斗に手を振って走り出した。


「正美、お待たせ」


「帰ろうか?」


「うん」


正美と並んで歩く。


「正美、ありがとう。正美がいなかったら、死んでた。」


「体操服を忘れていたのに、気づいたから持ってきただけですよ。忘れ物をすると、十季は、よけいに皆に嫌われてしまうから…」


「正美、知ってたの?」


「十季の能力は、今不安定です。だから、読めてしまう。でも、ちゃんと鍵をかけないと師匠にも読まれますよ。」


「どうやって、かけるの?」


「こうするんですよ」


正美は、そう言って十季の手を握りしめる。


ドクンと音がした瞬間、頭の中の引き出しに記憶が収納されていく。


愛斗の事が、集められた引き出しに金色の鍵がカチャリとかかったのが見えた。


「正美」


「これで、師匠には見られないからね」


正美は、僕の頭をポンポンと叩く。


「取り出したい時は、同じように引き出しの鍵をあけるんだよ!わかった?」


「わかった」


正美は、その言葉にニッコリ微笑んでくれた。


「正美、僕は、もう少し修行をつむべきだね。」


「そうかもしれないね。でも、今は子供らしくいるべきだよ」


正美の言葉に、僕は首を横に振った。


「正美、僕は愛する人を守れるような人間になりたいんだ。愛斗を守るより、傷つけてしまった。それは、駄目なんだよ。さっき、椎名先生に首を絞められて思ったんだ。身体も心も強くならなくちゃいけないって!今みたいなひ弱な僕じゃ誰も守れやしない」


「十季……。子供をやめるのですか?」


「やめるよ、正美。師匠を越える程、強い能力者になるつもりだよ!僕は、愛する幽霊達を守る人間になる。」


「わかりました。僕も僕に出来る事をして、十季を支えていきます。」


「正美、ありがとう」


「はい」


十季と正美は、強く互いの手を握りしめた。


何故、こんな能力をそう思っていた十季の迷いは、さっきの出来事で消えていた。

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