③
恋ってなんだろうか?
どんな時に、おちるのだろうか?
中学に向かいながら、考えていた。
難しいけど、頭で考える事じゃないから…。
学校についた。
いつも、馬鹿にされる木の場所に愛斗がいた、通りすぎようとした。
ドクン、ドクン、ドクン
「うっ…」
『十季、大丈夫?』
血の通っていない手が、僕に触れる。
昨日まで、何も感じなかったのに…。
どうして?
「苦しい」
『どこが?病院行かないといけない?』
「違う、違う。そうじゃない。そういうのじゃない」
『僕は、死んでるから十季を助けられないよ。病院行かないとダメじゃない?若くても、病気になるんだよ』
「だから、そうじゃないんだよ」
僕は、愛斗の腕を振り払って走り出した。
そんなんじゃない。
何だろう?この感じ
胸が苦しくなった。
聞いた事のない音を心臓が叩いていた。
ギューって、掴まれたみたいに苦しい。
昨日まで、何もなかった。
愛斗の顔が、急に見れなくなった。
僕は、淡々と授業をこなした。
「おい、遠藤」
「なに?」
「今日は、独り言いわねーのか?」
「毎日、言うわけないだろ」
「へぇー。たまには、普通の人間になりたいって思ったんだな」
「普通って何だよ」
「普通って言うのは、テメーみたいに独り言、言わない人間だよ。木に向かって独り言いうとか気持ち悪いんだよ」
ドカッ…と腹を蹴りあげられた。
気持ち悪いが、頭をこびりつく。
悪意が流れてくる。
学校が終わっても、僕は教室の椅子に座っていた。
「遠藤、気をつけて帰れよ」
「はい」
先生に、声をかけられて僕は立ち上がった。
トボトボと歩きだした。
普通じゃない。
僕は、気持ち悪い。
『十季』
手を引っ張られる。
「愛斗」
『泣いてるの?』
愛斗は、僕を引き寄せようとした。
「触らないで」
その声に、愛斗は驚いている。
胸が、壊れる程に早くて愛斗を見れない。
『ごめんね』
愛斗は、項垂れて僕から離れる。
「ごめん」
『嫌いなのに、ごめんね。僕を見つけてくれたから、つい嬉しくなっちゃったんだ。』
その顔を見た瞬間、鼓動はさらに強くなった。
ドクン、ドクン、ドクン
「何で、朝も…。泣いてたの?」
『ごめん。忘れて』
愛斗は、そう言って目を伏せる。
「何で?何で?愛斗。朝も泣いていたのか教えてよ」
『それは、言えない』
掴まえようとした愛斗は、スッーと消えた。
言えないって、何なんだよ。
ふざけるなよ。
勝手に、現れるくせに…。
僕の質問には、答えないのかよ。
僕は、家への道を歩きだす。
『お兄ちゃん、泣いてる?』
「実奈ちゃん」
『どっか、痛いの?』
「痛くないんだよ」
『じゃあ、何で?』
「僕ね、今、恋をしてるんだ。」
『恋?』
「今まで、感じた事のない。胸の痛みでね。心臓病にでもなったのかと思った。息が苦しくなってね。胸がギューって絞られるみたいでね。顔が思うように見れなくてね。思ってる事と逆の言葉を言っちゃってね」
『うん、それで』
「好きな人と喧嘩してきちゃったんだ。」
『駄目だよ。仲直りしなくちゃ』
「そうだよね」
『よしよし』
僕は、実奈ちゃんに頭を撫でられる。
「明日、ちゃんと謝るよ」
『その方が、いいよ』
「そうだよね」
『どんな所が好きなの?』
どんな所と言われて、今朝の愛斗を思い出していた。
目に一杯、涙を溜めて誰かを見ていた。
その涙が、ポトリと落ちた瞬間
僕の胸は、押し潰されるかと思う程に痛みだしたのだった。
「凄く綺麗なところかな」
『そうなんだね。綺麗なお顔なんだね』
「うん。目がね!凄く綺麗なんだよ」
『そうなんだね』
「また、明日話そうね」
『うん、話して!聞きたい』
「わかった!また、明日。この時間にね」
『うん、じゃあね』
僕は、実奈ちゃんと別れた。
昨日、正美と志吹さんが言っていた、これが恋だ。
だけど、全然。
幸せじゃない。
苦しい
苦しい
僕は、胸を押さえながら家に帰った。




