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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
【心だけが繋がらない】
40/135

⑮

夏は、服を着替えて外に出た。


「里山さん」


「春やろ?」


その笑顔に心臓が破裂しそうやった。鍵を閉めた。


「春、行こか」


「うん、何て呼ばれてた?」


「夏」


「わかった、夏。行こか」


並んで歩き出す。


「電車で、二駅先に行きたいんやけど、春。」


「うん、ええよ」


電車に乗れるか試して見たくて、わざとそうした。


「春」


「うん」


「いや、何もないよ」


そう言った僕の手を握りしめてきた。


「えっ?」


「アカンかった?」


振り払われそうになって、夏は強く握りしめた。


「アカンわけない」


「よかったわ」


その笑顔に、夏は気持ちが止められなかった。


「好き」


「うん」


「僕、めっちゃ好き」


「うん」


「したい…。」


本音を言ってしまって、慌てて口をつぐんだ。


「俺もしたい」


「えっ?」


里山さんに言われて、夏は驚いた顔をした。


「ごめん、ごめん。冗談」


里山さんは、そう言って笑った。


駅についてしまった。


足が、ガクガクと震える。


改札にやってきた、息が苦しくて動悸が早い。


「大丈夫?」


「うん」


里山さんの手をさらに強く握りしめて、器用に改札を抜けた。


離れないように、自分の元に引き寄せる。


「夏、電車きてるで」


そう言われて、走って急いで乗り込んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ」


電車の扉が閉じた。


冬と何度やっても乗れんかった、電車に乗れた。


不思議な感じやった。


動悸は、まだしていたけど…。


二駅進んで、降りた。


「どこ行くん?夏」


「内緒」


もう、春にしか見えんくなった。


「春、僕の事好き?」


「今?」


「ゆうて」


「好きやで」


恥ずかしそうに笑いながら、里山さんは言った。


夏には、里山は春にしか見えていなかった。


改札を抜けて、手を引っ張っていく。


予定では、プラネタリウムでも見に行って、展望台行ってとか考えていたのに…。


「近所でも、あったんちゃう?」


ラブホテルの部屋の番号を押していた。


「そうなんやけど」


わざわざ、電車に乗ってまで来る必要はなかった。


でも、この熱のままいってしまいたかった。


「アカン」


「いや、ええよ。大丈夫」


「春、行こう」


夏は、里山さんの腕を引っ張っていく。


ホテルの部屋に入った瞬間から、夏は里山さんにキスをしていた。


「待ってっっ」


「春、好き、好き」


冬に、ワンムをしろと言ったくせに、目の前の春にキスしていた。


ガタッ…


「イタッ」


「ごめん」


夏は、その声に我に返った。


「大丈夫」


「靴脱いで、上がろ」


「うん」


里山さんは、靴を脱いで上がる。


「手首、痛めたんやない?」


「大丈夫やから」


「ごめん。僕、がっついて」


「いや、ええねん」


「でも、彼氏がおんのに」


「結は、ちゃんとわかっとるから」


「わかってるって?」


里山さんは、スマホの待ち受け画面を僕に見せた。


「誰、これ?」


「片思いしてた、会社の先輩」


「どないしたん?」


「癌で、死んでん。15年前に…」


「それって?」


「結も同じやった。俺と同じで、好きな人亡くしてんねん」


「じゃあ、セフレ?」


その言葉に、里山さんは、笑った。


「ちゃうちゃう。10年一緒におるねんで。結の事、好きやで!やけど、先輩が忘れられへんってだけ。」


僕は、里山さんのように胸を張って、冬を好きだと言えない。


「そうなんやね」


「何か、萎えさせたよな。空気変わったよな」


そう言って、里山さんは笑った。


「冷静になっただけやから…」


「俺は、夏とそうなってもかまへんよ。覚悟は、してきとるから。結にも話してるし…」


「そんなん悪いよ」


里山さんは、スマホをとって指で動かした。


そして、夏にその画面を見せる。


「忘れられへん、先輩に似てるから…。ええねんよ」


さっきとは違って…。元気な頃の先輩は、僕ソックリだった。



待ち受けのやつれた先輩は、わからなかったけれど…。


「高校卒業して、一緒に働いて5年間片思いしてた。そやから、夏とキス出来て嬉しかった」


その言葉に、夏は固まっていた。



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