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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
それが、運命(さだめ)ならば…。
47/135

②

帰り道だった。


明らかに、幽体が近づいてきた。


『ねぇ』


「何?」


『成仏って簡単かな?』


「さあな」


『恋したかった』


その言葉に振り返った。


「した事なかったの?」


『ないよ』


小さな女の子だった。


「何歳?」


『7歳』


「何で死んだの?」


『事故』


「そうなんだね」


初めて、自分の能力を褒めてあげる事が出来た。


『お兄ちゃん、恋ってどんな感じ?』


「ここがね。ギュッーってなる感じなのかな?」


『お兄ちゃんもわかんないの?』


「うん」


『じゃあ、教えて!』


「教えたら、向こうにいける?」


『うん』


満面の笑みを向けられて、頷くしか出来なかった。


『約束』


「約束」


『私ね、武田実奈宜しくね。』


「僕は、遠藤十季。宜しくね。実奈ちゃん」


『うん』


「また、明日も話そうね」


『うん』


「じゃあね」


『バイバイ』


僕は、実奈ちゃんと別れた。


僕が、家に帰ると師匠が話しかけてきた。


「そろそろ、恋の一つでもしてきたのか?」


「えっ?」


「幽体ではない、人に恋をしてきたのかと聞いているのだ」


「は、はい。」


僕は、嘘をついた。


「遠藤のものとして、きちんと幽体を成仏させるのだよ。」


「はい」


師匠に、肩を叩かれた。


何故、僕は人を好きになれないのだろうか…。


僕は、何故こんな風にしか生きれないのだろうか…。


部屋に入って、扉を閉める。


普通の人とは、違う。


師匠がいて、父や母もいて、他家族がたくさんいる。


寝不足になってしまう僕は、一人部屋をもらえた。


どうして、普通になれないのだろうか?


気づくと眠っていた。


コンコン


「うーん。はい」


「寝てた?十季。ご飯だよ」


彼の名前は、遠藤正美。正美は、僕を子供でいさせてくれる。


「正美」


「なに?」


「恋って、どんなの?」


「うーん。ここが、ギュッーってするんだよ。苦しくなるの。ドキドキしてね」


「恋愛の話しか?」


「ノックしてよ」


彼は、川村志吹。皆、同じ能力をもっている。


「今ね、恋ってどんな感じか聞いてたんだよ」


「ドキドキするんだよ」


「ドキドキ?」


「ほら、貸してみ」


志吹さんは、僕の手を胸に当てる。


「ここが、ドキドキするんだよ。こんな、鼓動じゃないぐらいするんだよ」


「人間にしかしちゃダメなの?」


「そんな事あるわけないだろ?誰にだって、していいんだよ。」


志吹さんは、そう言って僕の頭を撫でてくれる。


「師匠がダメだと言っても、幽体でも人間でも、胸が苦しくなったなら迷わず進みなよ。」


そう言って、正美は僕の頭をポンポンと叩いた。


「二人のお陰で、僕は僕らしくいれるよ」


「よかったね、十季」


「十季、恋したら教えるんだぞ」


「胸が、ギュッーだよね」


「後、ドキドキだな」


「わかった!教えるから」


正美と志吹さんに、ギュッーっとされる。


「やめろよ」


「十季、大好きだよ」


「私も、十季が大好きだよ」


二人に、抱き締められると安心する。


幸せを感じる。


これより、もっと幸せなのが恋なのかな?


「十季、ご飯食べようか」


「うん、食べる」


ご飯を食べに行って、お風呂に入って、歯磨きをして、部屋に戻ってきた。


僕は、いつか恋をするのだろうか?


それは、どんな瞬間にやってくるのだろうか?


恋とは、どんな感じなのだろうか?


ギューってして、ドキドキする。


怖いけれど、恋をしてみたい。


僕は、恋をしてみたい。


それを味わってみたい。


僕は、そう思いながら眠った。


実奈ちゃんに、ちゃんと教えてあげよう。


僕の恋を…。


チュンチュンと鳥の鳴き声で、目が覚めた。


「おはよう、十季」


「おはよう」


顔を洗って、歯磨きをして、朝御飯を食べる。


「早く卒業して、手伝うのだぞ!十季」


「はい、師匠。行ってきます」


中学を卒業すると師匠と共に、この仕事を継がないといけない事を僕は忘れていた。


どこにも、自由なんてないのだ。


僕には、どこにも自由なんてないんだ。



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