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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
それが、運命(さだめ)ならば…。
46/135

①

僕は、学校の噂の木を見つめていた。


『興味あるの?僕に…』


生気のない目が、僕を見つめる。


「綺麗だね」


ニコッと微笑んで見せた。


『何をもって、綺麗だと言うのだ!』


怒り狂った顔をしていた。


「凄く綺麗だよ」


僕は、もう一度笑って見せた。


『ならば、僕を愛せるのか?』


「うん。愛せるよ」


『軽々しく、言うな』


「そうだろうか?僕は、愛せるよ。きちんと、君を愛せる」


そう言うと、彼は僕を引き寄せて抱き締めた。


『ならば、愛して』


「うん」


僕は、彼の唇にキスをしようとした。


「きっしょ!遠藤」


「イタッ」


石を投げつけられた。


「一人言、喋ってんなよ!」


「本当、気持ち悪い」


『僕が…』


「やめろ!せんでいい」


「何がじゃ、遠藤」


「きしょいねん。マジで死ねよ」


「ほっといてくれたらいいだろ」


「ほっとけるか、気持ち悪い」


胸ぐらを掴まれて、殴られた。


ドサッ…。


「きしょいねん。帰れー」


「帰れ、帰れ」


「帰れ、帰れ」


「何してるん!そんなんやったら、ダメだろ!」


南方(みなかた)君だけが、唯一の味方だった。


「大丈夫?遠藤」


ドクン…。


差し伸べられた手を掴んでしまった。


【遠藤って、マジで気持ち悪いわ!先生に褒められなかったら、こんな事してないわ!小指の爪が黒くてキモいし】


はっ!!!


「ありがとう」


「教室、行く?」


「お腹痛いから、帰るわ」


「そっか。先生に言っとくよ」


「ありがとう、南方君」


「うん、気をつけてね」


誰も去ったのを見届けて、さっきの人に近づいた。


「君と僕は、同じやね」


『十季(じゅうき)、大丈夫?』


「うん、大丈夫」


『僕は、ここから…』


「動けないんだろ?いつか、動けたらいいね」


『そうだね。ごめんね』


血の通わない冷たい手が、僕の涙を拭ってくれる。


南方君の手よりも、暖かく感じた。


『十季、大丈夫だから…。』


「うん、ありがとう」


『今は、辛くてもいつか幸せになるから』


「うん、ありがとう」


涙を拭ってくれる。


十季は、生まれつきのこの能力が大嫌いだった。


人ならざる者と話せる自分、誰かの言葉を聞ける自分。


だから、教室は大嫌いな空間だった。


先生は、可哀想だから話してあげないといけないと言っていたし、クラスの子達は、気持ち悪いと言っていた。


それは、自分にだけ聞ける言葉で…。


毎日、毎日、胸が押し潰されそうになった。


そんなある日、彼を見つけた。


美しいと思った、引き寄せられるように話しかけた。


彼の怒りや悲しみや苦しみが、自分に流れてきた。


似ている気がした。


これが、恋なのかどうかはわからなかった。


『十季、明日もおいで。話し相手になってあげるから』


「うん、わかった」


愛斗と言う名だと聞いた。


彼の優しさが、嬉しかった。


この学校に、僕を好きな人間は一人もいない。


愛斗以外、一人もいない。


『十季、気をつけてね』


「うん、帰るね」


『わかった』


「また、明日」


『バイバイ』


僕は、愛斗に手を振って歩き出す。


何で、僕ばっかりこんな目に合わないけないのだろうか…。


普通になりたかった。


それやのに…。


皆にバレたのは、美術室で絵を描(か)いてる時だった。


『へー。下手くそやな』


「誰が、下手くそや!」


「何?遠藤君」


「遠藤、一人言、きもいねんけど…。」


僕は、誰かに話しかけられたんだと思った。


小学生の時と違って、少しはコントロール出来るようになっていたと思っていただけにショックだった。


「遠藤、きもいよな」


「トイレで、一人言、言うてたで」


それから、学校の幽霊達に話しかけられるようになってしまったのだ。


【成仏させるのが、遠藤の家の役目ですよ】


そう言われていたから、僕は仕方なしに話していた。


それを、よりによってさっきの奴等に見られてるとは…。


最悪だった。


さっさと中学を卒業したくて仕方なかった。


どうか、早く学校を卒業できますように…。

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